米ニュースサイト「Vox.com」が「カードスタックス(card stacks)」コーナーを開設してから、2年が過ぎた。同サイトの編集長は、カードスタックスが思っていたような大きな変化をもたらしていないと認めている。
Vox.comは、「解説ジャーナリズム」が流行した2014年に開設された。カードスタックスは、同サイトの差別化された主要コーナーになるはずだった。この編集コーナーでは、情報を整理してカード形式のインデックスを作成する。ローマ教皇フランシスコやビットコインなど、すべての種類のニューストピックスを扱い、わかりやすい英語を使って、ナビゲートしやすいフォーマットで解説している。
米ニュースサイト「Vox.com」が「カードスタックス(card stacks)」コーナーを開設してから、2年が過ぎた。同サイトの編集長は、カードスタックスが思っていたような大きな変化をもたらしていないと認めている。
Vox.comは、「解説ジャーナリズム」が流行した2014年に開設された。カードスタックスは、同サイトの差別化された主要コーナーになるはずだった。この編集コーナーでは、情報を整理してカード形式のインデックスを作成する。ローマ教皇フランシスコやビットコインなど、すべての種類のニューストピックスを扱い、わかりやすい英語を使って、ナビゲートしやすいフォーマットで解説している。
これらのカードは、Vox.comのオーディエンス拡大に役立つだけでなく、親会社である米新興デジタルメディア企業Vox Mediaのほかのバーティカルメディアが利用するテンプレートになる予定だった。実際、「カーブド(Curbed)」と「イーター(Eater)」は、特定の都市のもっとも暮らしやすい地域やおススメの食事スポットを紹介するのに、このテンプレートを利用してきた。カードはいつでも追加したり、ほかのサイトに貼り付けたりできる。
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批評家たちはカードスタックスを称賛する一方で、長さにもっと一貫性をもたせることを勧めたり、更新を続けることが可能かどうか危ぶんだりした。「AJ+」や「フォーブス(Forbes)」など、ほかのサイトも、カード形式のフォーマットを採用している。
カードスタックスの限界
「当初を振り返ると、カードスタックスが心の75%を占めていたような感じだ。カードスタックスは、我々のすべてのアイデアを具体化したものだった」とVox.comの共同創設者でもあるエズラ・クライン編集長は、8月9日版のポッドキャスト「エズラ・クライン・ショー(The Ezra Klein Show)」で述べている。
だがいま、クライン編集長は、カードスタックスの限界を認めている。カードスタックスは、「ひとつのサービスによってオンラインニュースシステムの問題を解決できる」というVox.comのプロダクト理論の礎だった。「ひとつの大革新を成し遂げたから、それによって、全体の仕組みが変わるだろう、と思っていた。カードスタックスをまだ誇りに思っているし、いまもなお利用しているが、状況がガラリと変わることはない。それは明らかだと思う」とクライン編集長はポッドキャストで述べた。その番組には、Vox.comの共同創設者で、カードスタックスの推進役を務めたメリッサ・ベル氏も加わっていた。
現在、Vox Mediaのパブリッシャーであるベル氏は、別のやりとりのなかで、多くの点でカードスタックスに満足していると述べた。何よりもまず、分散型ウェブ向けのコンテンツ制作についてひとつのモデルになったという。米国各地の教師と生徒が、カードスタックスを教材として利用した。だが、オンラインメディアの問題すべてを解決することはできなかったと、ベル氏も認めた。
ひとつの製品で解決できない
ベル氏は米DIGIDAYに次のように語る。「混乱していて複雑すぎるニュースシステムの問題は、ニュースサイトというより、はるかに広範囲におよぶ問題だ。テレビニュースと24時間チャンネルは大いに問題だ。プラットフォームにも問題がある。Facebookが『トレンディング(Trending)』ニュースモジュールの見直しを行っていることから、それがわかる。TwitterはTwitterで、ニュース分野のインフルエンサーであるオーディエンスを利用できておらず、問題だ。ピュー・リサーチ・センター(Pew Research Center)の調査では、形式が定まらず得体の知れない『メディア』がオーディエンスの信頼を裏切っている、という根本的な問題が浮き彫りになっている。そうした問題は、ひとつの革新的な製品によって解決することはできない。だから、ひとつの問題を探そうとするのをやめなければならない。何百万通りもの方法で、日々、問題を解決する必要がある」。
ベル氏によるとVox.comは、カードスタックスの背景にある考えを採り入れ、ポッドキャストや動画、選挙報道など、サイトが行っているほかのことにそれを応用する必要があるという。具体的には、テーマに専門知識を生かす、記事コンテンツを別の目的に再利用する、ニュース記事にはもっと大きな背景事情があることを認識する、といった考えだ。
オーディエンスの拡大やそのつなぎ止めの手段として技術や製品の機能を信頼しているメディア企業はVox Mediaだけではない。この2年間で、ニュースがどれほど分散化してきたかということも明らかになった。
差別化は些細な部分に宿る
クライン編集長はポッドキャストのなかで、Vox.comは単一の大々的な製品に依存するわけではなく、もっと小規模なさまざまな形で差別化していることに気付いたと述べた。具体的には、グラフィックや動画、ポッドキャスト、記事の執筆そのものなどを通じてだ。
ベル氏はそれに応えて、業界全体でプラットフォーム外のオーディエンスが増えていると指摘。そうしたオーディエンスの成長は、その人が居る場所でその人と出会える、強力な分散型ブランドの確立方法についてVox.comが熱心に検討することに役立ってきた、と述べた。
「我々が業界全体で見ているところでは、自社サイトのオーディエンスはたしかにいるが、自社サイト外ではその2倍、3倍、4倍のオーディエンスがいる。Voxに加わったときには、そのことをまったくわかっていなかった。わかっていたら、手はじめに自社サイトを立ち上げることは決してなかっただろう」。
ベル氏はその後、自身の言葉は「少し大げさ」であり、Vox MediaはVox.comに満足していると明言した。「サイトをとても気に入っている。それ以上に、サイトが惹きつけるオーディエンスが好きだ。このサイトを構築して満足している」。
Lucia Moses(原文 / 訳:ガリレオ)