泣きっ面に蜂:米テレビネットワーク、広告に続き「加盟金」収益も減少か

米テレビネットワークのある幹部は先頃、ビジネスの現況に関する質問に肩をすくめるような口ぶりで答えた。多くのメディア企業と同じく、同ネットワークの広告ビジネスも損害を被っている。ただ、ケーブルおよび衛星TVプロバイダーは依然、同ネットワークを視聴するサブスクライバー数に応じた加盟金を支払っており、そのため広告収入減による打撃はさほどでもないという。

「我々の収益の多くを占めるのは加盟金であり、それは現在も入ってきている。おかげで、ダメージはいまのところそれほど大きくはない」と、同幹部は語った。

とはいえ、米テレビネットワーク勢のいわばセーフティネットである加盟金収益も安泰ではない。たとえば、スポーツ系ネットワーク勢はすでに、加盟金の返還を求めるテレビプロバイダー勢から圧力を受けている。高額の加盟金を要求するスポーツの生中継番組が放送されていないからだ。加えて、この景気低迷はペイTVサブスクリプションの解約増に拍車をかけると思われ、その結果、ネットワーク勢はサブスクリプションベースのストリーミングビジネスなど、代替収益源の確立を急ぐことにもなりかねない。

加盟金の返還を求める声

ニューヨーク州司法長官レティーシャ・ジェームズ氏は、スポーツの生中継番組が放送されていないことを理由に、その分にあたるサブスクリプション料金の減額をペイTVプロバイダー勢に要請した。サブスクライバーへの返金を余儀なくされれば、ペイTVプロバイダー勢がその補填をネットワーク勢に求めてくる可能性は高い。実際、1社はすでにそうしていると報じられている。 ニューヨーク・ポスト紙(New York Post)によれば、ディッシュ・ネットワーク(Dish Network)は4月分のESPN加盟金の支払を拒んでおり、他社もこれに倣うことは十二分に予想される。

米ケーブルテレビ事業社アルティス(Altice)のCEOデクスター・ゴーイ氏は4月30日のアーニングコール中、同社が現在、全国および地方スポーツネットワークと、支払義務のある加盟金について協議している旨の発言をした。

「これは各社が交わしている契約ごとの協議となる。当然、契約はそれぞれに異なるため、ここで私から具体的な見通しについて話すことはできない。ただし、多少の軽減は得られるものと期待している」と、ゴーイ氏は述べた。

ただし、ペイTVプロバイダー勢がスポーツ生中継の休止を理由に、すべてのネットワークに対して加盟金の返還を求めることは不可能だろう。スポーツ・ビジネス・ジャーナル(Sports Business Journal)によれば、たとえばESPNが受託放送契約を反故にすることは考えにくいという。12カ月間に最低限数のスポーツ番組の放送が義務づけられており、その数に届かない場合、さらに6カ月の放送猶予期間が設けられているからだ。つまり、米人気スポーツが今年中にリーグを再開する以上――もっとも重要なNFLをはじめ、米4大リーグはすべて、今シーズンの試合開催を予定している――ESPNといったスポーツ系ネットワークは契約要件を満たさねばならない。

コードカッティングの加速も

ペイTVサブスクリプションの解約が急速に進む現在、ネットワーク勢の加盟金収益はすでに減少の危機に瀕している。リサーチ企業ライトシェッド・パートナーズ(LightShed Partners)のパートナー、リッチ・グリーンフィールド氏によれば、2020年度第1四半期、アルティス、AT&T、コムキャスト(Comcast)、ベライゾン(Verizon)のサブスクライバー数は11%減少した

いわゆるコードカッティングの加速は、ネットワーク勢の収益にもマイナス影響を及ぼしている。たとえばNBCユニバーサル(Universal)のケーブルネットワークの場合、今年度第1四半期の加盟金収益は昨年比1.5%減、AMCネットワークの配給収益(加盟金とコンテンツライセンス料を含む)も昨年比6.2%減だった。

「[NBCUのケーブルネットワークの]配給収益は、今年度を通じて1桁台前半の減少率が予想される」と、コムキャストのシニアEVP兼CFOマイケル・キャヴァナー氏は4月30日のアーニングコール中に述べた。

前出のテレビネットワーク幹部によれば、2020年3月以来、コードカッティング数の「著しい」増加は認めざるをえないが、サブスクライバーベースの代替収益源が必要となる事態への備えははじめているという。ただし、「コードカッティング数がかなり増えることが予想されているが、いまは本当に新たなサブスクリプションサービスを開始するべき時機なのだろうか?」と、同幹部は述べた。

風向きが少々変わりはじめた

一方で、多くの広告主は第3四半期のCM出稿の取り止めを求めていたが、ここに来て風向きが少々変わりはじめた。米テレビネットワーク勢はひとまず胸をなで下ろしている。

広告主は出稿取り止めの申請を5月前半に提出すると思われていたが、あるエージェンシー幹部によれば、月末まで先延ばしにしたという。「大手5社[のエージェンシー持株会社]が足並みを揃え、もう少し時間が欲しいとネットワークに伝え、ネットワークはそれを了承した」と、同幹部は語る。

ネットワーク勢はさぞやほっとしたことだろう。取り止めの申し出が相次ぐことを予期し、テレビネットワークのセールス部門幹部らはCMの放送予定日が近づくまで決断を待つよう、広告主らに依頼するつもりでいたからだ。あるテレビネットワークの広告セールス部門幹部は最近の取材に応え、「まだ安心はできないとはいえ、傾向として、時間を稼ぐほど、事態が好転しやすいことはわかった」と述べた。

カリフォルニアやフロリダをはじめ、いくつかの州が一部ビジネスの再開を認めるなか、経済状況は確かに改善の兆しを見せており、この流れが続けば、広告出稿取り止めによる損失額が減ることも考えられる。テーマパークや映画スタジオなど、いまだ再開の見通しが立たない業界の広告主はやはり、広告出稿の取り止めを求めるかもしれない。しかし、店頭受取サービスを活用して営業を再開できるリテーラーなど、他業種の広告主については、「期限が先延ばしされれば、それだけ出稿キャンセルの可能性が下がる」と、前出のエージェンシーの幹部は語った。

TIM PETERSON(原文 / 訳:SI Japan)