「独自配信」と「他社配信」、悩ましいその収益バランス:ターナーのケビン・レイリー氏の考察

DTC(ダイレクト・トゥー・コンシューマー)によるストリーミングサービスの台頭により、ワーナーメディア(WarnerMedia)ディズニー(Disney)などの企業は、独自のサブスクリプション収入源構築と引き換えに、犠牲となるライセンシング収益金額の見極めを迫られていると、ワーナーメディア保有のターナー・エンターテイメント(Turner Entertainment)のチーフ・クリエイティブ・オフィサーであり、TBSおよびTNTプレジデントのケビン・レイリー氏は語った。ターナーの場合、変化するコンテンツライセンシング市場は、他社へライセンス供与するコンテンツの量の決定と、同社ネットワークの番組制作枠を埋めるために他社からライセンスを受け、それに対して広告枠を販売することの両方に影響することになる。

「そこに何らかの方程式があるのか、現時点ではわからない。いまは映画に、そしてどう展開していくのかに、より関心がある。なぜなら最初の目玉になるからだ」と、10月26日にロサンゼルスで開催された、米DIGIDAY主催のイベント「未来のエンターテインメント(Future of Entertainment)」で講演した、レイリー氏は述べた。

内外収益のバランス

ディズニーは、Netflix(ネットフリックス)から自社映画を引き上げて、2019年にローンチ予定のDTCストリーミングサービスで配信することを宣言している。ワーナーメディアも、程度の違いはあるが、ワーナーブラザーズ(Warner Bros.)のムービーライブラリーを利用して同様の行動に出る。「彼ら(ワーナーブラザーズ)がオープンマーケットでは一切取引しないというような十把ひとからげの言い方をするつもりはない。しかし、さらに多くの作品が、我が社独自のエコシステムのなかに囲われるようになるだろう」と、レイリー氏はいう。

ワーナーメディアとディズニーは、ひとつにはNetflixやAmazonに対抗するために、そしてオリジナル番組制作に参入する彼らの映画と競争するために配信サービスへの参入を開始している。しかし、そのためにワーナーメディアとディズニーは、NetflixとAmazonにライセンス供与しているテレビ番組や映画の一部を引き上げ、自身のDTCプラットフォームで提供することになる。ライセンス料の収益減がサブスクリプションからの収益よりも大きくなる可能性があるという見方もあり、利益は未知だ。ここでレイリー氏のような人物に対して投げかける質問は、長期的にサブスクリプション収入を生み出すために、ライセンシング収益で失ってもいいと考える金額はいくらなのかということだ。

「四半期ごとに利益を上げることを目指している、ということだ。番組制作のライセンス供与をやめるということは、利益の一部の提供を廃止するということであり、その分、これらの収益性の高いアセットをサードパーティに売却することができる」と、レイリー氏は述べた。

規模拡大との相反

ターナーはライセンシングでかなりの収益を生み出しており、規模は拡大している。最新の収益レポートでは、ターナーの親会社AT&Tは、2018年第3四半期の収益19億ドル(約1900億円)、前年比で36%増となったターナーの「コンテンツおよびその他の収益」事業成長の主な理由としてライセンシング収益を挙げている。

しかし、AT&Tのエンターテインメント部門が来年後半にローンチを予定している配信サービスのコンテンツをワーナーメディアが保持しているので、この収益の伸びには影響がでるだろう。ターナーは、他のプラットフォームへの番組ライセンスの供与は短期間では意義があると見ているが、同時に、自社プラットフォームの競争力を強化している。「四半期分の利益をあげても、自らの頭を押さえつける別のサービスを提供していたということだ」と、ライリー氏は語った。

Netflixのようなプラットフォームが自社コンテンツ制作を増やし、他社からコンテンツのライセンス契約を減らすことを決めた場合も、ターナーの収益増に限界が出てくるだろう。Netflixが独自に制作している台本のない番組をみれば、この状況がすでに現実のものとなっているのがわかる。「みんなNetflixの台本を使わないオリジナル番組を視聴しており、他社からライセンス供与されている(同じ金額が費やされている)台本のない番組よりもはるかに視聴率が高い」と、10月16日のNetflix四半期業績報告で同社チーフ・コンテンツ・オフィサーのテッド・サランドス氏は述べた。

囲い込みは考え過ぎ

また、サランドス氏は、Netflixはライセンス供与による番組も継続するとも語った。レイリー氏によると、ワーナーメディアの配信サービスのために、ターナーが自社のライセンス番組をサードパーティプラットフォームからすべて引きあげる可能性は低いという。複数のプラットフォームで番組を配信することで、番組のオーディエンスが増え、知的財産価値も上がるからだ。

「こうした大手企業がいっそう独自配信システムに力を入れるようになるなか、最終的にすべてのコンテンツが独自サービスのなかだけで配信される、ということはないと思う。これらの巨大企業において、サードパーティーによって失われるビジネスチャンスが一定数はあるものなのだ」と、レイリー氏は語った。

Tim Peterson(原文/ 訳:Conyac)