多くの雑誌メディアを発行するイミディエイト・メディア(Immediate Media)が、自社のさまざまなメディアで広告主がターゲットオーディエンスを見つけられるようにするための新たな手段を模索している。規制当局やブラウザからのプレッシャーが強まるなか、サードパーティCookieへの依存をなくすためだ。
英国で多くの雑誌メディアを発行するイミディエイト・メディア(Immediate Media)が、自社のさまざまなメディアで広告主がターゲットオーディエンスを見つけられるようにするための新たな手段を模索している。規制当局やブラウザからのプレッシャーが強まるなか、サードパーティCookieへの依存をなくすためだ。
「レディオタイムズ(Radio Times)」「トップギア(Top Gear)」「BBCグッドフード(BBC Good Food)」などのメディアを所有するイミディエイト・メディアは、自社のファーストパーティデータを広告主が利用できるようにするため、データを第三者と一切共有しない中立的なプラットフォームを介してデータを提供することに同意している。
この中立的なプラットフォームは、広告主がダッシュボードを使って、さまざまなパブリッシャーのターゲットオーディエンスを購入できるようにするものだ。広告主は、自社の顧客データをこのプラットフォームに登録し、そのデータをパブリッシャーのデータと照合することで、一致する顧客データを見つけ出せるようになる。
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広告主のデータは安全な場所に保管されるため、削除されたり第三者と共有されたりすることはない。パブリッシャーのデータも同様だ。広告主は、適切な一致データが見つかったら、そのデータをパブリッシャーにリクエストできる。データが提供されれば、そのデータを利用してインサイトを獲得したり、そのパブリッシャーのインベントリー(在庫)から特定のキャンペーンのターゲットを設定したりできるようになる。
イミディエイト・メディアとテレグラフ(The Telegraph)は、このプラットフォームを介してファーストパーティデータを提供する予定だ。このテクノロジーはインフォサム(InfoSum)が提供し、インフェクシャス・メディア(Infectious Media)がエージェンシーとして、はじめて利用する。
「これは大きな前進だ」
広告主のファーストパーティデータとパブリッシャーのファーストパーティデータをひとつにまとめ、パブリッシャーのポートフォリオに存在する新しい類似オーディエンスを見つけ出すというこの手法は、いわゆるセカンドパーティデータの取引であり、新しいものではない。だが、広告主もパブリッシャーも互いの貴重な顧客データのコントロールを手放し、他者に提供することを好まないため、こうした取引は広まっていない。
「自社のデータを広告主のデータ管理プラットフォーム(DMP)に登録するというのは、決して魅力的な話ではない。その逆もしかりだ」と、イミディエイト・メディアでコマーシャルオーディエンスマネージャーを務めるマシュー・ランス氏はいう。「実際、自社のデータを他社のDMPに登録したり、提供したりしたいと考える企業は、きわめてまれだ」と、同氏は指摘した。ほかの多くのパブリッシャーと同じように、同社もケースバイケースで、一部の信頼できるクライアントとセカンドパーティデータ取引をテストした経験があるが、たやすく規模を拡大できるものではなかったという。「一般データ保護規則(General Data Protection Regulation:以下、GDPR)が施行されて以降、状況はさらに複雑になり、法的なハードルは高くなっている」と、ランス氏は付け加えた。
エージェンシーの多くは、依然としてサードパーティCookieに依存している。だが、GDPRへの準拠にまつわるプレッシャーが高まるとともに、Safari(サファリ)などのブラウザで商業目的でのオーディエンスデータへのアクセスが難しくなるなか、パブリッシャーのファーストパーティデータを活用する新たな方法を模索する動きが進んでいる。「(インフォサムのディスカバリー[Discovery]テクノロジーは)メディアプランニングに役立つ深いインサイトを提供してくれるだろう。これは、急速に変化するデジタル市場でデータに関する問題に取り組むうえで大きな前進だ」と、インフェクシャス・メディアのCTO、ハリー・ドイル氏は話す。
新たな方法を探る背景
イミディエイト・メディアがサードパーティCookieへの依存を減らす新たな方法を探っている背景には、規制当局はもちろん、SafariやFirefox(ファイヤーフォックス)などのブラウザがアンチトラッキングポリシーを強化していることがある。
コムスコア(Comscore)の調査で9月の月間ユーザー数が1900万人と推定されるイミディエイト・メディアは、サードパーティCookieへの依存を完全になくすという将来の目標に近づくため、この1年間さまざまな改変を行ってきた。たとえば、技術スタックの段階的な改変、ファーストパーティCookieベースのDMPへの置き換え、読者IDの構築などだ。
サードパーティCookieの利用にまつわるプレッシャーを受け、パブリッシャー各社はペイウォール戦略や読者のログインを促す戦略を早急に採用し、既知のアドレサブルなオーディエンスの構築を進める必要に迫られている。
「今後はファーストパーティも」
イミディエイト・メディアも例外ではない。同社は、自社の価値あるコンテンツと引き換えにメールアドレスを登録するようユーザーに促す新たな手法を導入する計画だ。また、将来的にはファーストパーティCookieへの依存も減らしたいと考えている。サードパーティCookieとファーストパーティCookieは、どちらもAppleからの弾圧が強まっており、もはや安全な手法とはいえない。「今後はファーストパーティCookieでもうまくいかなくなることが明らかになりつつある」と、イミディエイト・メディアでデジタル広告戦略ディレクターを務めるドミニク・パーキンズ氏はいう。「メールアドレス、アプリ経由でのサインイン、ペイウォール、ログイン、IDといった手段を利用する必要がある。ほかにどのような情報をブラウザから得られるようになるのか、我々にはわからない」。
とはいえ、ログインユーザーとサブスクリプションユーザーの数は、いまのところそれほど伸びていない。「どのパブリッシャーでも、定期的にサインインするユーザーの割合が30%を超えることはないだろう」と、パーキンズ氏はいう。「メールアドレスを収集する新たな方法を検討し、ほかのパブリッシャーと連携して共有可能な拡張性の高いIDを取得できるようにする必要がある」と、パーキンズ氏は語った。
Jessica Davies(原文 / 訳:ガリレオ)