オランダのサッカー雑誌『フットバルインターナショナル(Voetbal International)』のWebサイトは2015年3月、掲載する広告の成果を高めるため、1億4000万も獲得していた広告のインプレッションを、あえて3分の1以上削減した。
この賭けは実際に功を奏する。最初の数カ月こそ広告収益は「厳しい」状態に陥ったが、その後、リアルタイムのオークション(RTB)に基づく広告取引の売上が30%も急増。その直接の要因は、やはり今回の実験にあるという。
「フットバルインターナショナル」の収益およびアドテクマネージャーであるジェレミー・ノヤ氏は、「売上面の回復に時間を要したが、プログラマティック取引の売上向上と持続可能な長期戦略を構築するために、すぐにでも始めることが極めて重要だった。私たちは量よりも質に力を入れていく」と語った。
オランダのサッカー雑誌『フットバルインターナショナル(Voetbal International)』のWebサイトは2015年3月、掲載する広告の成果を高めるため、1億4000万回も獲得していた広告のインプレッションを、あえて3分の1以上削減した。
この賭けは実際に功を奏する。最初の数カ月こそ広告収益は「厳しい」状態に陥ったが、その後、リアルタイムのオークション(RTB)に基づく広告取引の売上が30%も急増。その直接の要因は、やはり今回の実験にあるという。
「フットバルインターナショナル」の収益およびアドテクマネージャーであるジェレミー・ノヤ氏によると、リアルタイム入札される広告枠の質を全体的に高めることで、同誌のサイトに「俗悪」な広告が入らなくなる。そのおかげで、インプレッションは少なくはなったものの、広告のビューアビリティー(またはエンゲージメント)が高くなったという。結果的に、広告主はより高い広告料を払うようになってきたと、ノヤ氏は語った。
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「売上面の回復に時間を要したが、プログラマティック取引の売上向上と持続可能な長期戦略を構築するために、すぐにでも始めることが極めて重要だった。私たちは量よりも質に力を入れていく」。
とはいっても、インプレッションを35%カットした後も、取引するディスプレイ広告のインプレッションは1億1000万回と相当な数がある。現在、広告数は1ページあたり3つまでと上限を設けているという。
すべての在庫をRTBに
さらにノヤ氏は、期を同じくしてディスプレイ広告の「標準広告料金表」を廃止し、それらの在庫をすべてオープンなオークションにかけた(広告在庫の5%を占めるリッチメディア広告を除く)。この措置のおかげで、広告主たちによる入札の競争が高まり、eCPM(インプレッション課金型広告以外の広告のCPM換算)はゆっくりと上昇しているようだ。クライアントとの直接のやり取りを介した取引はまだ残してあるが、その広告在庫もまたアドエクスチェンジに投入し、リアルタイム入札(RTB)の資源として機能させている。
2016年にはオンライン売上の半分がリアルタイム入札によるものになると、ノヤ氏は予測。「RTBでeCPMを高めるのは難題だった。我々のWebサイトの最初の3インプレッションがもっとも稼げるインプレッションであることから、オークションをひとつ開き、これと直接取引とを競わせた。そのため、最初に稼ぐインプレッションをトレーディングデスクに明け渡すことが重要だった」と、同氏は説明する。
主との関係構築が大事
電通イージス・ネットワークのパフォーマンスエージェンシーであるアイプロスペクト(iProspect)のプログラマティック担当責任者、ウェイン・ブロッドウェル氏は、「フットバルインターナショナル」誌のこの動きについて、「じつに革新的」であり、プログラマティックバイイングの側としてはおすすめするアプローチだという。「リアルタイム入札で購入する自社の広告主にとって、広告在庫の質がすべてであり、この事例をほかのパブリッシャーも考えていくべきだ」。
「フットバルインターナショナル」のノヤ氏は、パブリッシャーは広告主とのデータ共有において、可能な限り透明性を高めるべきだと考えている。クライアントにとってより良い結果となるよう務めることで、長期のパートナー関係を結べる可能性が高まるのが理由だ。「データ共有について、パブリッシャーが及び腰になる理由がわからない」。
この発言は、エッセンス(Essence)のプログラマティック担当グローバルディレクターのオスカー・ガルザ氏の発言と共通する。ガルザ氏は、2015年11月10日から12日、ローマで開催された「Digiday Programmatic Summit」で、パブリッシャーがモバイルで効果的にマネタイズするには、広告主が実際に広告効果を向上させられるよう、もっと有用なデータをパブリッシャー側が引き渡す必要があると語った。
モバイルやアプリでも
ノヤ氏は現在、各クライアントにとって、もっとも有益なデータパッケージとはどういうものなのかを理解しようとしている。グループのパートナーたちとともに、広告主のニーズに最適な形で寄与できるデータとは何かを理解するための実験を行っているという。
なお、「フットバルインターナショナル」は、モバイル広告についても各ページに対する広告表示数を意図的に減らし、「悪い」インプレッションを30%削った。これにより、取引する月間インプレッションは最大4000万回となっている。
「フットバルインターナショナル」には、「ハイブリッド」のモバイルアプリも用意されている。つまり、普通のアプリのようにダウンロードするが、アプリ内の記事はモバイルのWeb上にも遷移される仕組みとなっているものだ。ノヤ氏によると、「このアプリ内トラフィックはまだリアルタイム入札で取り引きできるほどではないが、この状況を変えることができないか、オランダのテック企業と共同で調査に取り組んでいる。その試験は2016年1月に始まる予定だ」という。
Jessica Davies (原文 / 訳:ガリレオ)
Image from ThinkStock / Getty Images