フューチャー(Future PLC)は、ゲームやサイクリング、音楽、写真をはじめとする177の専門誌を発行する英国のパブリッシャーだ。解雇や一時帰休、営業停止といった暗いニュースが絶えないこの業界にあって、同社は勇気づけ […]
フューチャー(Future PLC)は、ゲームやサイクリング、音楽、写真をはじめとする177の専門誌を発行する英国のパブリッシャーだ。解雇や一時帰休、営業停止といった暗いニュースが絶えないこの業界にあって、同社は勇気づけられるようなサクセスストーリーを実現しようとしている。
同グループは今年度、7820万ポンド(約110億円)から8320万ポンド(約116億円)の黒字になると予測している。これは現在の市場予想を大幅に上回る数字だ。さらに、2019年度の同5220万ポンド(約71億円)からも大幅増となっている。同社は本年度の業績発表を12月2日に行う予定だ。また、2020年度上半期の売上高は前年同期比で33%増の1億4430万ポンド(約200億円)となった。
「自信、業績は飛び抜けている」
フューチャーは、さまざまな分野のタイトルとEC、イベント、オンライン広告という複数の収益源で半年以上続くコロナ禍を乗り切ってきた。同社のトラフィックもまた、ほかのパブリッシャーと同様に大幅に増加しており、Googleアナリティクス(Analytics)のデータによれば、英国及び米国における8月のオーガニックなユニーク訪問者数はそれぞれ前年比で25%、40%増となっている。
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メディアアナリストのアレックス・デグルート氏は「同社の自信、そして業績は業界のなかでも飛び抜けている」と語る。「同社は『テックレーダー(Techradar)』といったゲーム誌も有している。これはロックダウンで爆発的に伸びた分野だ」。また同氏は、フューチャーが7月にナミス・セキュリティーズ(Numis Securities)やゴールドマン・サックス(Goldman Sachs)を証券ブローカーとして指名したことも成功につながっていると指摘する。「もはや同社は、決して無視できない存在にまで拡大したといえるだろう」。
米国では、8月にはオープンエクスチェンジ全体でプログラマティック広告のCPMが1.35ドル(約142円)の高値をつけており、ようやく低迷から抜け出す兆しが見えてきた状況だ。そんななか、フューチャーが広告収益で高いパフォーマンスを出せたのは、広告主からの需要が相対的に大きい専門誌によるところが多い。あるパブリッシャー役員は、専門誌について「一般誌とは景気循環のサイクルが異なる」と指摘する。
コスト削減でも数字を改善
もちろん、コスト削減によっても業績発表の数字は改善する。フューチャーは、2020年4月にTIメディア(TI Media)を買収し、マリ・クレール(Marie Claire)などのタイトルを獲得している。現在も統合は進められており、それによる相乗効果はじきに明らかになるだろう。同グループは現時点で、2021年末までに年間2000万ポンド(約27億円)のコスト削減効果を見込んでいる。また、コスト削減の一環として、今後さらに解雇が予定されているという報道もある。フューチャーは、フリーランス予算を一時削減後、店舗の客足が激減したことをうけて4月上旬、早々に紙媒体の6誌を打ち切る決定を下した。このコスト削減も功を奏し、7月には好調な業績を受けて一時帰休の現金を再支払いすることで合意している。
また、9月7日には、9月9日で終了するギズモードUK(Gizmodo UK)とコタクUK(Kotaku UK)のライセンス更新を行わないと発表している。フューチャーは、ゴーカー・メディア(Gawker Media)からG/Oメディア(G/O Media)にライセンスが渡る前に、ポップカルチャーやテクノロジー、ゲームを扱う両サイトのライセンスを取得し、それぞれ2011年と2014年に英国版のタイトルをローンチした。今回の決定により、両サイトのライセンスは再びG/Oメディアのものとなる。
関係者によれば、これはライセンス契約の条件によって、ライセンシーがこれまで上げてきた利益を上げることができなくなったことが、決定打になったという。フューチャーのサイトによれば、ギズモードUKは58万人、コタクUKは36万6000人の月間ユーザー数を有している。
[原文:‘Too big to ignore’ Future estimates profits of nearly $110 million this year]
LUCINDA SOUTHERN(翻訳:SI Japan、編集:長田真)
Photo from Future PLC