TikTok 活用、米・パブリッシャーたちの最新動向

中国企業バイトダンスが運営するショート動画アプリ、TikTok(ティックトック)は2018年8月、競合相手ミュージカリー(Musical.ly)の買収以来、米国の 動画クリエーター、 広告エージェンシーハイテク企業社員を引きつけている。パブリッシャーも遅れを取っておらず、自社コンテンツが人気を博す場所へのリーチに、このアプリを活用している。

初期のSnapchat(スナップチャット)と同じく、TikTokは現在、パブリッシャーが若年層の消費者にリーチするための新たな手段となっている。TikTokが作成した米エージェンシー向け媒体資料によると、米国の月間アクティブユーザーのうち、約6割を16~24歳が占めている。また、ユーザーのエンゲージ率もSnapchatと同様に高く、1日平均46分だという。TikTokにはいまのところ、広告収益の共有といった直接のマネタイズ手段はないが、いくつかのパブリッシャーは実験に積極的だ。

各社のチャレンジ事例

NBCニュースは2019年2月現在、デイリーニュース番組「ステイ・チューンド(Stay Tuned)」の関連動画を26本、TikTokで配信している。各動画の尺は15秒で、ホスト役の3人――サバンナ・セラーズ氏、ガディ・シュワーツ氏、ローレンス・ジャクソン氏――のうち1名が出演し、人気ドラマ「ゲーム・オブ・スローンズ(Game of Thrones)」のシーズンプレミアといったニュースを伝えたり、パイナップルチャレンジ(#pineapplechallenge)といった課題に挑んだりする。

3月には、ESPNもTikTokで火が付き、ビルボードチャート入りを果たした曲「オールド・タウン・ロード(Old Town Road)」を使った動画をアップした。この動画には、ESPNのコメンテーター、スティーブン・A・スミス氏がまずは、スーツで、次にカウボーイハット姿で登場する。同社は続いて、NBA選手が次々にポケモンのモンスターボールをぶつけられる、アニメとの合成動画をアップ。最新作となる5本目は『ゲーム・オブ・スローンズ』のブランとNBAのドレイモンド・グリーン選手が交互に登場し、両者がにらめっこをする、という作りになっている。

一方、グループ・ナイン(Group Nine)には、1年以上前に創設された動物専門動画パブリッシャー、ドードー(The Dodo)がある。ドードーはもともとミュージカリーを活動の場としており、8月の買収以降もTikTokに動画をアップしていたが、今年1月をもって、配信をいったん停止している。

戦略とマネタイズ機会

NBCニュースは、TikTokの利用をはじめたばかりだとして、戦略に関するコメントを避けた。

ESPNの広報は、同社のTikTok戦略はまだ初期段階だと断りを入れたうえで、自社のオーディエンスがいる場所で新たなフォーマットを試すことは、やぶさかではないと語った。現時点での同社の目標は、TikTokでの「楽しい」コンテンツの配信だという。グループ・ナインは今年中にTikTokに戻り、「数多く配信していく」と語ったが、詳細についてはコメントを避けた。

パブリッシャーは新たな人気プラットフォームに飛びつくことで知られている。ただし、問題は常に、実験的プラットフォームにどれだけのリソースをつぎ込めるかであり、TikTokのように、マネタイゼーション方法がいまだ不明確なものの場合は、慎重にならざるをえない。当然、初期戦略は時間と努力をさほど要さないものとなる。たとえば、NBCの「ステイ・チューンド」の場合も、プロデューサー1名、出演者1名で15秒の動画を制作し、TikTokにアップしている。

目下のところ、TikTokにおける広告掲載の機会は限られている。ただ、4月最終週から5月第1週には、メディアバイヤーに向けた入札オプションのベータ版が、今夏には正式版が導入される予定であり、将来的にはパブリッシャーに向けて、多くのマネタイゼーションの選択肢が提示されると思われる。

自社の他事業との連携

先月には、2年ほど前にミュージカリーを見限った米ネットラジオ最大手、アイハートラジオ(iHeartRadio)がTikTokの再利用を決めた。TikTokに最初にアップされた動画の制作年は2016年となっている。同社はミュージカリーに31本の動画をアップしたが、2017年8月頃に配信を止めていた。だが先月、アイハートラジオ・ミュージック・アワード(iHeart Music Awards)の宣伝用に、同アプリへの投稿を再開した。

「3月14日(木)のミュージック・アワード放送に向けて、TikTokと提携した。3月7日(木)から毎日1組ずつ賞を授与してアーティストに受賞の言葉をもらい、その様子を毎朝、TikTok独占で配信していった」と、アイハートラジオの広報はeメールで回答した。

その後も、アイハートラジオはTikTokを使い続けている。4月第3週には、ラッパーのリッゾ韓国のボーイバンドであるBTS(防弾少年団)を擁する動画を各1本配信し、約6万700ハート(いいね!)を獲得した。

距離を置いている企業も

メディア企業は一般に、新規プラットフォームに素早い反応を見せてきたが、TikTokとは距離を置いているところもある。たとえば、CNNやBuzzFeedといったパブリッシャーは、FacebookやTwitter、Snapchatなど、他のソーシャルプラットフォームを積極的に活用する一方、TikTokには依然、認証済アカウントを持っていない。BuzzFeedのある広報によれば、同社はTikTokの娯楽コンテンツ用プラットフォームとしての可能性について、いまのところ調査中だという。

Kerry Flynn(原文 / 訳:SI Japan)