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LGBTQ+ 旅行チャンネルで、広告予算拡大を狙うスリリスト :「プライドマンスだけの支援ではダメ」

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新型コロナワクチン接種後の旅行の開始と、プライドマンス(Pride Month)向け支出の復活は、旅行関係のマーケターとメディアブランドの両方にチャンスをもたらした。マーケターは高い購買力を持つ消費者集団へのサポートを表明し、メディアブランドは、これまでより長期で、ときにはより規模の大きい契約にサインしている。

スリリスト(Thrillist)は、長期広告契約でスポンサードされている「ウィー・アー・アウト・ヒア(We’re Out Here)」というLGBTQ+向けの新しい旅行チャンネルで、ニッチなオーディエンスを収益化する機会を見出した。グループ・ナイン(Group Nine)傘下で、フード、旅行、ライフスタイルを扱うスリリストは、広告主からの関心が上昇しており、プライドマンス時を超えて支出が伸びているパブリッシャーのひとつだ。

6月第2週目に公開されたウィー・アー・アウト・ヒアには、少数のフルタイムスタッフのほか、その土地を旅したことがある人、その地域でビジネスを展開している人や、LGBTQ+当事者などが寄稿し、制作した街の案内や動画コンテンツが含まれている。これらのコンテンツは、スリリストの恒久的なコンテンツとして位置づけられ、ソーシャルな流通に活用される。

過去20年間、その広告戦略においてLGBTQ+の消費者を優先することを謳い文句にしてきた旅行会社、オービッツ(Orbitz)は、ウィー・アー・アウト・ヒアのローンチパートナーとして2021年末まで数十万ドル(数千万円)規模の契約を結んだという。スリリストもオービッツも契約金額を明らかにしていないが、この合意には、オービッツの予約機能を利用したブランディングや、ローファネルのアフィリエイトリンクの提示が含まれている。

マイノリティの活動にコミットし続ける

2020年のプライドマンスは、ニューヨーク・プライドなどいくつかのブライドセレブレーションが50周年を迎えていたため、広告支出としては大きなものが期待されていた。しかし、パンデミックになって3カ月というときだったため、広告予算は激減し、キャンペーン支出は前年を大きく下回った

パンデミックはさらに2020年後半から2021年第1四半期まで継続するが、その間にグループ・ナインでは、1500人以上の読者を対象に、パンデミック中とパンデミック後の旅行についての意見を求めた。この調査では、回答者がLGBTQ+コミュニティに属しているかどうかや、自己アイデンティティについて申告できるようになっている。結果は、2021年の休暇を計画する際に、親しみやすさを考慮する可能性が5倍高く、新しいことを学ぶ機会があれば旅行する可能性は40%高くなることがわかった。グループ・ナインでは、オーディエンスコミュニティネットワーク「ラボナイン(Lab9)」を利用した大規模な調査アンケートを毎月1~2回実施しており、以前から自己アイデンティティの申告を回答者に求めていたという。

「LGBTQ+コミュニティは、プライドマンスだけでなくほかの11カ月も、いつだって同じ情熱を持ち続けている。1カ月間だけ彼らをターゲットにマーケティングを行うことは、本当の意味で、彼らを情熱を持った人間として扱っていないことになる。だからこそ我々は、12カ月ずっとコミットし続ける必要性を強調したい」と、グループ・ナインの最高売上責任者(CRO)、ジェフ・シラー氏は語る。

つながりはオーセンティックに

グループ・ナインは2020年10月、多文化マーケティングならびにセールス部門をMCC+チームとして再編した。MCC+チームは、ラテンアメリカ系、アフリカ系、LGBTQ+、そのほか社会で周縁化されてきたコミュニティのオーディエンスにリーチするキャンペーンに焦点を合わせている、とシラー氏はいう。グループ・ナインはこの1年に、ほかの多くのメディア企業やエージェンシーとともに、専用の多文化マーケットプレイスやセールスチームを通じて、BIPOC(黒人・先住民・有色人種)オーディエンスや消費者にリーチするための協調的取り組みを開始した。ジョージ・フロイド氏殺害を契機に起こった平等運動への支持を表明したいというブランドの関心の高まりを受けてのことだ。

メディアプランニングとメディアバイイングを手がけるエージェンシー、メディア・キッチン(Media Kitchen)の最高経営責任者(CEO)、バリー・ローウェンタール氏は、社会意識の高いブランドはこの1年で、ソーシャルメディアなどのプラットフォームやマーケティング戦略において、積極的に活動を展開するようになったと話す。企業は、これらのキャンペーンを必ずしも取引につなげる意図はないが、消費者にとって重要な活動を自分たちが支援していることを知ってもらいたいと考えている。

「これらのブランドは、メディアでネガティブな話題を目にすればするほど、それに立ち向かおうとする」と、ローウェンタール氏はいう。

2021年に入ってから、MCC+チームの支援を受けて制作、販売されたキャンペーンは、グループ・ナインの全キャンペーンの25%以上にのぼるという。MCC+で実施されたキャンペーンの約3分の1はグループ・ナインの新規顧客だが、J&J、ステイト・ファーム(State Farm)、コムキャスト(Comcast)、Amazon、アメリカン・エキスプレス(American Express)、ロケット・モーゲージ(Rocket Mortgage)などの既存顧客との関係強化にも貢献していると、同社の広報担当者は述べている。

マーケティングコンサルタント企業シークエント・パートナーズ(Sequent Partners)のパートナー、アリス・シルベスター氏は、「広告主はみな、LGBTQ+(コミュニティ)のようなオーディエンスと、オーセンティックで関連性あるつながりを求めている。彼らが重要なターゲットであるならば、文化的に関連性のある方法でつながることが重要だ。最近の消費者は、嘘を見抜くことには非常に長けている」と、話す。

メッセージ発信をクリエイティブに

オービッツは、毎年恒例のイベントをバーチャルイベントとして新たにスタートしたドラァグブランチ「スレイ・ライド(Slay Ride)」のスポンサーとして、2020年12月に初めてスリリストと契約を結んだ(契約金額は10万ドル台半ば)。このイベントには、ライブ視聴7000人以上の総勢、7万人の視聴者が集まった。

グループ・ナインはさらに、スリリストとは別の旅行関連のエディトリアルパッケージのスポンサーとして、アメリカン・エキスプレスを確保している。この特別なスポンサーシップは6月限りのものだが、10万ドル台半ばの契約だ。これについてグループ・ナインは、具体的な数字を公表していない。

パブリッシャーが長期契約を獲得し続けるためには、どちらの側(広告主、パブリッシャー)もメッセージ発信の必要性を考慮すべきだ。メディア・ツー・インタラクティブ(Media Two Interactive)のCEO、マイケル・ハバード氏によると、旅行会社や観光地のほとんどは、旅行シーズンがピークを迎える1年前までにメディア購入を計画してしまうという。プライドマンスなどの啓発月間には、それとは違ったメッセージ戦略が必要だ。多くのキャンペーンの目的は、その場で予約してもらうことではなく、ファネル戦略の上部に分類されるものだ。

「各地で稼働率が過去最高に近づいているなかで、現実は、メディア購入を増やすというよりも、クリエイティブな動きを作り出すことだと思う。すでに満室の街に新たな人を呼び込むことはできないが、訪問者に何度も足を運んでもらえるようにはできるだろう」と、ハバード氏は語る。

[原文:Thrillist’s new LGBTQ+ travel channel aims to extend Pride Month ad budgets throughout the year

KAYLEIGH BARBER(翻訳:藤原聡美/ガリレオ、編集:小玉明依)