ヴォーグ は、なぜ「求人業界」に乗り出したのか?:「さまざまな領域への方針転換を見込める」

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パブリッシャーが広告に依存しないビジネスモデルを探し続けるなか、美容やファッションに関わる専門家向けのバイブル的ニュースレター「ヴォーグ・ビジネス(Vogue Business)」が、オンライン求人業界に乗り出した。

2019年6月12日にスタートしたサイト「ヴォーグ・ビジネス・タレント(Vogue Business Talent)」は、求人サイトとブランドが企業文化や精神をコンテンツを通じてPRする場のあいだに位置するものだ。必要であれば、コンデナスト・インターナショナル(Condé Nast International:以下、CNI)のクリエイティブスタジオが有料で支援を行う。ヴォーグにとってこれは、広告を資金源にしない新しい製品やサービスを開発するために作られたCNIのビジネス開発チームから派生した第2のB2Bベンチャーだ。

ヴォーグ・ビジネス・タレント・サイトは、バーバリー(Burberry)、ルイ・ヴィトン(Louis Vuitton)、ハロッズ(Harrods)など選りすぐりのクライアント10社とともに、6カ月以上かけて構築された。この間、世界の専門家8000人が登録したというが、サイトの公開以降、登録者がどれくらい増えたかについて、ヴォーグ・ビジネス・タレントは一切明らかにしていない。

「能力が計り知れない」

ヴォーグ・ビジネス・タレントを率いるのは、かつてガーディアンの求人サービスである「ガーディアン・ジョブズ(Guardian Jobs)」のディレクターを務めていたアリスター・ウィリアムス氏だ。ウィリアムス氏はこう語る。「我々は大きな数の話をしている。この数日で、オーディエンスに共鳴するヴォーグ・ビジネス・タレントの能力が計り知れないことがわかった。我々は才能ある人々に、我々を信頼して彼らのデータを委ねるよう促す仕事をしている――その数は相当だ。ヴォーグ・ビジネスというブランドの下なら、それが容易にできる」。

ヴォーグ・ビジネス・タレントは、ヴォーグ・ビジネスが発展したのと同じアプローチで、コミュニティからのフィードバックをベースに進化する。初期のフィードバックからひとつわかったことは、求職する側も求人する側もどちらも、求めているものを見つけるのに苦労しているということだった。職を求める人は、求人情報を見たり、職に応募したりするために登録し、品質管理の層を追加していかなければならない。

オービスリサーチ(Orbis Research)によると、オンラインの求人市場は成長し続け、2023年末までには345億ドル(約3.7兆円)規模にまで達すると見られ、それだけでも十分に魅力的だ。そして、収入源の多様化が進むなかで、ヴォーグ・ビジネス・タレントは複数のオプションを提供している。現在は、料金を支払って求人情報を掲載しているファッションブランドからの収入が主だが、競争力を理由に求人リストを共有したがらなかった。ヴォーグ・ビジネス・タレントは近いうちに、候補者キュレーションと呼ばれるものを提供する予定だという。このシステムは、履歴書をふるいにかけ、クライアントのために候補者のショートリストを作成するというものだ。

クライアントは現在23社

ヴォーグ・ビジネス・タレントはさらに、プラットフォーム上で自社を宣伝するためのブランドストーリーを語る手助けを望むクライアントに対して、CNIクリエイティブスタジオによるコンテンツやマーケティングサービスも提供する。ヴォーグ・ビジネス・タレントと仕事をしているクライアントは現在23社ある。将来的には、ブランドのスポンサーシップやイベントオプションも提供する計画がある。

「これによりさまざまな領域へのピボット(方針転換)を見込める」と、ウィリアムス氏はいう。「我々は、タレントコミュニティを意識して開発を進めており、そこにクライアントコミュニティが密接に追随している」。

ファッション業界に焦点を当てていることに加え、ヴォーグ・ビジネス・タレントは、ヴォーグ・ビジネスの編集長ローレン・インドヴク氏が選んだヴォーグ・ビジネスのコンテンツが含まれている点が、LinkedIn(リンクトイン)のような幅広い求人掲示板とは違う。コンテンツでは、ヴォーグの11人の編集者が書いたキャリアに関するアドバイスや、かつてカルバンクライン・コレクション(Calvin Klein Collection)のクリエイティブディレクターを務めたことがあるフランシスコ・コスタ氏が美容ブランド創出について語ったインタビュー記事を特集している。

専門のスタッフが切り盛り

ヴォーグ・ビジネス・タレントには現在5人のスタッフがいて、製品開発、ユーザー体験、人材獲得の作業にあたっている。今後、サービスの拡充に合わせてCNIビジネス開発チームからさらにスタッフを追加したり、新たな人材を雇用する計画もある。ヴォーグとは別仕立てになっているので、エディトリアルなリソースがどれくらい貢献してくれるかのように、新たにビジネス向けコンテンツを手がけはじめたときに、ほかの消費者向けタイトルが直面するような組織的課題はここには存在しない。

エンダース・アナリシス(Enders Analysis)の最高経営責任者(CEO)であるダグラス・マケイブ氏は、ヴォーグはこれまで、消費者向けとビジネス向けの境目をうまく超えてきたと言い、ヴォーグの広告は豊かな消費者と業界の関係者を対象にしていると付け加えた。ヴォーグは、ロンドンとパリでファッション関連のカンファレンスを主催していて、ロンドンとスペインではファッションカレッジを持っている。ファッションウィークのイベントの開催地となる地元政府へのコンサルティングサービス、リサーチ、ホワイトペーパーも提供している。

「ヴォーグの大部分はホテルや美容室のようなビジネスを通じて流通し、伝統的な販売ロジックとともに、業界の目的を持ったブランディングメッセージを伝えている。ヴォーグは、単にハイエンドな消費者向けの雑誌ではなく、業界の流行のバイブルだ。雑誌部門で我々が着目している大きなテーマのひとつはB2BとB2Cの集約だ」とマケイブ氏は語る。

ヴォーグならではの立ち位置

ヴォーグには、ヴォーグ・タレンツ(Vogue Talents)のようなイニシアチブや、ファッションやデザイン関連のカレッジを通じて若い才能を育てた歴史がある。さらにウィリアムス氏が言うように、このビジネス系パブリッシャーは、オーディエンスに対してユニークな位置にいて、ファッションコミュニティとの結びつきがとても強い。そのため、特に求人には自然にフィットする。

「ビジネスの専門家たちがヴォーグやヴォーグ・ビジネスを使って、専門家としての毎日の生活の助けにしているという事実は、このアプローチを興味深いものにしている」と、ウィリアムスは語った。

Lucinda Southern(原文 / 訳:ガリレオ)