FT はなぜ、B2Bファッション専門メディアに投資するのか? : FTのJ・リディング氏、BoFのI・アメド氏

フィナンシャル・タイムズ(The Financial Times:FT)が、メディアスタートアップ企業であるビジネス・オブ・ファッション(The Business of Fashion:BoF)の少数株主となった。BoFは、ロンドンを拠点とするサブスク会員3万5000人のB2Bタイトルで、ステラ・マッカートニー氏やキム・カーダシアン氏といった大物を招待したカンファレンス事業でも大きな収益をあげている。

同社とFTの契約が発表されたのは8月第3週のことだ。同社はほかにも3月に消費者分野のネクスト・ウェブ(The Next Web)の経営権を獲得するなど、専門分野のパブリッシャーへの投資を進めている。

英DIGIDAYは今回、FTのCEO、ジョン・リディング氏とBoFのCEOのイムラン・アメド氏にインタビューを行った。本記事では両氏に、この提携による中国におけるファッションや高級品分野におけるプレゼンスを高める取り組み、イベント提携事業、少数株主から今後経営権の獲得に移行する可能性などについて伺った。なお、以下のインタビューは内容を明瞭にするため若干の編集を加えている。

──FTにとって、BoFの経営権獲得ではなく、少数株主になったことのメリットとは何か?

リディング氏:FTはBoFの動向を長いこと追ってきた。BoFは良い成長を遂げてきたし、読者収益モデルもFTと似ており、FTの全体戦略にも合致する。これまでFTは、専門分野で質の高いコンテンツを提供しようと市場開拓を進めてきた。世界中のFTのオーディエンスにとって必須な情報だと考えたからだ。当社は戦略を追求するにあたって、とても柔軟に考える企業だ。FTが運営するM&Aに特化したニュースレター「デュー・デリジェンス(Due Diligence)」のように、自社で専門的なコンテンツ開発も行うが、今回のような買収や提携も行う。

──将来的に、今回の提携で何がもたらされるのだろうか?

リディング氏:ファッションと高級品分野は、FTの戦略にとって非常に重要な位置づけだ。「ハウ・トゥー・スペンド・イット(How to Spend it)」のように当社は同分野でも大きな存在感を発揮しているが、B2Cの側面が強い。B2Bの面でBoFは大きな可能性を秘めており、魅力的だ。今後はいくつかの重要分野で密に提携していくだろう。これまで当社はサブスクの読者収益データ分析に十年かけて投資を行い、専門知識を培ってきた。とりわけこの戦略において良い影響が見込めるだろう。サブスク管理と読者収益という専門分野とそこにおける知識という面でBoFとの提携によって得られるものは大きい。カスタマーエンゲージメントでは科学的な分析が進んでおり、ニュースメディアの戦略において極めて重要となっているが、それにとどまらない価値とビジネスチャンスがあるはずだ。フォーラムやイベントにおけるビジネスチャンスも大きい。私自身、BoFのライブイベントに参加した。我々はどちらもブランドと組織面において非常にデジタルで読者収益を重視しているが、それだけでなく、ビジネスにおける人と人のつながりが大きな価値を持つという考えでも共通している。

──FTによるBoFの経営支配権の獲得は、将来的にありうるのか?

リディング氏:現在そうした考えはなく、その必要もない。それよりも取り組むべきことがたくさんある。

アメド氏:当社はこれまでFTや投資家たちとの対話を重ねてきたが、それをもって買収につながるというわけではない。だが我々もFTも、高価値なコンテンツの作成と読者収益というビジネスモデルを大切にしている。当然のように、相乗効果が生まれうる余地がたくさんあるだろう。だが、だからといってほかの企業との提携や、他企業との対話を行わないというわけではない。今回の提携は、似た側面のある企業とお互いをよく知ることができるという意味で良い方向に進んでいるのは間違いない。だが将来的な最終到達地点を定めているわけではない。

──今回の投資は、FTの商業的な目標面でどういった意味を持つのか?

リディング氏:原則的に、当社は戦略的に重要な分野でビジネスチャンスがあれば、出来る限りのことをしてそれを伸ばし、成功をつかみたいと考えている。今回の提携は、その面で大きな力になるだろう。プロジェクトやイベントごとの活動で協力することで(商業的な)利益が生まれる。また、世界各地のいくつかの成長市場で提携する可能性も模索している。

──それによるメリットとは?

リディング氏:FTは、過去10年にわたって中国でのプレゼンスを高める取り組みを続けてきた。中国はファッションや高級品分野の高成長市場だ。これはまさにBoFが強みを発揮する分野となっているため、中国での提携を模索している。だがまず少数の市場に絞り込んで成功を収め、そこから拡大していきたいと考えている。可能な実現目標から取り組んでいく。

アメド氏:あらためて強調したいのは、FTとBoFは別の企業であり、別のチームと目標を掲げているということだ。そのなかで、お互いに興味があり、提携できるビジネスチャンスが存在している。たとえば、今週立ち上げた共同チームには、FTとBoFの幹部が参加し、FTストラテジーズ(FT Strategies)と協力して、我々がいかにサブスク事業で高成長を達成したかを分析し、これから数カ月、数年にわたり、その成長を加速させる方法について協議した。これからも一歩ずつ前に進んでいく。

Jessica Davies(原文 / 訳:SI Japan)