TikTokでのマネタイズはいまだに難しいという声は多い。しかし、ここに来て、早くから同アプリを活用してきたパブリッシャーを喜ばせる明るい材料が、いくつも現れはじめている。
TikTokでのマネタイズはいまだに難しいという声は多い。しかし、ここに来て、早くから同アプリを活用してきたパブリッシャーを喜ばせる明るい材料が、いくつも現れはじめている。
この1年のあいだ、米国のグループ・ナイン(Group Nine)やバッスル・デジタル・グループ(Bustle Digital Group、以下BDG)、英国のグローバル(Global)やデイズド・メディア(Dazed Media)など、さまざまなパブリッシャーのTikTokオーディエンスは増加の一途を辿ってきた。
そんななか、彼らが新たなビジネスチャンスを模索すべく目を向けているのが、インフルエンサーパートナーシップの仲介や、ブランデッドコンテンツキャンペーンの開発だ。
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現状は非公式な取り組み
ラジオパブリッシャーのグローバルは、早くからTikTokに進出し、同アプリのメディア&パートナーシップチームやグローバルビジネスソリューションチームと親密な関係を築いてきた。これらのチームはそれぞれ、広告主に対しTikTokにおけるオーガニック、およびペイド広告に関するサポートしている。グローバルとTikTokの関係がはじまったのは2019年のはじめのこと。TikTokによると、それ以降、グローバルは現在までに110万人のフォロワーと、2500万の「いいね」を集めているという。
「グローバルは現在、オリジナルコンテンツを制作している英国で最大のメディアブランドだ」と、同社でオーディエンス開発ディレクターを務めるチャールズ・ウバーズ氏は話す。「グローバルがTikTokに投稿するコンテンツに、他社のコンテンツはライセンス使用されていない。すべてがオリジナルだ」。
グローバルがTikTokで配信するブランデッドコンテンツのいずれにも、レベニューシェアは存在しない。この点で両社の関係は非公式なものだ。しかし、グローバルはTikTokから、今後のプロダクトローンチに関する定期的なアップデートとともに、クリエイティブに関するサポートも受けている。
TikTok進出は必然
グループ・ナインもアーリーアダプターの1社だ。運営するメディアのトラフィックの90%を、モバイルが占める同社にとって、TikTok進出は必然だった。グループ・ナインもまた、自社のプレゼンスを拡大するためにクリエイターとしてTikTokと協働している。ただし、マネタイズに関してはグループ・ナインが独自に行っていると、同社の最高売上責任者であるジェフ・シラー氏は語る。
グループ・ナイン傘下の5つのメディアブランド、ポップシュガー(PopSugar)、ナウディス(NowThis)、ドードー(The Dodo)、スリリスト(Thrillist)、シーカー(Seeker)が、TikTokチャンネルの拡充に着手したのは1年以上前のことだった。この半年だけで、グループ・ナインが運営するメディアの総オーディエンスは倍増。フォロワー数も500万人を超えたという。
同社はまた、今年の第2四半期末以降、TikTokにおけるマネタイズを本格化している。たとえば、ポップシュガーとドードーのブランデッドコンテンツキャンペーンの契約は10本近く成立しているという。
公式プログラムが発表される日も近い
そんななか、TikTokがついに、パブリッシャーのブランデッドコンテンツに関する、包括的な提案を公式に発表する兆候もある。しかも、比較的近いうちに。
実際、TikTokの協力のもと、前出のグローバルは同社が運営するラジオ局、キャピタルFM(Capital FM)のアカウントからブランデッドコンテンツをオーガニックで投稿。それを広告主であるeBay(イーベイ)のオーディエンスに向けてターゲティングした。この取り組みでTikTokは、ブランデッドコンテンツの効果を増幅させる役割を担っていた。この取り組みは、グローバルが展開するデジタル屋外キャンペーンの一環として行われ、キャピタルFMのコアターゲットオーディエンスを活用することで、eBayのリーチの拡大を促した。
「これは、メディアブランドがTikTok上で、広告主向けに自社のブランデッドコンテンツキャンペーンを行なうという、我々がヨーロッパで展開した最初のパブリッシャーへのマネタイズキャンペーンだ」と、TikTokのブランドパートナーシップ&エンターテインメント部門を率いるソニア・グリーソン氏は語る。
広告主は「高く評価」
2019年12月に同社初のTikTokキャンペーンを展開したBDGは、翌2020年から同プラットフォームへの投資に本腰を入れるようになったと、同社のマーケティング、およびオーディエンス開発部門でバイスプレジデントを務めるウェズリー・ボナー氏は話す。以来、BDGはバッスル(Bustle)やインバース(Inverse)、ロンパー(Romper)、ナイロン(Nylon)といったメディアブランドのTikTokアカウントのファロワー獲得に努め、現在その合計は1000万人を超える。同社は毎月、平均40%増のペースでオーディエンスを増やしており、月平均で10億回を超えるビュー数を稼いでいる。
ボナー氏によれば、BDGはこれまで、20以上のカスタムアセットで、6本のブランデッドコンテンツキャンペーンをTikTokで実施してきたという。同社はのアカウントは、オーガニックリーチに大きく依存する一方で、TikTokのセルフサービス型広告プラットフォームも活用し、同プラットフォームの「For You」ページにインフィード広告を流している。
ほかのソーシャルプラットフォームと違い、TikTokでは動画の視聴開始から6秒後にペイドビューがカウントされる。この点を広告主は「高く評価」していると、ボナー氏。ペイドメディア支出のROIを正確に検証したい広告主にとっては、嬉しい機能なのだという。
またBDGは、TikTokのクリエイターマーケットプレイスだけでなく、ブランド&コンテンツパートナーシップとも協働して、「TikTokのプラットフォームトレンドや、料金表、話題になっているタレントなどの最新情報を、常に取り入れるようにしている」と、ボナー氏は話す。ただし、ブランデッドコンテンツのセールスは、すべてインハウスで行なっているという。
これまでよりも大きなチャンス
デイズド・メディアも同じような手段を取っている。若年層をターゲットにする同パブリッシャーは昨年、TikTokの認証アカウントをローンチした。今年10月には、同社にとって過去最大となるTikTokブランデッドキャンペーン、#チャレンジ「#GucciAbsoluteBeginners」を展開。同キャンペーンの陣頭指揮を執ったのは、人気の#チャレンジ「Gucci Model Challenge(5900万回超のビューを記録)」の立役者であるクリエイター、モーガン・プレスリー氏だった。
「過去2年にわたり、デイズド・メディアは一部のメディアブランドで、TikTokの活用を積極的に行ってきたが、同プラットフォームの人気が爆発しているいま、クリエイターのやる気は高まっている」と、デイズド・メディアのコンテンツ部門責任者、アーマッド・スウェイド氏は語る。「TikTokには、これまでよりも大きなチャンスが転がっている」。
パブリッシャーによるブランデッドキャンペーンが機能するのは、TikTokコミュニティに自然に馴染むノウハウを持たないブランドは、自分たちだけでは「浮いてしまう」からだと、ライブ配信ビデオインテリジェンス企業のコンビバ(Conviva)でストラテジー部門のバイスプレジデントを務めるニック・シセロ氏は話す。パブリッシャーが持つ、TikTokで自然なプレゼンスを築くためのノウハウが、広告主の目に魅力的に映っているのだ。「誰も浮いたブランドになりたくはないだろう」。
高いエンゲージメント率
また、TikTokでは、ほかのソーシャルプラットフォームよりも高いエンゲージメント率を獲得できることも、広告主がパブリッシャーを頼る理由のひとつだと、ボナー氏とシラー氏は話す。実際、BDGが手がけるキャンペーンの一部は、KPIの期待値を24%も上回る結果を残しており、エンゲージメント率も10%を超えていると、ボナー氏は説明する。
ポップシュガーはドライシャンプー(水やお湯を使わずに香りで頭皮のニオイを抑えたり、髪を清潔に保ったりすることができるアイテム)メーカー、バティスト(Batiste)のキャンペーンを手がけたが、インスタグラムやFacebook動画で一般的に見られる数字の2倍の視聴完了率を達成したと、シラー氏はいう。また同キャンペーンは、目標として掲げたインプレッションも上回り、1700万超のインプレッションを獲得したという。
「ソーシャルメディアキャンペーンに関していえば、いまのところTikTokはレベニュードライバーとして重視されていないが、この状況も2021年には変わるはずだ」。
[原文:‘There’s more opportunity’: Publishers on TikTok are taking branded content into their own hands ]
KAYLEIGH BARBER AND SEB JOSEPH(翻訳:ガリレオ、編集:村上莞)