老舗パブリッシャーはオーディエンス開発という「黒魔術」を採り入れ、その成長を加速させている。彼らが新興デジタルパブリッシャーのノウハウを学んだいま、両者に違いを見出すのは難しいほどだ。小規模の新興メディアにとっては複雑な局面になった。
いくつかの老舗パブリッシャー企業は、前年と比べトラフィックを大きく伸ばしている。2015年の11月のネット測定会社コムスコア(comScore)の最新ランキングによると、「ウォール・ストリート・ジャーナル・オンライン(Wall Street Journal Online)」のトラフィックは前年比で47%も伸びた。
米経済誌の「フォーブス(Forbes)」は38%の伸びを記録し、「ハースト・デジタルメディア(Hearst Digital Media)」は45%も上昇した。「コンデナスト・デジタル(Condé Nast Digital)」とCNNもそれぞれ37%と22%と高成長だが、「ワシントン・ポスト(Washington Post)」は56%と特筆すべき伸びだ。
老舗パブリッシャーはオーディエンス開発という「黒魔術」を採り入れ、その成長を加速させている。彼らが新興デジタルパブリッシャーのノウハウを学んだいま、両者に違いを見出すのは難しいほどだ。小規模の新興メディアにとっては複雑な局面になった。
「ワシントン・ポスト」は56%伸ばす
いくつかの老舗パブリッシャー企業は、前年と比べトラフィックを大きく伸ばしている。2015年の11月のネット測定会社コムスコア(comScore)の最新ランキングによると、「ウォール・ストリート・ジャーナル・オンライン(Wall Street Journal Online)」のトラフィックは前年比で47%も伸びた。
米経済誌の「フォーブス(Forbes)」は38%の伸びを記録し、「ハースト・デジタルメディア(Hearst Digital Media)」は45%も上昇した。「コンデナスト・デジタル(Condé Nast Digital)」とCNNもそれぞれ37%と22%と高成長だが、「ワシントン・ポスト(Washington Post)」は56%と特筆すべき伸びだ。
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2015年はいくつかのデジタルパブリッシャーのトラフィックが激減、もしくは完全に成長が停滞したが、老舗パブリッシャーはそれを乗り越えてデジタル上で成長している。コムスコアの調べでは、2015年の「BuzzFeed」のトラフィックは上下せずにフラットだったが、別の大手Webメディアのトラフィックは16%ほど減少した。
各メディアにおけるトラフィックの成長度合い
もはや老舗と新興に差はない
「新興デジタルパブリッシャーは、老舗パブリッシャーではできない方法で読者を取り込んでいたため、老舗が新興の成長を許していた時期がある」と、ハースト・デジタルの社長であるトロイ・ヤング氏は話す。「しかし、いまとなっては、テクノロジー、広告販売やコンテンツ制作などを見ても、我々とVox Media、Refinery 29やほかの新興パブリッシャーに差はない」と付け加えた。
この状況は、自身のWebサイトだけではなく、Facebook、SnapchatやTwitterを利用してオーディエンスの成長を拡大しようとした老舗パブリッシャーの努力の賜物だ。リサーチ会社のニュースウィップ(NewsWhip)によると、Facebookアカウントを運用する人気パブリッシャーのおよそ半分が旧来のテレビ事業者や出版社だという。
また、Facebookでもっとも共有されている10本の記事のうち、7本の記事が老舗パブリッシャー企業のものと判明している。同様に、ミレニアル世代に受けているSnapchatのコンテンツ配信チャンネル「ディスカバー(Discover)」に参加しているパブリッシャーであっても、その半分はテレビや出版業界の老舗企業だ。
デジタル人材を登用する老舗
「もし新興企業と同様のことをしていて、企業を成長させるようなブランドエクイティと資金を運用する立場の人ならば、老舗媒体社の好調ぶりにはまったく驚かないだろう」と、ブルームバーグ・メディアでデジタルマーケティング部門のグローバルヘッドを務めるスコット・ヘイブンス氏は指摘する。彼は以前にタイム社でデジタル部長を勤めていたこともある人物だ。
これまで多くの新興デジタルパブリッシャーは、独自性のある記事とサードパーティプラットフォームによるオーディエンス開発のおかげで、スケールさせることができていた。しかし、多くの老舗が独自のオーディエンス開発部隊を組織し、傘下のデジタル媒体からデジタルに通じた人材を招くこともあるいま、サードパーティが提供できる優位性はなくなりつつある。
外部のデジタル人材を雇用することも、これまでのパブリッシャーの手法を見直す手助けになっている。「ニューヨーク・タイムズ」では、デジタルプラットフォーム展開と整合性をとるため、2015年の2月から、紙面においてイチ押しの記事の序盤を1面に展開し「☓☓面に続く」という、伝統的な手法を廃止した。
復活したブランドの優位性
「ワシントン・ポスト」も2013年のジェフ・ベゾス氏による買収の後、デジタル配信に力を入れてきた。2015年「ワシントン・ポスト」はインスタント記事(Instant Articles)経由ですべての記事をFacebookに載せた数少ないパブリッシャーのひとつである。
「より代謝が良く、よりデジタルなDNAになろうと、意識の改革があった」と、「ワシントン・ポスト」のエディターであるフレッド・ライアン氏は話す。「私たちの戦略は、すべての機器やプラットフォームで、できる限り多くの読者にコンテンツを提供することだ。また、配信する機器やプラットフォームは制限していない」。
この老舗パブリッシャーの復活劇は、新興デジタルパブリッシャーの価値を複雑化させてしまいかねない。老舗が新興のスキルを採用すれば(もしくは老舗が新興を完全に買収してしまえば)、新興の優位性が失われるからだ。ソーシャルメディアの時代には死んだと思われていた媒体も、これまで以上に重要な役割を果たすかもしれない。
「数年前、ソーシャルメディアがブランドの必要性を根絶してしまったため、人々はブランドが死んだと話していた。しかしブランドは本当に重要な役割を果たしている。情報量が多すぎてすべてを把握できないときなど、人々はすでに知っているブランドに戻ってくるからだ」と、ブルームバーグ・メディアのヘイブンス氏はコメントした。
Ricardo Bilton(原文 / 訳:BIG ROMAN)
Image via ThinkStock / Getty Images