ニュースパブリッシャーのザ・ウィーク(The Week)が、米国版のウェブサイトをリニューアルした。その目的は、数年前からカスタム広告に移行している広告主を引き付けることだ。自社ビジネスの変化を反映させ、スポンサード広告など、ネイティブ広告枠を拡大している。
ニュースパブリッシャーのザ・ウィーク(The Week)が、米国版のウェブサイトをリニューアルした。その目的は、数年前からカスタム広告に移行している広告主を引き付けることだ。自社ビジネスの変化を反映させ、スポンサード広告など、ネイティブ広告枠を拡大している。
新しくなったザ・ウィーク米国版のデジタルサイト、ザ・ウィーク・ドットコム(TheWeek.com)は、ページ全体ではなくセクションごとに読み込む「遅延読み込み(lazy loading)」を取り入れている。ページ全体を一度に読み込むと、しばしば処理が遅くなるためだ。
ザ・ウィーク・ドットコムの親会社デニス・パブリッシング(Dennis Publishing)で北米地域のレベニューオペレーション責任者を務めるアンディー・プライス氏によれば、ページが綺麗になり、読み込みが3倍速くなり、ビューアビリティ(可視性)が20%向上したという。Googleのアクティブビュー(ActiveView)とインテグラル・アド・サイエンス(Integral Ad Science)による測定で、ブラウザのアクティブセクションに面積の50%以上が1秒以上表示されたとき、ディスプレイ広告が「視認可能」と見なされる、とプライス氏は説明する。この条件は業界標準となっている。
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編集長のニコ・ローリセラ氏によれば、ザ・ウィーク・ドットコムは、5月26日にウェブサイトをリニューアルしてから、数字の変動はあるものの、ユーザー1人当たりのセッション数が5~10%、サイト滞在時間が15~30%上昇しているという。コムスコア(Comscore)によれば、ザ・ウィーク・ドットコムの4月のユニークビジター数は330万人で、1年前より61%減少していた。同社の有料の印刷版とのバンドル契約者数は40万人だという。
満を持してのリニューアル
今回の変更は、5年前から見られた需要に応えたものだ。全般的に、ディスプレイ広告は横ばいで、やや減少しているが、ネイティブ広告とカスタム広告は成長の原動力になっている」と、プライス氏は話す。広告主からの「ディスプレイ広告の依頼は減ったが、ネイティブ広告の依頼は増えた」という。ただし、ザ・ウィーク・ドットコムは具体的な数字を明らかにしていない。
プライス氏によれば、ネイティブ広告の売上は前年比「100%以上」増加しており、ディスプレイ広告は「一定に保たれている」という。新しいウェブサイトのネイティブ広告枠とディスプレイ広告枠の割合についてザ・ウィーク米国版に問い合わせたが、回答は得られなかった。
多くのパブリッシャーが数年前に経験したトレンドに、ザ・ウィーク・ドットコムは遅れて追随している形だ。ティヌイティ(Tinuiti)のパフォーマンスディスプレイ広告担当バイスプレジデント、ジェフ・リトワー氏は、アトランティック(The Atlantic)やニューヨーク・タイムズ(The New York Times)などのパブリッシャーは約5年前、「より良いユーザー体験のためにネイティブの機会を増やそう」と同様の変化を経験していると話す。「パフォーマンス、ビューアビリティ、クリックスルー率のすべてにおいて、ネイティブの方が勝っている」と同氏はいう。匿名希望のエージェンシー幹部は、ウェブサイトに変更を加える前、ザ・ウィーク・ドットコムの「ネイティブ(広告)を通じたカスタムの機会」には「空白」があったと述べている。
ネイティブ広告の強化の具体
ザ・ウィーク・ドットコムのネイティブ広告の強化は新しいコンテンツスタジオの構造に支えられている。デニス・パブリッシングは5月にコンテンツスタジオを一元化。米国と英国のチームがポートフォリオを介してコマーシャルライター、編集者、デザイナー、プロダクションマネージャー、イベントプランナーと連携できるようになった。ザ・ウィーク米国版の副発行人、サラ・スキアーノ氏によれば、2021年に入ってからスタジオの人員が250%増加したという。ただし、新たに何人が採用され、何人のチームになったかは明らかにしなかった。
ザ・ウィーク・ドットコムのネイティブ広告ビジネスは「2021年、前年を上回るペースで成長している」と、スキアーノ氏は述べている。ただし、詳細は不明だ。
プライス氏によれば、ザ・ウィーク・ドットコムはキプリンガー(Kiplinger)と同じDMPに移行し、その結果、両サイトでターゲティングとリーチを改善させ、クロスドメインプロモーションを可能にしたという。スキアーノ氏はほかの記事のリンクに紛れている直販用の広告枠であるスポンサードコンテンツブロックに言及し、たとえば、サイトをまたいでファイナンシャルアドバイザーをターゲティングできるようになったと説明する。プライス氏はさらに、「両方のサイトを使ってコンテンツを宣伝できるようになり、ひとつのサイトに月間6万人ではなく10万人を集められるようになった」と補足している。
コンテンツのパッケージ化も
ザ・ウィーク・ドットコムは、ウェブサイトのレイアウトも柔軟性を増し、編集者がさまざまなトピックやイベントに合わせて記事を移動させたり、コンテンツをパッケージ化したりできるようになった。編集長のローリセラ氏は、間もなく始まるニューヨーク市長選挙やパンデミックからの復帰など、広告主がサポートできる大きなトピックやイベントの記事をパッケージ化し、テーマごとに分析記事とニュース記事をミックスしたいと考えている。
サイトのナビゲーションは記事の種類ごとに整理される。新たなセクションであるトーキング・ポインツ(Talking Points)はさまざまな視点や意見による短文のニュース分析で構成される。オピニオン(Opinion)セクションは複雑な問題を深く掘り下げた長文記事で構成されるが、これは「人々がエコーチェンバー現象から抜け出すのを手助けをする」ため、積極的に「今」を伝えていくものだと、ローリセラ氏は話す。ローリセラ氏によると、最近行った読者調査で、回答者の90%以上が「同意できないものも含めて、さまざまな視点の記事を読みたがっている」という。
SARA GUAGLIONE(翻訳:米井香織/ガリレオ、編集:小玉明依)