ワシントン・ポスト(The Washington Post)は先日、若く多様な読者を獲得する方法を検討するためのタスクフォースの設立を発表した。彼らの任務は、若い読者を獲得するための新たなプロダクト、パートナーシップ、イニシアチブを監督することだという。
ワシントン・ポスト(The Washington Post)は先日、若く多様な読者を獲得する方法を検討するためのタスクフォースの設立を発表した。
「ネクストジェネレーション」と名付けられたこのグループは、「ひと握りの」ワシントン・ポスト社員で構成されており、彼らの任務は若い読者を獲得するための新たなプロダクト、パートナーシップ、イニシアチブを監督することだと、同社のデジタル担当マネージングエディターを務めるカット・ダウンズ・マルダー氏は述べる。ワシントン・ポストのジャーナリズムに導入される新たなフォーマット、スタイル、サービスとしては、ターゲットとなる読者層に人気の高いソーシャルメディア、音声プラットフォーム、ニュース配信サービスなどが考えられる。ただ、このタスクフォースの具体的な戦略はまだ固まっていない。
なお、タスクフォースを共同で指揮するのは、ワシントン・ポストのエディトリアルディレクターであるフィービー・コネリー氏と、ビジネスディレクターを務めるブラッドリー・ローテンバック氏(両氏ともこれまでの役職を退任し、フルタイムで業務に専念する)。タスクフォースには、編集部と営業部から社員が選抜される見込みだが、正確には何人が参加するのか、また社内採用のみなのか社外採用があるのかは明らかになっていない。一部のワシントン・ポスト社員はパートタイムで業務にあたると、ダウンズ・マルダー氏はいう。
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タスクフォース設立の目的
このタスクフォースの焦点は、若く多様なサブスクライバーの獲得だ。「成長を続けるためには、常に新しい読者を取り込まなければならない」と、ダウンズ・マルダー氏は語る。
ダウンズ・マルダー氏は、現在300万人を擁するデジタル購読者のうち、「若い」または「多様」とされる層が具体的にどれだけいるかについては言及を避けたが、同氏によると、ワシントン・ポストのオーディエンスの約25%は18~35歳だという。「この層にはまだ成長の余地がある」と、同氏はいう。ネクストジェネレーションがターゲットにする読者層は社内で定義されているが、ダウンズ・マルダー氏はその定義を公表しなかった。
2013年のAmazonによる買収されるまで、ワシントンD.C.に軸足を置いてきた同紙だが、その後は国内外の読者を増やしてきた。今回のネクストジェネレーションの取り組みは、その勢いを加速させ、さらなるオーディエンス拡大を目指すためのものだと、ダウンズ・マルダー氏は話す。
運営体制とアサイン背景
「我々にとって、社内横断的に人材を結集したプロジェクトは、これがほぼはじめてだ」とダウンズ・マルダー氏はいう。ネクストジェネレーションは「組織のあらゆる部分に影響を与え」、全社的コラボレーションを促進する。なおオーディエンスのインサイトは、ネクストジェネレーションの取り組みの「ロードマップづくり」の指針であると同氏は述べたが、彼らが具体的にどのようなインサイトの分析にあたるかは明言しなかった。
なおコネリー氏は、8年間ワシントン・ポストに勤め、最近では2020年に動画担当副ディレクターとしてビジュアル・フォレンジックス部門の創設に携わった。一方ローテンバック氏は、ワシントン・ポストでコマーシャルマーケティング部門のトップを務め、広告ソリューションの開発チームを率いている。
「役職の性質上、ふたりとも組織を横断する幅広い仕事をこなしてきた」とダウンズ・マルダー氏。「今回のイニシアチブでは、より幅広い視野をもてるよう、ニュースとビジネスの両サイドの人材を等しく登用したいと考えた」と、コネリー氏とローテンバック氏をアサインした背景を語った。
想定される取り組み内容
ワシントン・ポストは、すでにネクストジェネレーションのターゲット層にリーチしている、外部の組織やプラットフォームとの提携も検討している。ダウンズ・マルダー氏はその例として、教育機関や職業訓練機関、テック企業に言及した。
若者を取り込むためのワシントン・ポストの最近の動きはこれだけではない。同社は今年2月、トラビス・ライルズ氏を、新設されたインスタグラムエディターの役職に抜擢。同社のソーシャル&オペレーション担当責任者のマーク・スミス氏は当時、同紙のインスタグラムのオーディエンスは「現在の有料購読者よりも若く、多様性が高い傾向にある」と述べた(ダウンズ・マルダー氏は、ライルズ氏が行ったようなインスタグラムでの取り組みは、ネクストジェネレーションでも実施していきたい施策のひとつとしている。具体的には、視覚に訴えるストーリーテリングや、プラットフォーム上でのライブ配信に力を入れ、それらを「ワシントン・ポストのほかの媒体に展開する」というものだ)。
また、同社のエグゼクティブエディターに新たに就任したサリー・バズビー氏は5月、自身が今後取り組むべき同社の課題として、「毎日Webサイトを閲覧する習慣のない、若い世代のニュース消費者とつながりを築くこと」を挙げた。
メディアエコシステム全体に貢献する
オーディエンス開発、およびマーケティングを手がける企業、トゥウェンティーファースト・デジタル(Twent- First Digital)の創業者兼CEO、メリッサ・チャウニング氏は、「潤沢な予算」をもつメディア企業が、若い読者の獲得に投資することを賞賛し、「こうした取り組みは、自社の存続のためだけでなく、メディアのエコシステム全体の存続にも貢献する」と評した。
ワシントン・ポストが「コンテンツを消費するだけでなく、それに対価を払う若い読者を取り込むことができれば、高品質、かつファクトチェック済みのジャーナリズムを求める若い読者が増えることになり、誰にとってもいいことだ」と、チャウニング氏はいう。現状では、若者は主としてソーシャルメディアを通じてニュースに触れており、そこは誤情報が飛び交う空間だからだ。また、若い読者のあいだで、コンテンツに対価を払う習慣が定着すれば、「彼らは国内市場のローカルニュースにも課金する可能性が高くなると期待できる」と、同氏は語った。
[原文:The Washington Post hopes to bring in young, diverse readers with a cross-company task force]
SARA GUAGLIONE(翻訳:的場知之/ガリレオ、編集:村上莞)
Illustration by IVY LIU