広告キャンペーン販売においては、クリック数以上の評価基準が求められる。そこで、さらに詳細なパフォーマンス指標を提供するのではなく、むしろそこから離れた方向性で進めようとするパブリッシャーがいくつか現れている。その最新の例 […]
広告キャンペーン販売においては、クリック数以上の評価基準が求められる。そこで、さらに詳細なパフォーマンス指標を提供するのではなく、むしろそこから離れた方向性で進めようとするパブリッシャーがいくつか現れている。その最新の例がテレグラフ(The Telegraph)だ。彼らは最終的にはブランド(広告主)と消費者の繋がりの増加を保証することを計画している。これは、ブランデッドコンテンツのキャンペーンで、すでに彼らが行っている。これによって既存の在庫からの収益を増やそうというのが狙いだ。
これまでであれば、クリックスルー率(CTR)に加えてインプレッション数やビューアビリティといった指標をクライアントに提示していたが、こういった数値はテレグラフのジャーナリズムが持っている価値への関連性が低いと、彼らは述べた。現時点で、読者の注意を表していると、彼らが判断している指標の7から10種をクライアントにシェアしている。ここにはアクティブ滞在時間、ホバー時間、スクロール深度、そして広告クリエイティブに対してユーザー行動を予測するヒートマップ分析が含まれる。今後数カ月に渡って、テレグラフはこの7から10という数字をさらに絞り、広告主のキャンペーンが持つ目標の種類に合わせて、もっともインパクトが大きい指標数種にする計画を持っている。
「パブリッシング業界において普遍的に使われている計測方法としてのクリックスルー率に挑戦する形だ」と、テレグラフのコマーシャル・イノベーション部門ディレクターのキャレン・エクリース氏は言う。「みんながファネルの根元の細い部分に押し詰められ、パフォーマンスで評価されている状態だ。CTRはときに重要だけれど、それは全体像を示していない。誤解を与えるどころか、悪いケースではパブリッシャーや広告主の悪しき行動を促してしまう」。
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サブスクリプション優先の戦略
同社内では、広告キャンペーンの成功基準がCTRではうまく測れないケースを確認してきている。サブスクリプション優先の戦略に切り替えて1年が経った。この戦略は、サイトはより読者にフレンドリーに、そしてページでの滞在時間を増やすことを意味している。この1年のあいだ、コードをシンプルにし、ページにおける国の割合と読み込み時間を削減した。これらはすべて読者のユーザー体験を改善するためだ。サブスクリプションプロダクトでは記事の下に表示される広告の方が、右上のユニットに表示される広告よりも効果的だと判明した。このことも、読者とパブリッシャーの関係性をCTRが必ずしも反映していないことを示している。
広告代理店協会(The Institute of Practitioners in Advertising)やエンダーズ・アナリシス(Enders Analysis)のような業界団体はアナリスト団体の研究では、長期間、広告が人々の記憶に留まるためには環境のクオリティが高いことが重要だと述べている。
現時点では、テレグラフが実行しているキャンペーンのうち、このようなより厳密なレポートを提出することになるものは34存在している。そして1万9400ドル(約210万円)をコストで超えるキャンペーンがその対象となる。参入のハードルを低く設定することで今後参考にできる例を十分に生み出したいと考えている。しかしエクリース氏は、クライアントのなかにはこのコスト下限を満たすためにキャンペーンの予算を増やしたところも出てきていると述べた。いまのところは、テレグラフの在庫の値段設定に対する影響は与えない。
予測よりも多いディスプレイ収益
テレグラフの全収益のうちどれほどがディスプレイ広告キャンペーンによるものか、エクリース氏は明かさなかった。FacebookとGoogleと言った少数のテック大手によって広告収益が握られてしまっており、またサファリ(Safari)やファイヤーフォックス(Firefox)といったブラウザではCPMが減少している。こういった複数のプレッシャーが広告マーケットにあるなかで、ディスプレイ広告収益は2018年にテレグラフが予測していたよりも多くなっている、と最近の財務報告で分かる。テレグラフはプログラマティックダイレクト、プログラマティックギャランティード、そしてプライベートマーケットプレイスにおける取引と比べると、オープンマーケットプレイスからの収益への依存は低い。
「広告マーケットはそれでも収益の少なくとも50%を占めるだろう。良いセールスチームとともに、これまで以上に全力を尽くして取り組むことで、これまでの考えに挑戦し、入ってくるボリュームを最大化しようとしている」と、エージェンシーであるエッセンス(Essence)の屋外(OOH)、オーディオ投資、プリント部門の責任者であるニール・トゥーキー氏は言う。
テレグラフは春以来、より詳細なレポート報告をできるように取り組んできた。2017年から、自社エージェンシー、スパーク(Spark)によるブランデッドコンテンツキャンペーンに対しては、ギャランティー(保証)契約を提供してきている。その結果、クライアントの数は増え、キャンペーンのサイズとリピーターの数も増やしている。エクシース氏によると、これまですべてのギャランティーを達成してきたとのことだ。
課題は計測の先を見据えること
「世界は従来の指標の先を見据える必要がある。Googleのレポートに書かれていることの先へとプッシュしようとしている。クライアントのサイトに送り込むクリックにおいて、より高いCTRパフォーマンス・キャンペーンと比べて、どのレベルの滞在時間をクライアントに提供していると言えるのか? といった具合だ」と、英国ハースト・マガジン(Hearst Magazines UK)のプログラマティック部門責任者のライアン・バックリー氏は、先日テックプラットフォームであるライブランプ(LiveRamp)によってロンドンで開催されたイベントで語った。
ファイナンシャル・タイムズ(The Financial Times)とエコノミスト(The Economist)は時間をユーザーの注意を示すものとして利用することに時間と資金を投じてきた。しかし、こういった方法で成功を計測することは、より広範な業界へとスケールできずにいる。両社とも、これらのキャンペーンの規模を縮小している。
CTR以上の詳細なターゲティングが求められるなかであっても、業界に新しい取引の方法を導入すると、課題に直面する。
エージェンシー、ユニバーサル・マッカーン(Universal McCann)のクライアント・ディレクターであるローレンス・ダッズ氏は「パブリッシャーを横断する形で、コンプライアンスと同等に全員が理解できるような通貨がある必要がある。キャンペーンの成功が何を意味しているか、エージェンシーたちが追加で解釈をする時間をかける必要がないのであれば、シンプルであることがキーだ」と述べた。
Lucinda Southern(原文 / 訳:塚本 紺)