eマーケター(eMarketer)は、米国の音声アシスタント市場の予測をはじめて発表。Amazonが2015年音声アシスタント「Alexa(アレクサ)」を搭載するスピーカー「Echo(エコー)」を幅広いオーディエンスに提供開始したあと急速に市場が成長している。本記事では音声技術の現状を5つのグラフから読み解く。
音声技術はまだ用途が限定されているものの、着実に人気を集めている。調査会社のeマーケター(eMarketer)は、米国の音声アシスタント市場の予測をはじめて発表。Amazonが2015年、音声アシスタント「Alexa(アレクサ)」を搭載するスピーカー「Echo(エコー)」を幅広いオーディエンスに提供開始したあとで、多くのアナリストが予測したよりも、速いペースで市場が成長していることが明らかになった。
今回の記事では、音声技術の現状を5つのグラフから読み解いていく。
Amazonが優勢。主な要因はデバイスの安さ
消費者にとって、新しいものは安ければ試しやすい。Echo(150ドル、約1万7000円)とGoogle Home(129ドル、約1万4600円)はほぼ同じ値段だが、Amazonが2016年秋に売り出した小型版のスピーカーEcho Dot(エコー・ドット)はわずか50ドル(約5700円)でほかを圧倒する。
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eマーケターによると、音声アシスタント搭載スピーカー市場では、70%近くを占めるAmazonが優勢で、Echo Dotがその牽引力になっているという。「Echo Dotは第2世代が2016年10月にリリースされて以降、間違いなくEchoの売上増に貢献してきた」と、消費者情報リサーチパートナーズ(Consumer Intelligence Research partners)の共同創設者、ジョシュ・ローウィッツ氏は指摘する。「Amazonはアグレッシブな価格設定を行った」。

CIRPの調査による、Amazon Alexa製品の使用率の内訳
一番使っているのは若い世代
ミレニアル世代とその弟分たちがストリーミング動画とAR(拡張現実)の普及を促進したように、音声技術についても、ミレニアル世代がほかの世代よりはるかに多く利用している。eマーケターが示した音声アシスタントの米国人ユーザー数(月に1回以上使用)の世代別推移予測を見ると、2017年はミレニアル世代が2990万人で、ジェネレーションXの1560万人の2倍近くになっている。さらに、ミレニアル世代とそれより年上の消費者セグメントの差は、今後3年間で拡大すると予想されている。
ミレニアル世代の音声技術ユーザーは、2019年に3930万人となって、2017年から30%以上増加すると見られる。これに対し、ジェネレーションXは同期間で10%しか増加しない。なお、ベビーブーム世代の利用はほぼ横ばいの見込みだ。

世代別の音声技術ユーザーの割合。赤:ミレニアル、黒:ジェネレーションX、灰色:ベービーブーム世代
もっとも多い用途は「質問」
音声技術の利用目的はすでに多様化している。音声アシスタントの用途が多岐に渡る一因として、Echo Dotのようなスピーカーだけでなく、(iOS、Android、Windowsなど)主要モバイルプラットフォームのすべてで利用でき、さらに自動車でも対応が拡大している点が挙げられる。ビジネスインサイダー(Business Insider)傘下の「BIインテリジェンス(BI Intelligence)」の調査は、音声技術ユーザーの半数以上がテキストメッセージの送信に利用していることを示した。だが、Echoでこの機能を使えるのはAT&Tの契約者だけだ。

音声認識機能の使われ方。頻度別として、質門、検索、天気、メッセージ、通話、音楽、地図のディレクション、アラーム、ホームアプリケーションの操作、購入、ウーバー予約、生体認証、請求書支払い、P2Pに活用されている
パブリッシャー間の競争はすでに激化
音声分析プラットフォームのボイスラボ(VoiceLabs)によると、Alexaプラットフォームで利用できるスキルの数は、1月の時点ですでに7000を超えたという。
ボイスラボがAlexaプラットフォームのスキルをカテゴリ別に集計したデータによると、本数が多い2大カテゴリは「ニュース」と「ゲーム&トリビア」となっている。ハースト(Hearst)などのパブリッシャーはすでに、音声に注力するチームを編成。AlexaとGoogleの2大プラットフォームの違いが広がりはじめるなか、両プラットフォームで使える製品を開発するとみられている。

Amazon AlexaのApp Storeで提供されるアプリのジャンル内訳
容赦ないユーザーたち
第一印象を与えるチャンスは一度しかないといわれるが、音声技術は特にこれが当てはまる。音声アシスタントで一定のユーザー基盤を構築しているパブリッシャーが多い一方で、一度離れたユーザーに戻ってきてもらうのは簡単ではない。次のグラフは、Google Homeのあるアクション(Alexaのスキルに相当)について、12月後半の新規ユーザーと戻ってきたユーザーの推移を示しているが、アクションの全ユーザーのうち2週目にもアクティブなのはわずか3%しかいないことがわかる。
こうした数字は、プラットフォーム各社が対応するスキルやアクションをプロモートする仕組みを導入することで変わる可能性がある。これまでのところ、スキルやアクションがどんなものであれ、プラットフォームのストアに登録されてすぐが利用頻度が最高潮になるため、それに備えなければならないことを調査は示している。

音声アシストの新規ユーザーと既存ユーザーの、2週間以内の利用傾向。日が経つにつれて利用頻度が減少している
Max Willens(原文 / 訳:ガリレオ)