米メディア業界の大量解雇、ついに「第2波」も到来

コロナウイルスがアメリカ経済に大きな損害を与えるなか、春には同じようにメディア業界にも大規模な一時帰休や解雇、給与削減が波となって押し寄せた。ウイルス流行の第2波が観測されつつある今、パブリッシャーたちが期待していたような素早い業界の回復は、どうやら起きそうにない。

先日、ヴォックスメディア(Vox Media)はスタッフの6%を解雇すると従業員たちに向けて発表した。解雇されるスタッフの多くは、今年に入って早い段階で一時的な解雇を受けていた。またその1日前には、ガーディアン・ニュース・アンド・メディア(Guardian News & Media)が3100万ドル(約32億円)の収益減を原因として、180の職を削減すると発表した。そのうち70人がエディトリアルとなっている。BBCは地方のニュース部で450人の社員を解雇すると発表した数カ月後に、最近になってまた70の職を削減すると発表した。

またほかにも、未公開株式会社チャサム・アセット(Chatham Asset)によって破産オークションで購入されたマクラッチー(McClatchy)は、4月の段階で一時帰休とした115人の従業員のうち84人を解雇すると発表した。

職削減以外にも、経費削減の影響を多くの従業員たちが感じている。先日、ガネット(Gannett)では従業員の福利厚生が削減されることが伝えられた。

アメリカ経済がいまだ停滞しているなか、このような解雇のニュースはまだまだ今後も続くだろう。

「状況はさらに悪くなるだろう」

ニュースギルド(News Guild)の会長であるジョン・シュルース氏は、「状況はさらに悪くなるだろう」と語る。ニュースギルドはロサンゼルス・タイムズ(Los Angeles Times)やバズフィード・ニュース(BuzzFeed News)といったパブリッシャーにおける労働組合結成を支援してきた。ニュースギルドはパンデミックが原因で起きた解雇が原因で、200人ほどのメンバーを失ったという。

レポーター、そしてエディターにとって2020年は非常に暗い年となった。米DIGIDAYの調査では、パブリッシャー関係者の50%が一時帰休や解雇が自社で実施されたと回答している。再就職支援企業のチャレンジャー・グレイ・アンド・クリスマス(Challenger, Gray, and Christmas)のリサーチによると、ニュースルームでは2020年の前半だけでも1万1000の職が失われた。これは2008年に記録された1万4000を破る勢いだという。

今年行われたこれらの解雇のなかには、避けようのない現実を反映したものも含まれている。全国でロックダウンが行われている最中に大きなイベント部門をキープし続けることは理にかなっていない、といった具合だ。しかし、パンデミックを理由とした大量解雇が原因となって、ビジネス回復に制限も出ていると本稿の取材に応じてくれた関係者は言う。

悪循環を生む人件費削減も

「削減のなかには完全に理解できるものもある。しかし、なかには完全に筋が通っておらず、ビジネスとクライアントのニーズがまったく理解できていないことが分かるものもある」と、エコノミスト(The Economist)の内部関係者のひとりは述べた。エコノミストでは5月に90人ほどが解雇された。

営業面に関してはこのような人件費削減が悪循環を生み出していると、この人物は言う。売り込みに投入できるスタッフやリソースが減ることで案件を勝ち取る可能性が減ってしまう。そのためクライアントがパブリッシャーと過ごす機会が減ってしまい、今後の関係性に悪影響を与える。

「パートナーたちが長い間(パブリッシャーと)コラボレーションをしなくても大丈夫だった場合、彼らはパブリッシャーを必要していると言えるのか」と述べた。

コメントを求めたところ、エコノミストの広報担当者は「同僚や友人たちがこのような状況の下で去らざるを得ないのは、もちろん非常に辛いことである。ほかのすべてのオプションを検討し尽くしたあとに取られた難しい判断だった。ビジネスの長期的な維持を確保するための決断であり、将来の成長を確保するため、ビジネスの重要な分野を守るための決断だ。これらの分野とは、ジャーナリズム、プロダクトとテクノロジー機能、ソリューションセールス、マーケティング機能の改善、そしてデジタルプラットフォームだ」と回答した。

楽観的な展望は消えてしまった

2020年の第2四半期は多くのパブリッシャーたちにとって酷い状況であった。前述の調査に回答したうち80%は、第2四半期の目標収益を下方修正しなければいけなかったと回答している。しかし、なかにはアメリカにおけるウイルスを巡る状況がしっかりと管理できる状況になれば状況は良くなるだろうと、楽観視しているところもあった。

3月と4月のショックを広告主たちが切り抜けたあと、多くの分野における支出は確かに回復している。しかし、その回復の仕方はゼロか全回復か、という極端な様相を呈している。

それでも特に、テキサス、カリフォルニア、フロリダ、アリゾナといった大きな州を中心としてウイルス感染率が継続して上昇しているなかで、エグゼクティブたちが抱えていた楽観的な展望は消えてしまった。

「人々が今と比べてもっと楽観的だった5月初旬に我々は調査を行った。9月までには全体的には通常の状態に戻ってるだろうと話をしたことを覚えているが、今ではそんな楽観を持っている人がいるか分からない」とeマーケター(eMarketer)の主任アナリストのニコール・ペリン氏は言う。

先月、eマーケターはデジタル広告市場の2020年の展望を改訂した。ペリン氏によると年比較での17%の増加という当初の予想から、1%の増加になった。

「最悪の事態は、まだこれから」

楽観的な気持ちに代わって生まれているのは、あらためて(将来の)不確かさを実感する状況だ。このことは、思わぬサプライズに喜ぶケースも生んでいる。とある大手デジタルパブリッシャーの最高収益責任者は匿名を条件に取材に応じてくれた。この人物の会社では、第2四半期の収益予想を40%ほど下回り、第3四半期は収益予想を30%下回ると予想して開始した。

第3四半期に入って数週間が経ち、もともとの予想を数%だけ下回る結果になる可能性が若干出てきたと、この人物は述べた。しかし第4四半期に関しては、まだ疑問符が残っている。「誰も計画すら立てていない状況だ」とこの人物は述べた。

給与保護プログラム(Paycheck Protection Program)、CARES法、失業保険といった支援プログラムが終わった時に、経済はさらに悪化する可能性を覚悟しているメディアリーダーたちもいる。BuzzFeedのCEOであるジョナ・ペレッティ氏は、インフォメーション(The Information)のインタビューに「最悪の事態は、まだこれから起きると思う」と語っていた。

[原文:The second wave of media layoffs is here]

(翻訳:塚本 紺、編集:長田真)