モバイルゲームが急速な伸びを見せるなか、モバイル業界の他分野のアプリ開発業者は、ゲーム業界から得た学びをフィットネスや仮想通貨といった、さまざまな分野に適用している。米DIGIDAYはこのたび、そういった非ゲーム業界のモバイル開発業者4社に話をうかがい、ゲーム業界を参考にしている理由を聞き出した。
コロナ禍中に急増したモバイルアプリ利用――その勢いを先導しているのがモバイルゲームだ。アプリ関連の市場データ/分析ツールを提供する企業アップアニー(App Annie)によれば、2019年度第2四半期から2020年度第2四半期にかけて、モバイルアプリ購入額はiOSが15%増、Google Playが25%増を前年比で記録。いずれのプラットフォームにおいても全分野のなかで、ゲームが最大かつ最速の成長株となっている。ちなみに、具体的な成長率は発表されていない。
このようにモバイルゲームが急速な伸びを見せるなか、モバイル業界の他分野のアプリ開発業者は、ゲーム業界から得た学びをフィットネスや仮想通貨といった、さまざまな分野に適用している。米DIGIDAYはこのたび、そういった非ゲーム業界のモバイル開発業者4社に話をうかがい、ゲーム業界を参考にしている理由――そして、そのノウハウの非ゲーミングアプリへの適用法――を聞き出した。
主要点:
- モバイルゲーム開発業者は、アプリを1種のソーシャルネットワークと捉える重要性に早くから気づき、FacebookやGoogleといった既存のユーザーネットワークに依存せず、熱心なモバイルユーザーからなるネットワークを活用した。「非ゲーミング界は長らくソーシャルネットワークに過度に依存しており、それが成長のための唯一のチャネルとなっている場合も少なくない」と、マーケティングソフトウェア企業アップラヴィン(AppLovin)の国際事業開発部門VP、ダニエル・チャーナホスキー氏は指摘する。「しかしゲーミング界の場合は、様相が少々異なる。かなり早い段階からソーシャルネットワークだけに頼らず、弊社やいくつかの競合他社のように、実際のネットワークを利用した。だからこそ、既存の枠を越えて行かなければならないと、つまり、ユーザーはFacebookで見つかるユーザーだけではない、という理解が以前からあった」。
- モバイル開発業者は以前から、自社商品の評判を広めるために、多くのブランドや企業と提携してきており、この戦略はモバイル業界全体でますます一般化しつつある。チャーナホスキー氏いわく、自社調べによれば、モバイル開発業者の提携ブランド数は平均6~9社だという。「非ゲーミング界ではたいてい4社、仮想通貨界でも3社はある。仮想アプリはFacebookやGoogleでは使えないことが多々あるからだ」。
- A/Bテストはモバイルゲーム業界よりもはるかに歴史が長いものだが、モバイル開発業者はいま、「A/Bテストに執心している」と、伊モバイルアプリ企業ベンディング・スプーンズ(Bending Spoons)のマーケティングテクノロジー部門トップ、フランチェスコ・マンコーネ氏は語る。同氏とその同僚らはこの手法を用い、自社ゲームであるライヴ・クイズ(Live Quiz)や伊政府公認のコロナ接触追跡アプリのインムーニ(Immuni)の開発および合理化に成功している。「ゲーミング界はとりわけ、商品の根幹にA/Bテストを適用していると、私は確信している」と、チャーナホスキー氏は断言する。
- 非ゲーム界のモバイル開発業者は、アプリ内広告に双方向性およびゲーミフィケーションを取り入れ、ゲーム内広告に近いものにすることで、ユーザーのエンゲージメント維持やエクスペリエンス向上も図っている。「それはゲーミング業界において非常に重要な側面であり、質の高い広告配信に欠かせない」とマンコーネ氏。「そしてそれは、我々がベンディング・スプーンズにおいて創業以来行なっていることでもある」。
合流する労働力
モバイル業界のアプリ開発業者がモバイルゲーム企業を参考にしている理由のひとつは、非ゲーム企業がここ数年、ゲーム界からの人材採用を戦略的に行なっている事実にある。その結果、モバイル業界には現在、ゲーム界にルーツを持つ開発業者やマーケター、幹部らが少なからず存在する。「マーケティングの観点で言えば、かなりの重複がある」と、仮想通貨取引プラットフォームであるコインディーシーエックス(CoinDCX)のマーケティング部門VP、アドヴィット・サデヴ氏は語る。「共通点のひとつは、利用できるマーケティングチャネルが非常に似ている点だ」。
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モバイルゲーム界の才能をスカウトする場は、モバイルアプリ業界だけとは限らない。たとえばNetflixは7月、ソーシャルゲームのジンガ(Zynga)の元幹部でもあったマイク・ヴァードゥ氏をゲーミング部門の実質トップに据えた。
多様なオーディエンス
モバイルゲーム開発業者はモバイル業界のほかの開発業者よりも明敏である可能性がある。というのも、ユーザーベース拡大のために、時代遅れの誤解と戦ってこざるを得なかった、という歴史があるからだ。ゲームおよびゲーマーの定義が拡大を続けるなか、モバイルアプリ開発の過程は今後ますます合理化が進む――そして、業界中の多様なアプリ開発になおいっそう適用されることになる――と、チャーナホスキー氏と氏の同僚らは確信している。
「私が思うに、ゲーミングはすでにあらゆる年齢層に浸透する地点にまで達している。『御社の商品利用者の平均年齢層は? 男女比は?』といった質問をよく受けるが、それは実際、我々にはさほど重要ではない。理由は我々の業務の、いやゲーミング界全体のスケールにある」。
[原文:The Rundown: How mobile app developers are taking cues from the mobile gaming space]
ALEXANDER LEE(翻訳:SI Japan、編集:長田真)