英国のフューチャーPLC(Future plc)は、力強い成長の年を振り返り、このさきはさまざまなオプションを用意して、事業の将来性を確保したいと考えた。同社がさきごろ発表した文書では、そのひとつとして「脱炭素化」を掲げ、今後5年をかけてカーボンニュートラルをめざすとしている。以下に要点をまとめる。
英国に本社を置くパブリッシャーのフューチャーPLC(Future plc)は、力強い成長の年を振り返り、このさきはさまざまなオプションを用意して、事業の将来性を確保したいと考えた。
同社がさきごろ発表した文書では、そのひとつとして「脱炭素化」を掲げ、今後5年をかけてカーボンニュートラルをめざすとしている。
以下に要点をまとめる。
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要点まとめ:
- フューチャーの環境目標は、12月9日に発表されたより広範な「責任戦略(Responsibility Strategy)」という文書に規定されている。この戦略では、透明性をめぐる目標値も設定しており、同社が運営する多様なメディアブランドを活用して、環境保護や社会正義に関する諸課題を「拡散・啓発」するとしている。
- この文書では、同社の温室効果ガス排出量に関する監査と評価、および脱炭素化達成の見通しも公表している。
- 12月第1週、フューチャーは通年の収益を前年比79%増の8億200万ドル(約911億円)と発表。この収益増の大部分は企業買収によるもので、同社はデニスパブリッシング(Dennis Publishing)の12タイトルおよびマリクレール(Marie Claire)の米国事業を買収している。フューチャーによると、既存事業の成長率は23%だった。
メディア業界の環境元年
COP26(国連気候変動枠組条約第26回締約国会議)の影響もあり、2021年は、メディア企業が二酸化炭素排出量の削減や事業活動による環境負荷について、より公に語りはじめた年となった。
たとえば、フューチャープラネット(Future Planet)は、BBCニュース(BBC News)が運営する小規模なサブブランドだが、自ら脱炭素化に取り組み、この1年、その活動を報道してきた。パブリッシャーに限らず、エージェンシーたちも、環境問題に対する積極的な取り組みをアピールしはじめた。たとえば、メディアエージェンシーのエッセンス(Essence)は、CO2排出量の計算機を導入して、同社のメディアプランが環境に与える影響をクライアントに知らせている。さらに、パブリッシャー、エージェンシー、放送局、分析企業など、複数のメディア企業が連携して、コンテンツ配信に伴う温室効果ガスの排出量を算出するツール、DIMPACTを公開している。
カーボンニュートラルの目標を公言しているメディア企業はフューチャーに限らない。BBCとコンデナスト(Condé Nast)も2030年の脱炭素化をめざしている。また、アクセルシュプリンガー(Axel Springer)は、10月に発表した報告書で、子会社の脱炭素化を支援することにより、2023年のカーボンニュートラル達成をめざすと表明した。
課題はあれど、マイナス要因を上回る成長
メディアのサプライチェーンが排出する温室効果ガスの研究が進むなか、フューチャーの脱炭素化の歩みにも、ある程度の遅れは生じるかもしれない。それでも、同社が行った環境監査では、「事業の成長に伴って、エネルギー効率も改善している」という経営陣にとっては喜ばしい結果が出ている。12月9日発表の文書によると、排出原単位(売上高に対する、事業活動による温室効果ガスの排出量)は、売上高が増える一方で、着実に低下しているという。
2020年から2021年にかけて、フューチャーの排出原単位は29%低下した。
[原文:The Rundown: Future plc wants to be carbon-neutral by 2026]
MAX WILLENS(翻訳:英じゅんこ、編集:長田真)