ジェットコースターのような状況が続くアドテク市場で逆境を乗り越えようと、パブリッシャーがまるで神経質なチワワのような慎重さを見せている。
そんな彼らを誰が責められるだろうか。実際、この数カ月は厳しい試練の連続だった。
発端は、シリコンバレーバンク(Silicon Valley Bank)の破綻によって、支払いを受けられるかどうか危うくなったことだ。その後、EMXデジタル(EMX Digital)の破産やヤフーのSSP閉鎖、そして最近のメディアマス(MediaMath)の破産といった大手アドテクベンダーの終焉によって、パブリッシャーは十分な支払いを受けられるのか疑問を抱くことになった。
こうした不確実な状況のなか、彼らの不安は慎重さへと変化している。
パブリッシャーの態度はシビアに
その結果、パブリッシャーは提携を検討する企業により厳しい目を向けるようになった。自分たちの利益を守るために、鋭い質問を投げかけたり要求を強めたりしているのだ。
「パブリッシャーは、アドテクベンダーとの関係を以前より注視するようになった」と、アドテク企業のオグリー(Ogury)で最高供給責任者を務めるベンジャミン・ランフライ氏はいう。同氏の会社は、1カ月前のメディアマスの破産による混乱に巻き込まれて以来、パブリッシャーの態度が変化するのを目の当たりにしている。
パブリッシャーのなかには、アドテク企業が財務面で安定し、支払いを期日通りに行っている実績があるかどうか詳しく調べるところも出てきた。
ランフライ氏が指摘しているように、パブリッシャーが精査しているのは、シーケンシャル・ライアビリティ(Sequential Liability:順次負債)条項に対するアドテク企業のスタンスと、支払い義務の履行状況だ。不確実な時代には、この両方の要素が重要となる。強力なシーケンシャル・ライアビリティ条項は財務責任へのコミットメントを、期日通りの支払い実績は信頼度を示している。
リスクの最小化を求める声が高まる
さらにパブリッシャーは、アドテク企業に対し、他の企業から支払いを受けられない事態に備えた保険への加入の有無を尋ねている。
「一部の企業が実際にさらされたリスクを考えれば、保険責任の話は今後さらに取り上げられることになるだろう」と、ランフライ氏は語った。
もっとも、パブリッシャーが以前からこうした質問をしていなかったわけではない。リスクにさらされる金額の大きさから、彼らは当然質問をしていた。だが今、こうした問いかけの必要性が高まっていることは間違いない。特に、最大手や大手のパブリッシャーはさらに取り組みを進め、アドテクベンダーの資金の出所や彼らが直面しているリスクをより深く理解しようとしている。
デジタル広告プラットフォームのガムガム(GumGum)でエグゼクティブバイスプレジデントを務めるアダム・シェンケル氏は、次のように説明する。「私たちの資金の出所や直面しているリスクをより詳しく知ろうと、頻繁に連絡してくるパブリッシャーは一定数存在するが、最近は明らかに増えてきた」。
ジェットコースターのような状況が続くアドテク市場で逆境を乗り越えようと、パブリッシャーがまるで神経質なチワワのような慎重さを見せている。
そんな彼らを誰が責められるだろうか。実際、この数カ月は厳しい試練の連続だった。
発端は、シリコンバレーバンク(Silicon Valley Bank)の破綻によって、支払いを受けられるかどうか危うくなったことだ。その後、EMXデジタル(EMX Digital)の破産やヤフーのSSP閉鎖、そして最近のメディアマス(MediaMath)の破産といった大手アドテクベンダーの終焉によって、パブリッシャーは十分な支払いを受けられるのか疑問を抱くことになった。
Advertisement
こうした不確実な状況のなか、彼らの不安は慎重さへと変化している。
パブリッシャーの態度はシビアに
その結果、パブリッシャーは提携を検討する企業により厳しい目を向けるようになった。自分たちの利益を守るために、鋭い質問を投げかけたり要求を強めたりしているのだ。
「パブリッシャーは、アドテクベンダーとの関係を以前より注視するようになった」と、アドテク企業のオグリー(Ogury)で最高供給責任者を務めるベンジャミン・ランフライ氏はいう。同氏の会社は、1カ月前のメディアマスの破産による混乱に巻き込まれて以来、パブリッシャーの態度が変化するのを目の当たりにしている。
パブリッシャーのなかには、アドテク企業が財務面で安定し、支払いを期日通りに行っている実績があるかどうか詳しく調べるところも出てきた。
ランフライ氏が指摘しているように、パブリッシャーが精査しているのは、シーケンシャル・ライアビリティ(Sequential Liability:順次負債)条項に対するアドテク企業のスタンスと、支払い義務の履行状況だ。不確実な時代には、この両方の要素が重要となる。強力なシーケンシャル・ライアビリティ条項は財務責任へのコミットメントを、期日通りの支払い実績は信頼度を示している。
リスクの最小化を求める声が高まる
さらにパブリッシャーは、アドテク企業に対し、他の企業から支払いを受けられない事態に備えた保険への加入の有無を尋ねている。
「一部の企業が実際にさらされたリスクを考えれば、保険責任の話は今後さらに取り上げられることになるだろう」と、ランフライ氏は語った。
もっとも、パブリッシャーが以前からこうした質問をしていなかったわけではない。リスクにさらされる金額の大きさから、彼らは当然質問をしていた。だが今、こうした問いかけの必要性が高まっていることは間違いない。特に、最大手や大手のパブリッシャーはさらに取り組みを進め、アドテクベンダーの資金の出所や彼らが直面しているリスクをより深く理解しようとしている。
デジタル広告プラットフォームのガムガム(GumGum)でエグゼクティブバイスプレジデントを務めるアダム・シェンケル氏は、次のように説明する。「私たちの資金の出所や直面しているリスクをより詳しく知ろうと、頻繁に連絡してくるパブリッシャーは一定数存在するが、最近は明らかに増えてきた」。
それがまさに今のトレンドだ。こうしたトレンドは、危機的な状況で最高潮に達し、事態が落ち着けば冷めてくるだろう。とはいえ、この最新のトレンドの波がパブリッシャーの意識を高め、自分たちが直面しているリスクへの警戒感を強めていることは間違いない。
「要するにパブリッシャーは、アドテク企業が自分たちの代理人として行動し、あの(メディアマスの破産)ような状況で自分たちの望む行動を取ってくれるかどうかを確かめているのだ」と、シェンケル氏はいう。「もちろん、彼らはアドテク企業が広告収益を最大化してくれることを望んでいるが、同時にリスクを最小化してほしいと考えている」。
「適切」なパートナーはどこにいるのか
さらにパブリッシャーは、アドテク企業の財務安定性を評価するだけでなく、他のアドテクパートナーとすでに築いた関係を壊さずに収益を増やす方法を探っている。
SSPのインデックス・エクスチェンジ(Index Exchange)の観測によれば、今年初めに起こったEMXの破綻やヤフーのSSP閉鎖の余波で、パブリッシャーからの問い合わせが大幅に増えているという。
「パブリッシャーの関心は、どのパートナーが付加価値をもたらしてくれるのか、実際のところ何社と提携する必要があるのかといった話に傾きつつある」と、インデックス・エクスチェンジのCEO、アンドリュー・カサーレ氏は話す。「パブリッシャーによっては、ベンダーに対してデューデリジェンスを実施しているところもある。すべての(アドテク)企業が同じような状況にあるわけではないとの見方が広がっているからだ」。
なかには、インデックス・エクスチェンジのような企業にアンケートへの記入を求めてくるケースもある。そればかりか、アドテク版ベイクオフ(制限時間内にパンを焼く腕を競うコンテスト)への参加をパートナーに要求するパブリッシャーもあるという。
「これは最も強力な形の評価手法だ。数週間にわたって各パートナーとの仕事を中断したり再開したりすることで、パートナーから得られる付加価値を確認したいとパブリッシャーが考えていることがわかる」と、カサーレ氏はいう。「数年前に指名したパブリッシャーが、当時ほど自社に適した相手ではなくなっている可能性があるため、この取り組みは重要だと思う」。
その点で、スマートテクノロジーやテストは一定の役割を果たしている。だが、財務リスクのようなリスクを回避する大きな鍵は、市場に注目し続けることだ。
パブリッシャーによる取締時代、は来ない
「たいていの場合、問題を回避できるかどうかは、メディアマスのような問題の発生を察知できる目と耳があるかどうかにかかっている」と、さまざまな業界のパブリッシャー数百社の広告管理を請け負うフリースター(Freestar)のCEO、カート・ドネル氏はいう。「当社の場合は、SSPレベルのパートナーと話し合った後、メディアマスとの話し合いを経て懸念を抱いたため、5カ月前に(メディアマス関連の)事業を停止した。リスクが限界に達していたのだ」。
ただし、こうした取り組みがパブリッシャーによる大規模な取り締まりを意味しないということは、明確にしておきたい。それほどの影響力を持つパブリッシャーは少なく、たとえ持っていたとしても、パートナー企業に大きく依存しなければ収益を上げられないのが現実だからだ。
目の肥えたパブリッシャーの登場は、むしろ差別化されていないアドテクベンダー、つまりコモディティ化した市場に飲み込まれ、価格で競争するしかないベンダーにとって悪いニュースといえる。
[原文:The rise of discerning publishers: Ad tech vendors face increased scrutiny]
Seb Joseph(翻訳:佐藤 卓/ガリレオ、編集:分島翔平)