ブルームバーグメディア(Bloomberg Media)のCEOジャスティン・スミス氏は1年前、プラットフォーム戦略を盲信するパブリッシャーに警告を促した。さらに同氏は、先日開催された「Digital Publishing Summit」にて、再びGoogleとFacebookの寡占状態の危険性について訴えた。
ブルームバーグメディア(Bloomberg Media)のCEOジャスティン・スミス氏は1年前、プラットフォーム戦略へやみくもに飛びつくパブリッシャーたちに警告を促した。そして先日、コロラド州ベイルで開催された「Digital Publishing Summit」にて、あらためてデュオポリー(GoogleとFacebookの市場独占状態を意味する)の危険性について訴えた。
同氏が引き合いに出したのは、業界団体デジタル・コンテント・ネクスト(Digital Content Next)が実施した最近の調査。この調査では、パブリッシャー数社の売上高のうち、配信コンテンツの割合が14%にとどまることが明らかになったのだ。
「私は昨年、事業をプラットフォームにアウトソースするだけでパブリッシャーが儲けられる明確なビジネスモデルなど存在しない、と主張した。2016年にFacebookのインスタント記事や GoogleのAMP(アンプ:Accelerated Mobile Page)などのソーシャル製品に対する興奮が半年ほどで薄れてから、多くの企業が経費の削減や撤退を開始した。事業価値を生み出す主要ソースとしてプラットフォームと提携すべきだという確信や信念に、大きな変化が生じてきた」と、スミス氏は語る。
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しかし、スミス氏によると、暗い見通しばかりではない。自社ブランドの優位性や製品の差別化、GoogleやFacebookに依存しない収益源を模索し続ければ、パブリッシャーにはまだ果たすべき重要な役割があるという。以下は、セッション中のスミス氏による発言を、内容を明確にするために若干編集したものだ。
デジタル革命は(ようやく)はじまったばかり
「デジタル革命はまだ、はじまったばかりだ。従来型広告が依然として、広告売り上げ全体の65%を占めている。第2に、Facebookが握る250億ドル(約2.7兆円)は、ほとんどダイレクトレスポンス広告に流れている。まだ2500億ドル(約27兆円)の金が、デジタルに移行せずに、テレビや紙にとどまっている。強力なブランドと素晴らしい環境、優れたコンテンツを備え、ブランド広告のパートナーと長年提携してきたパブリッシャーは、そうした分野のシェアをもっと伸ばせる見込みはかなり高い」。
差別化が生き残りのカギ
「プラットフォームは、パブリッシャーのコモディティ化を進めた。パブリッシャーがプラットフォームのアルゴリズムから高く評価されることを望んで、同じタイプのコンテンツばかり作ってきたからだ。他社も制作しているコンテンツを制作するのはすぐにやめて、コンテンツ制作のアプローチを見直さなければならない。ほかの誰も制作していないコンテンツを作るべき。ハードルは高いが、うまくやれば、重要な構成要素が備わり、ターゲットにしているオーディエンスにとって必読のコンテンツになれる」。
スミス氏が監修したクオーツ(Quartz)の勝因は、ブランドを優先しプログラマティックを排除したこと
「クオーツのビジネスモデルは、最初から、バナー広告や、インタラクティブ広告協議会(以下、IAB)の基準に沿った広告ユニットを決して受け入れなかった。同社は現在、業績予想が3000万ドル(約33億円)、CPMが60ドル(約6600円)で、驚異的な存在となっている。もし、IABの基準に沿った標準的な広告ユニットを採用していたら競争に負け、1桁のCPMだっただろうし、顧客である広告主と深い関係を築くことはできなかっただろう」。
広告主のGoogleへの不信感を軽視してはいけない
「一時的な盛り上がりだとは思わない。ここのところ2カ月おきに起きてきたこうした突発的な動きを振り返れば、本当に重要なのは、『このような問題が十分な速さで解決されていないのはなぜか?』だ。絶えずこうした問題が起こってくるのなら、公平無私なプラットフォームとアルゴリズムに真実は含まれていないのではないのか? そして、このような突発的動きがますます重要になるなかで、(抵抗するために)広告主同士が協力しつつあり、パブリッシャーは、自分たちの環境の質について肯定的に論じ、力を結集しはじめている。パブリッシャーのあいだで業界全体に渡る、取り組みはこれまで見たことがないが、そのような対話は行われようとしている。ただ、状況がもっと切迫しないと、実現しないかもしれない」。
プラットフォームは圧力を感じつつある
「プラットフォームは、優れたコンテンツが、プラットフォームでのエンゲージメントの大部分を生み出す原動力となることに気づきつつある。はじめて、プラットフォームから譲歩や柔軟性が引き出され、もっとパートナーらしいアプローチが実施されようとしている」。
プラットフォームはもっとえり好みすべき
「私が知る限り、ブルームバーグが築いたプラットフォームとの関係のなかでは、Twitterとの関係がもっとも成功している。我々のテレビチャンネルの動画フィードから、Twitterのアカウントに3本の番組を公開している。Twitterのオーディエンスを、Twitterとともに公平にマネタイズしている。これは営業チームと一緒に話し合い、取り組んできたこと。FacebookやGoogle相手に、そういった関係を想像できるだろうか? 絶対に想像できないと思う」。
Sahil Patel(原文 / 訳:ガリレオ)