NYT の人気 ポッドキャスト 、「グローバル」路線に舵切り:ブレグジットを皮切りに

ニューヨーク・タイムズ(The New York Times)のポッドキャストニュース番組「ザ・デイリー」(The Daily)は、全世界でオーディエンスの数を伸ばすべく、ヨーロッパの政治を深く掘り下げた1週間に渡るシリーズ番組の配信をはじめた。

2019年6月10日からはじまっているこの毎日のニュースポッドキャストでは、イギリスがブレグジットに関する交渉で大きな失敗をした影響を受けてポピュリスト党や国民党の政策が台頭していることについて深く掘り下げていく予定だ。通常は、この番組は最新のニュースと分析を合わせて配信している。「ザ・デイリー」はこれまでに、5回ほどブレグジットの話題を取り上げている。このシリーズ番組は、このトピックをさらに掘り下げる取り組みの一貫だ。

このシリーズのプロデューサーはクレア・トーニスコーター氏とリンジー・ガリソン氏だ。彼らは、タイムズのベルリン支部局長のカトリン・ベンホールド氏とともに、ドイツ、イタリア、フランス、およびポーランドを飛び回っている。

「このポッドキャストは、オーディエンスとともに行う習慣、儀式、そしてルーティーンだ」と、「ザ・デイリー」のエグゼクティブプロデューサーのセオ・バルコム氏は語る。「我々にはスクープ記事があり、リーチも高く、大きく国際的なニュースルームもある。これは、ほかには誰も持っていない我々の資産だ」。

200名のレポーターを活用

「ザ・デイリー」が世界規模でオーディエンスを拡大していくうえでは、ニューヨーク・タイムズがアメリカ国外に抱える200名ものレポーターを活用することができる。ニューヨーク・タイムズによると、ポッドキャストが抱える1日あたり200万人のリスナーのうち、20%がアメリカ国外のリスナーであり、カナダに次いでイギリスが2番目に大きな市場だという。アメリカのパブリッシャーが抱える海外でのオーディエンスとしては、国外在住のアメリカ人が考えられがちだが、イギリス国内でのオーディエンスの半分以上がイギリス人だ。

これからの1年間、このポッドキャストのプロデューサーは、国際的な記事に絞って、注力していくだろう。

「ザ・デイリー」は、エコノミスト(The Economist)やガーディアン(The Guardian)のような多くのパブリッシャーによるニュースポッドキャストの世界的なトレンドに火をつけた。2017年に倉庫部屋のような大きさの部屋で、4名体制で始まったこの番組は、現在は30名に拡大した音声チームの隣で働く15名の体制となった。音声チームは現在、3つのスタジオを所有している。

広告と購読の二枚看板

同社によると、番組の収益性は高い。ニューヨーク・タイムズの直近の収支報告において、COOのメレディス・コピット・レヴィエン氏は、2019年の最初の3カ月間でのデジタル広告収益率は前年比で19%増えており、なかでも「ザ・デイリー」が配信したポッドキャストを通じて得られた収入がもっとも大きかったと語った。

ポッドキャストは広告収入というメリットを超えて、世界各国で定期購読者を増やすことができる。タイムズは、2025年までに定期購読者数を1000万人にするという目標を掲げている。現在の購読者数は450万人だ。デジタル限定の定期購読のうち、16%がアメリカ国外からの購読だ。

サブスクリプションの体験のなかで、音声がどのような役割を果たせるかについては、誰もが理解している。ノンフィクションのポッドキャストシリーズの先駆けとなっている「カリフェイト」(Caliphate)で、タイムズは定期購読者が一般公開に先駆けて視聴できるようにした。それによって、同社はコンバージョン率が上昇したと主張しているが、具体的な数字は明かしていない。

音声と定期購読者の関係

タイムズはまた、2019年5月に開始された「ザ・デイリー」内の広告を通じて、音声と定期購読者の関係を調査している。この音声広告では、バルコム氏や番組を一緒に作り上げた同僚たちへのインタビューを取り上げ、彼ら自身の体験や、タイムズのコンテキストを説明している。バルコム氏によると、番組のファンであるイギリス人のリスナーは、30歳以下の層が半数を占めているという。彼らは、番組の支えになる一番の方法が定期購読だということを知らずにその広告を聞いたあと、定期購読を希望する意思をeメールやTwitterに書き込んでいた。

同社によると、広告効果の上昇を確認できたとしつつも、広告露出の頻度などの要素がどのように影響したのかについて理解が深まるまでは、その詳細を公開できなかったという。

ポッドキャストを使って定期購読のマーケティングを行うことでコンバージョン率増加に成功しているエコノミストなどのサブスクリプションパブリッシャーとは異なり、タイムズの広告では、そのほかのポッドキャスト上でクロスワードやクッキングなど、独立した別の商品を宣伝している。

「我々は先駆者だ」

日々、バルコム氏と彼のチームは、以前の番組向けのコンテンツやプロセスの論評を行い、改善に取り組んでいる。この番組は、年を重ねるごとに、スタジオで撮影したインタビュー形式のありきたりな番組から、より物語風の音声ドキュメンタリーへと変わってきている。その狙いは、スタジオ外の場面での音声を織り込んで、より生き生きとしたプロダクションを行うことだと、バルコム氏は語る。

「我々は先駆者だったし、これからもそうあり続けたい」とバルコム氏。「まだ一度も聞いたことのないようなものを作りたい」。

Lucinda Southern(原文 / 訳:Conyac
Image: Damon Winter, The New York Times.