ベン・スミス氏は、メディア業界について優れた見識を有する人物として知られている。BuzzFeedで8年間編集長を務めた同氏が、ニューヨーク・タイムズ(The New York Times)にコラムニストとして加わったのは2020年1月のことだ。
ベン・スミス氏は、メディア業界について優れた見識を有する人物として知られている。BuzzFeedで8年間編集長を務めた同氏が、ニューヨーク・タイムズ(The New York Times)にコラムニストとして加わったのは2020年1月のことだ。スミス氏の在任中に、BuzzFeedは自らの存在感を維持しつつ、カジュアルなトピックだけでなく、鋭いニュース報道も行うメディアへと変貌を遂げた。同氏は、BuzzFeedの前はポリティコ(Politico)の記者兼ブロガーとして政治報道に貢献。それまでの経験から、SNSを悪用して虚偽の情報を流布するオルタナ右翼メディアの台頭を早い段階から予測していたという。スミス氏は、米DIGIDAYのポッドキャストで次のように述べている。
「BuzzFeedにいた頃から、私は職務上SNSに接する機会が多いこともあり、オルタナ右翼の台頭をかなりはやい段階から察知して追跡していた。2014年、2015年ごろにはすでに記事を何本も書いていた」。
最近、スミス氏はインターネット黎明期を思い返すことが増えているという。大手メディアの検閲がないインターネットの使い方を学ぶことは、我々にとって「パンドラの箱でもあった」と同氏は指摘する。「もちろん、以前からインターネットが抱えるリスクは認識されていた。しかし我々は現在、それを踏まえたバランスの取り方を誤ってしまっている」。
Advertisement
この記事では、スミス氏へのインタビューの音源と、ハイライトをお届けする。なお、内容を明確にするため若干の編集を加えている。
Subscribe: Apple Podcasts | Stitcher | Google Play | Spotify
真実と話題性のバランス
「昨今、ことニュース報道においては、不正確な記事のほうが話題になることが少なくない。それもあり、記者のあいだでも話題になりそうなツイートに飛びつき、まるで真実であるかのように報じたいという誘惑が生じる。しかしBuzzFeedでは、そのような報道は行ってこなかった。誘惑に打ち勝ったことについては、誇りを持って良いと思う。だが残念なことに、ほかのメディアに関してはその種の報道をしていたし、プラットフォーマーも制止しようとしなかった」。
フェイクニュースの拡散を阻止しようとするプラットフォーマーも
「この10年間、SNS企業はコンテンツ管理の側面で過ちを犯してきた。これは今後、歴史上の悲劇的な事実として振り返られるだろう。そんななか、比較的適切に対処できていたのはRedditではないか。Snapchatも、ほかのプラットフォーマーよりは適切な対応をしていた。ようやくいまになって、多くのプラットフォーマーが投稿の管理に乗り出しているが、この5年でコンテンツを取り巻く状況は大きく変わってしまった。SNSには巨大なコミュニティがいくつも生まれ、このグループが、たとえばテレグラム(Telegram)などを介してさらに拡大していったのだ」。
プラットフォームの新時代
「『純粋なSNS』の時代は終わった。いまや、得体の知れない暗号化された新たなプラットフォームが生まれている。特定の者しか利用できず、我々ジャーナリストを含め、権限のない者は誰も中身を把握できない。その一方で、FacebookでQアノンに関するコンテンツを『楽しんでいる』ようなユーザーは、自分の孫の投稿から天気予報、スポーツ速報まですべてFacebookを経由して取得しており、テレグラムに移行する者はほとんどいない。テレグラムは、過激派のなかでも強硬派が多数利用しているプラットフォームで、Facebookとは様相がかなり異なる。だから両者のあいだには、相容れない異なる世界観が広がっている。また、こうした事態は、米国以外の国や地域でも見られている」。
[原文:The New York Times’ Ben Smith saw the alt-right’s rise and sees a new era for social platforms]
TIM PETERSON(翻訳:SI Japan、編集:村上莞)