「フィナンシャル・タイムズ(FT)」は、2016年をダイエットでスタートした。さまざまなアドテクや広告分析ツールが原因で、年々表示速度が遅くなっていたWebページのダイエットだ。FTの製品責任者であるビード・マッカーシー氏は、この取り組みを「足し算の文化」から「引き算の文化」への移行だと述べている。
アドブロックの利用が進んでいることは、多くのパブリッシャーにとってユーザー体験の見直しを迫る警鐘となっている。FTでは、ページの速度が見直しの対象となった。目標は、ひとつのページが完全に読み込まれるまでの速度を、以前の古いサイトの14秒から1秒以内に短縮することだ。
「我々が望んでいるのは、ステークホルダーから売上がXに増えるのでスクリプトを追加してほしいといわれたときに、読み込み時間が0.5秒長くなることでエンゲージメントとサブスクリプションがYに落ちると分かるように、速度とエンゲージメントの関係を理解することだ」とマッカーシー氏はいう。「以前は、このようなトレードオフを行うためのフレームワークが何もなかった」。
「フィナンシャル・タイムズ(FT)」は、2016年をダイエットでスタートした。さまざまなアドテクや広告分析ツールが原因で、年々表示速度が遅くなっていたWebページのダイエットだ。FTの製品責任者であるビード・マッカーシー氏は、この取り組みを「足し算の文化」から「引き算の文化」への移行だと述べている。
アドブロックの利用が進んでいることは、多くのパブリッシャーにとってユーザー体験の見直しを迫る警鐘となっている。FTでは、ページの速度が見直しの対象となった。目標は、ひとつのページが完全に読み込まれるまでの速度を、以前の古いサイトの14秒から1秒以内に短縮することだ。
「我々が望んでいるのは、ステークホルダーから売上がXに増えるのでスクリプトを追加してほしいといわれたときに、読み込み時間が0.5秒長くなることでエンゲージメントとサブスクリプションがYに落ちると分かるように、速度とエンゲージメントの関係を理解することだ」とマッカーシー氏はいう。「以前は、このようなトレードオフを行うためのフレームワークが何もなかった」。
Advertisement
読み込み時間のA/Bテスト
FTがページ読み込み時間に注目している理由は、「Next FT」と呼ばれる新しいバージョンのサイトを構築し、ページ読み込み時間がユーザーエンゲージメントに与える影響を確認するA/Bテストを実施しているからだ。マッカーシー氏によると、一部のページは意図的に読み込み速度を落としているという。
現在、測定している読み込み速度は主に2種類ある。コンテンツがユーザーに表示されるまでの「初期読み込み時間」と、すべての非同期スクリプトが読み込まれるまでの「総読み込み時間」だ。後者の方がはるかに長くなるが、ユーザーはたいていそのことに気づかないとマッカーシー氏は説明する。
いまのFTでは、コンテンツが読み込まれるまでの時間は平均1.5~2秒、残りの要素がバックグラウンドで読み込まれるまでの時間はおよそ4.0~4.5秒だ。ただし、これらの時間には、FTが意図的にサイトの速度を落としているユーザーも計算に含まれている。Webサイトのモニタリングサービス「ピングダム(Pingdom)」のテストによれば、「FT.com」のトップページの読み込み時間は現在4秒を超えているという。
収益源が複数あるFTの事情
FTはまた、ページで使用されるフォント、コード、アドテクについても詳しく調査し、特にモバイルにおいて、ページ読み込み速度が遅くなっている原因を調べている最中だ。通常、モバイルではすべてのパブリッシャーで直帰率が高くなる傾向にある。
広告の売上に大きく依存しているほとんどのパブリッシャーと比べて、有利な立場にあるFT。同紙が抱えるデジタル版読者の数は55万人で、彼らは1週間に7.55ポンド(約1145円)のプレミアム購読サービスか5.35ポンド(約870円)の標準購読サービスに加入しているのだ。
したがって、広告は収益源の一部だが、それがすべてではない。収益源が複数あるため、最新のテクノロジーで新しい製品を作るより、既存の製品を改善する方が簡単なのだ。
速度というレンズを通して見る
「『モバイルファースト』という言葉は、陳腐化してはいるものの、パブリッシャーに難しい決断を迫っている。いまは、我々のサイトを速度というレンズを通して見ることがすべてなのだ」と、マッカーシー氏は語る。
Webページで使われているツールや、サービスを解析してくれるブラウザ拡張機能のゴーストリー(Ghostery)で調べてみると、FTのサイトは、速度の低下を招くトラッキングツールを同業他社ほど詰め込んでいない。現在、FTのホームページは13のトラッカーを利用しているのに対し、「ウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)」は24となっている。しかし、改善の余地はまだある。
Googleの「ページスピード・インサイト(PageSpeed Insights)」ツールで見ると、FTのトップページはモバイルパフォーマンスのスコアが100点満点中40点。デスクトップではそれよりもやや高い59点だ。
「AMP」と「インスタント記事」
「Next FT」の設計、コンテンツ、そして広告は、顧客の行動をより重視するという同社の目的を反映するものになるとマッカーシー氏はいう。モバイル体験の設計にあたり、マッカーシー氏が印刷媒体における「フロントページメンタリティ」と呼ぶ戦略を採用し、コンテンツと機能を必要最低限にまで削ぎ落とすようにしている。Webページの広告、マーケティング用スクリプト、分析ツールが削減される予定だ。
「数えきれないほど多くのテクノロジー企業が、分析パッケージやカスタマイズソフトウェアなどさまざまなものを売り込んでいるが、そのどれもが速度を低下させる可能性をもっている」と、マッカーシー氏。
当然ながら、GoogleとFacebookはどちらも、パブリッシャーがモバイルページの読み込み速度を速くできる手段を提供している。Googleは「AMP(Accelerated Mobile Pages)」、Facebookは「インスタント記事(Instant Articles)」だ。マッカーシー氏によれば、AMPを使った実験も行うことで、どの設計方法が新しい機能ともっともうまく連携できるのかを調査しているという。
Jessica Davies(原文 / 訳:ガリレオ)
Image by Financial Times(CreativeCommon)