フィナンシャル・タイムズは7月20日、購読契約をしていないアドブロックユーザーに対して、記事内の複数単語を空白で表示しはじめた。いくつかの単語をまとめて空白にするのではなく、ランダムに虫食い状態になっている。つまるところ、アドブロックすることで何かが失われる、というメッセージを読者に送っているのだ。
同社によると、4週間にわたるテストでは全トラフィックのうちの0.75%にあたる非契約読者を選んで、そのような体験を提供している。
サブスクリプションモデルのため、差し迫った問題ではないからか、その手法はユーモアを感じさせる。
フィナンシャル・タイムズは7月20日、購読契約をしていないアドブロックユーザーに対して、記事内の複数単語を空白で表示しはじめた。いくつかの単語をまとめて空白にするのではなく、ランダムに虫食い状態になっている。つまるところ、アドブロックすることで何かが失われる、というメッセージを読者に送っているのだ。
同社によると、4週間にわたるテストでは全トラフィックのうちの0.75%にあたる非契約読者を選んで、そのような体験を提供している。
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ユーモアをもって警告
フィナンシャル・タイムズのグローバルセールス担当ディレクターのドミニク・グッド氏は、アドブロックによる具体的な売上損失額を明らかにはしなかった。しかし、今回の虫食いコンテンツのアプローチは、広告がメディアを成り立たせるために、いかに重要なものかということを示しつつ、購読契約ビジネスにも繋げようというメタファーであると説明している。
「我々がこのようなアプローチを選んだのは、メッセージを届ける上でユーモアをもちたいと思ったからだ。そこに嘘偽りはない。なにも『アドブロッカーを使っている場合は、コンテンツを届けることは不可能です』と、さも技術的な問題であるかのように拒絶しているわけではない。非契約読者もメディアの運営に関わっていることを知ってもらう必要があるのだ」と、グッド氏。
購読契約からの収益依存度が高いフィナンシャル・タイムズのようなパブリッシャーにとって、アドブロックは厄介ではあるが広告に依存するパブリッシャーのように存続にかかわる脅威というわけではない。一方で、「ウォールストリートジャーナル」などはアドブロックのソフトを利用するユーザーに対して、利用中止を促すメッセージを出している。
「これははじめの一歩」
今回のフィナンシャル・タイムズのアプローチは、アドブロッカーのユーザーのなかには、まったく何のメッセージも表示されない読者もいれば、フィナンシャル・タイムズをホワイトリスト化するよう求められる読者、コンテンツは読むことができるという読者もいる。また、ホワイトリスト化しないと記事内の大部分の単語が空欄になってしまう読者もいれば、サイトをホワイトリスト登録しない限り、完全にブロックされてしまう読者もいるという。
フィナンシャル・タイムズのこのチームは大きく2つの点についてモニタリングをおこなう。ホワイトリスト登録する人数とコンテンツのエンゲージメントのレートを知ることだ。
現在のところ、この試験はデスクトップ限定となっている。同社によると、トラフィックの約20%がアドブロッカーの影響を受けており、そのうちモバイルの割合は5%ほどだという。
「我々はモバイルを無視しているわけではなく、アドブロック使用に関していえば増加している。しかし、これははじめの一歩で、そのデータを分析してからどのように展開していくか考える」と、フィナンシャル・タイムズのシニアアドプロダクトマネジャーのクレイグ・バニスター氏は語った。
アドブロック行為の意味
イギリスのインサイシブ・メディア(Incisive Media)といったパブリッシャーのなかには、制限を課す前にアドブロックがどの程度売り上げやトラフィックレベルを下げるかの限界値を設定しているものもある。
グッド氏はテストを行うタイミングの明確なきっかけとなるものはないとしながらも、すべてのパブリッシャーが「対策を講じなければならない」と付け加えている。上質なオンラインコンテンツを無料で広告無しに読むという行為の意味について、人々に知ってもらうためだ。
フィナンシャル・タイムズは同時に、「アドバタイジング・チャーター(Advertising Charter:広告憲章)」をリリースし、信用や透明性などの問題について、また広告体験によってユーザー体験が損なわれることは決してないことを説明した。