米イリノイ州シカゴに拠点を構える新聞社トリビューンパブリッシング(Tribune Publishing)が、傘下である「ロサンゼルス・タイムズ(Los Angeles TImes)」や「シカゴ・トリビューン(The Chicago Tribune)」などの大手日刊紙で、編集と経営の役割をひとつにまとめると発表した。これは出版業界の伝統を覆すほどの事件だ。
現在、出版業界には厳しい時代が続いている。そこから脱するため、商品部門とオーディエンス開発部門などといった、さまざまな部署間での共同開発が行われるようになってきた。
「トリビューンパブリッシング」も例外ではない。ほかの新聞社と同様に企業体制を刷新させている最中で、経営と編集の役割をひとつにし、コスト削減を狙っている。ニュース編集室の室長は、読者からの信頼を得ており、地元のコミュニティーを一番理解している唯一の立場にある人材だ。そのため、パブリッシャーとしてビジネスを実際に展開していくパフォーマンスも期待されているという。
米イリノイ州シカゴに拠点を構える新聞社トリビューンパブリッシング(Tribune Publishing)が、傘下である「ロサンゼルス・タイムズ(Los Angeles TImes)」や「シカゴ・トリビューン(The Chicago Tribune)」などの大手日刊紙で、編集と経営の役割をひとつにまとめると発表した。これは出版業界の伝統を覆すほどの事件だ。
現在、パブリッシャーには厳しい時代が続いている。そうした状況から脱するため、商品部門とオーディエンス開発部門などといった、さまざまな部署間での共同開発が行われるようになってきた。
「トリビューンパブリッシング」も例外ではない。ほかの新聞社と同様に企業体制を刷新させている最中で、経営と編集の役割をひとつにし、コスト削減を狙っている。ニュース編集室の室長は、読者からの信頼を得ており、地元のコミュニティーを一番理解している唯一の立場にある人材だ。そのため、パブリッシャーとしてビジネスを実際に展開していくパフォーマンスも期待されているという。
Advertisement
しかし、経営と編集の役割をこのまま分け隔てておくべきだと反対を主張する者も多い。
新興メディアに多い兼業体制
非営利報道組織、プロパブリカ(ProPublica)では、編集と経営は分け隔てている。
「パブリッシャーとしての事業は、かつてないほど難しくなってきている。また、わからないこともかつてないほど多くなっている」と、同社社長でありビジネス面のみを担当するリチャード・トフェル氏は話す。「しかし、編集はさらに複雑だ。好機は最大限に生かし、リスクはできる限り減らせる人材を探すことがとても難しい」。
米ニュースサイト「スレート(Slate)」会長兼編集長のジェイコブ・ワイズバーグ氏も、役割の統合に反対意見を掲げるひとりだ。「経営と編集というのは、単に違う職種というわけではない。いろいろな面で対立することが多い職種だ」と、ワイズバーグ氏は指摘する。「経営を任せられている人物の考え方は、編集者の考え方とは違う。ビジネスで友達を作るようなものだ。一方では読者のために働き、そのまた一方では広告主のために働くことになる」。
しかし、経営と編集の役割の統合というものは、海外では珍しくない。イギリスのニュースメディア「デイリー・メイル(DailyMail.com)」では、CEOでありパブリッシャーのマーチン・クラーク氏がニュースルームの編集長としての役割も受け持っている。これまでにも、設立者が編集と経営を担う方法で多くの企業が起業してきた。米リベラル系ニュースメディア「ハフィントン・ポスト(The Huffington Post)」や政治ニュースを扱う「ポリティコ(Politico)」などが最近の例として挙げられるだろう。
企業が成熟すれば従来スタイルに
とはいえ、企業が成熟すれば、最先端デジタルメディア企業でさえも従来の編集スタイルを好むようになる。米Webメディア企業、Vox Mediaの編集長たちは、経営判断には関わっていないのだ。「オーディエンスからの信頼がなければ、ビジネスとして成り立たない」と、Vox Mediaの編集長、ロックハート・スチール氏はコメントしている。
NBC News、NPRやTwitterなどの企業で編集や経営など、多岐に渡る職種を担当し、現在はメディア企業のコンサルティングを行っている、ヴィヴィアン・シラー氏も、このような役割の統合には反対すべきだと主張する。
「現在ではオーディエンス開発、ブランデッドコンテンツ、エンゲージメントや商品などの多くの部門が誕生したため、ニュース編集室と経営の間にあった明確な線引きがなくなってきているのは明らかだ」と、シラー氏はいう。「しかし、これらの職種を統合する上での問題は、担当者に責務を果たす能力があるかどうかということだ。『トリビューンパブリッシング』の編集長は、経営の仕方を知っているのだろうか?」と疑問を呈する。
それぞれに特化したリーダーの意味
慣例には従わないことで知られている老舗週刊誌「アトランティック(The Atlantic)」でさえも、編集と経営の役割は分けている。同誌では、2014年に2人のジャーナリスト、ジェームス・ボネット氏とボブ・コーン氏を共同社長に昇格。それ以降、ベネット氏が編集を受け持ち、コーン氏が経営を行っているのだ。
コーン氏によると、自身のジャーナリストとしての経験は、「アトランティック」の商品を市場に売り出す際に非常に有効的に使えているという。編集者たちが経営のことを勉強し、経営者たちが編集のことを勉強したとしても、それらの役割は別々のままの方が良いかもしれないと、コーン氏は述べた。
「『アトランティック』の成功の秘訣は、編集と経営の両方に、それぞれに特化したリーダーがいたことだ」とコーン氏。「これはとても複雑な問題で、このことを昼夜問わずに考えられる人材が必要だ」と言及した。
Lucia Moses(原文 / 訳:BIG ROMAN)
Image via Thinkstock / Getty Images