仏・メディア10社、eメール・ログインシステムを共同開発

メディア企業はオーディエンスとの関係を深めようと尽力している。そんななか、他社と協力して統一のログインシステムを構築しているところが出てきた。複数のメディアサイトにひとつのeメールアドレスでアクセスできるようにするためだ。

フランスでの取り組みは、その一例だ。ニュース、ラジオ、放送局を含む10のメディア企業が競合関係を越えて、ひとつのテックシステムを構築している。フィガロ(Le Figaro)、アルティス(Altice)、チーム(Team)、M6-RTL、ラガルデール・アクティブ(Lagardère Active)、チェコ・メディア・インベスト・フランス(Czech Media Invest France)、20ミニッツ(20 Minutes)、レゼコー・パリジャン(Les Echos-Le Parisien)、ポワン(Le Point)、ラジオ・フランス(Radio France)が名を連ねており、彼らを合計するとフランスにおけるインターネットユーザーの80%にリーチできることになる。彼らの連盟にはまだ名前はつけられていない。

参加メディアはそれぞれリソースを共同で提供している。そして集められた500万ユーロ(約6億3000万円)の資金は、今後3年かけて、すべてのパブリッシャーやメディアが活用できる独立した、共通のテクノロジー・インフラストラクチャーの構築に使われる。消費者はeメールアドレスをそこにアップロードすることで、参加メディアが抱えるサイトであればどれでも、同じログイン情報でログイン状態を維持することができようになる。

「パブリッシャーとして、我々は読者との接点が必要だ。現時点ではクッキーを通じた小さいリンクでしかない。クッキーは非常に不完全で、危機に面している」と、フィガロのニュース部門副ディレクターであるバートランド・ギエ氏は言った。

プラットフォームへの対抗

1社のパブリッシャーでシングルログイン(ひとつのeメールアドレスで複数のサイトにログインできる)戦略を取ったとしても、Google、Amazon、Facebookという巨大プラットフォームが抱えるログインシステムのスケールに対抗することができない、という考えが背景にある。Googleによるニュース・イニシアティブ(News Initiative)からパブリッシャーたちが資金を獲得しようとしていることからも、こういった巨大プラットフォームへの対抗が難しいことは分かる。そして、パブリッシャーたちは、ユーザー承認システムとして、こういったテックプラットフォームを利用するのを嫌っている。さらに、eプライバシー法案が通過する見通しのなかで、消費者からデータ利用に関して明確に同意を得ることが非常に重要になっている。

9月までには、フランスの100ほどのメディアサイトに、eメールアドレスを使ってシングルログインできるようになる予定だ。6月までは3つまでのメディアを利用対象としてテストを行う。コンテンツにアクセスするためにログインが必要なわけではないが、これも変わるかもしれない。M6のような放送局を例にとってみれば、リアルタイムでの放送を見逃した視聴者が、あとからコンテンツを観る際、ログインを要求するのは普通だ。

eプライバシー指令は、いまも欧州議会議員たちによって議論が進められている最中だ。最終決定はまだなされていないが、あらゆるクッキーの利用に関して消費者の同意が必要と規定されるだろう。このことがドイツやポルトガルのメディア会社たちによる統合ログインシステムの取り組みを促した。

メディア連携における困難

フランスは他の欧州諸国よりもメディア間の連帯に成功してきている。プラグラマティックを対象にした連盟であるプラス(La Place)は早い段階で結成された連盟関係の一例だ。それでも、競合他社と協力関係を結ぶことが簡単になったわけではない。それが、たとえ共通の敵を前にしていても、だ。

ギエ氏によると、連盟が集めるのはeメールアドレスのみだ。これ以上の個人情報を集めてシェアすることは連盟メンバーや競合他社の間での議論を困難にしていただろう。ログインしたあとのそれ以上の個人情報に関しては、各メディアオーナーが読者といかに関係性を構築し、プロフィールを作り、カスタマイズされた広告やサービスを提供するための必要な情報を手に入れるかにかかっている。

サイトにおいて告知を設置するなど、アドレス登録を促す取り組みを各メディアオーナーたちが行っていく。ログインシステムがあることで、記事を読んでいる最中でもデバイスを切り替えることが可能になるとのことだ。フィガロのレポートによると、フランスにおいてメディアサイトに登録しているのは、15%の人々に過ぎないとのことだ。

成功へと導くために

コンサルティング企業ADZストラテジーズ(ADZ Strategies)のファウンダーであるアレッサンドロ・デ・ザンチェ氏は、この連盟に参加するメンバーのあいだで、ポジティブなアプローチで長期的な視点を持って取り組むことが最低限共有されていなければいけない、と指摘する。悪しきプログラマティック慣習を通してオーディエンスたちが不満を溜めてしまう、という以前パブリッシャーたちが陥った落とし穴にはまらないためには、良い慣習や知識がメンバー内でシェアされないといけない。

「メディアブランドやパブリッシャーによるこの提案に、ユーザーたちは自らの意志で積極的に、ポジティブに応える。価値の搾取ではなく、価値の交換に基づいていなくてはいけない。信頼を保つことが重要だ」と、彼は言う。

Lucinda Southern(原文 / 訳:塚本 紺)