テレグラフ(The Telegraph)はこの3カ月、ブランデッドコンテンツのクリエイティブの改善や新しいビジネスの獲得のために、バイオメトリクス(生物統計学)を使ったテストを実施している。バイオメトリクスツールを少なくともひとつ使ったキャンペーンを8件行っており、そのうち6件は新規のクライアントだ。
テレグラフ(The Telegraph)はこの3カ月、ブランデッドコンテンツのクリエイティブの改善や新しいビジネスの獲得のために、バイオメトリクス(生物統計学)を使ったテストを実施している。バイオメトリクスツールを少なくともひとつ使ったキャンペーンを8件行っており、そのうち6件は新規のクライアントだ。
具体的には、キャンペーン後の分析やクリエイティブの具体化の際に、ニューロテスト、電流皮膚反応(GSR)、フェイスコーディング(表情解析)、アイトラッキング、暗黙的なテストなどを実施している。現在はニューロインサイト(Neuro-Insight)などのサードパーティ企業を使っているが、内製化を目指している。
3カ月で目標達成
コマーシャルインサイトの責任者であるサイモン・ピープル氏は昨年11月、バイオメトリクスへの投資は1年で100万ポンド(約1.5億円)単位の増分収益をもたらすだろうと説明していた。この目標は3カ月で達成された。テレグラフはバイオメトリクスのツールを15万ポンド(約2200万円)を超えるキャンペーンにしか提供せず、クライアントが条件を満たすため予算を増やすように仕向けている。
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「キャンペーンのクリエイティブについてもコンテンツターゲティングについても、テレグラフのオーディエンスが刺激にどう反応しているのかが正確にわかる」と、ピープル氏は語る。「我々のオーディエンスはほかのオーディエンスと動きが異なる。我々のキャンペーンを最適化して目覚ましい結果を得たければ、オーディエンスに関する、我々にしかできない追加のレイヤーが必要になる」。
テレグラフは現在5万人のパネルを構築中であり、数カ月以内に、これを使ってブランドから連想する価値などを質問する予定だ。2019年のはじめには、自動車の購入やはじめての子供の誕生など、人生が大きく変わった人々についてサイコグラフィックスによるオーディエンスセグメントのクラスターを作る計画だ。これを自社のデータ管理プラットフォーム(DMP)を通じてオーディエンス全体に組み入れたり、広告主に販売したりして、デモグラフィクスからニードステートへ、行動からマインドセットへと移行する。記事を活用することでオーディエンスを気分に基づいてターゲティングするのではなく、個々のレベルでオーディエンスの気分を把握したいとテレグラフは考えている。
見かけ倒しのおそれ
テレグラフはプジョー(Peugeot)とのキャンペーンで、50人にニューロテストを実施した。脳波を読んで、長期記憶のエンコーディングが生じる時点を把握し、そのタイミングで、ブランドに短く触れる形のプロダクトプレイスメントを動画に追加。キャンペーン後に、ブランドを加味したバージョンがそうでない動画に比べてどうだったのかテストをすることになっている。ほかに、まもなくはじまる予定の、あるエンターテインメントブランドのキャンペーンでは、オーディエンスがドキリとするクリエイティブをGSRを使って割り出している。
新しいテクノロジーなので問題ははらんでいるし、反応を読むためのアプローチがシャープではないという危険はある。標準もベンチマークもなく、ほとんどのパブリッシャーはバイオメトリクスの真価がはっきりするまで、資金を投じないだろう。
オムニコムのコンテンツエージェンシーであるドラム(Drum)でクリエイティブイノベーションのディレクターを務めるベン・ベイル氏は、研究を分析に結びつけられるかが鍵であり、それにはしっかりした大規模なパネルが必要だと語った。ファーストパーティのデータに結びつかないなら、ニューロテストは見かけ倒しのおそれがある。
クライアントは関心あり
質の高いニューロテストはハードルが高く、パブリッシャーは大規模なオーディエンスと投資が必要だ。また、まだ新しい分野であるため、心理学の素養があるデータサイエンティストなど、これまでとは違うスキルや職が必要になる。
「ニューロテストは大きな投資だ。内製化するためには、クライアント5社から10社に大きな予算を投じてもらう必要がある」と、ピープル氏は付け加える。
テレグラフでは現在、キャンペーンの約10%がバイオメトリクスの手法を採用しており、ほかに15%ほどがアイトラッキングやフェイスコーディングを使っているが、オーディエンスをそこまで深く理解する必要があるクライアントばかりではないだろう。
バイオメトリクスのテストをこの1年、実施しているトータルメディア(Total Media)で、メディアの今後を担当しているジェイムズ・バフィー氏は、「人気は高まっている」と語る。クライアントからバイオメトリクスのツールを使うように頼んでくるわけではないが、話を聞くとクライアントはすぐに関心をもつ。「考えていると話していることと対比させると、実際に考えていることを示す価値を伝えるのは難しくない」と同氏は語った。
Lucinda Southern (原文 / 訳:ガリレオ)