英テレグラフ・メディア・グループ(Telegraph Media Group)が運営するニュースサイト「ザ・テレグラフ」(The Telegraph)は、スポーツデータを可視化するツールを改良した。
このツールにより、サッカーの試合で得点が入るたび、インタラクティブなグラフィックスの生成とサイト上への掲載までが、自動的に行われるようになった。
英テレグラフ・メディア・グループ(Telegraph Media Group)が運営するニュースサイト「ザ・テレグラフ」(The Telegraph)は、スポーツデータを可視化するツールを改良した。このツールにより、サッカーの試合で得点が入るたび、インタラクティブなグラフィックスの生成とサイト上への掲載までが、自動的に行われるようになった。
「我々には、解決すべく取り組んでいた課題が2つあった。スポーツを可視化するコンテンツをリアルタイムで生成する方法と、自動化して時間を節約する方法だ」と、テレグラフ・メディア・グループのデジタルメディア部門を統括するマルコム・コールズ氏は説明する。「そのため、記者の手を借りることなく、データを分析するルールエンジンを開発する必要があった。記者が得点シーンを見逃したときでさえ、機能するようにだ」。
グラフィックスを自動的に生成
テレグラフの可視化ツールは、2015年にイングランドで開催されたラグビーワールドカップに合わせて、試合のインタラクティブなグラフィックスを生成するために作られた。同サイトは今年、ツールの開発をさらに進めるため、Googleの次世代デジタルジャーナリズム支援計画「デジタル・ニュース・インタラクティブ(Digital News Initiative)」から30万ユーロ(約3480万円)の資金を獲得。これを元手にツールを改良し、ゴールに至るまでの選手とボールの動きを図解するグラフィックスを生成するようにした。そして、イングランドの「プレミアリーグ」が開幕した8月中旬以降、ゴールが決まるたび、そうしたグラフィックスを自動的に生成し掲載できるようになっている。
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サッカー記者はそれまで、試合終了まで待って、グラフィックス担当デスクが作成する図を入手する必要があった。しかし現在では、ゴールが決まった1分後に、テレグラフのサイトのライブフィードにインタラクティブなグラフィックスが掲載される。8月20日と21日の週末には、10試合で計22ゴールの図が自動的に公開された。これらの図は、Twitterアカウント「テレグラフ・フットボール」と、Facebookの「Messenger(メッセンジャー)」に自動投稿される。Twitterの場合、通常のリツイート数は80回程度だが、ゴール図のツイートは790回もリツイートされた。
ゴールを図解する、自動投稿されたグラフィックス。ウェスト・ブロムウィッチ・アルビオンFCのホームゲームで、エバートンFCのケビン・ミララス選手が、ハーフタイム直前に同点ゴールを決めた。
キャプション執筆にも対応
図のもとになるデータは、スポーツデータ・プロバイダーのオプタ(Opta)から提供されている。オプタは、ピッチ上のどこで誰がボールに触っているかを測定している。今後の2カ月の計画では、さらに6つのルールを可視化ツールに追加。得点シーンのほかにも、要所のプレイを示すグラフィックスを自動的に作成し、掲載できるようにする予定だ。この2カ月間、フルタイムの開発者2人とGoogleから派遣された契約社員数名が、テレグラフのチームとして協力。彼らが構築するテキストテンプレートにより、プレイを説明するキャプションが自動的に生成され、グラフィックスに添えられるようになる。
テレグラフが検討している可視化ルールの一例を挙げよう。あるチームが、特定の時間帯でボールを70%以上支配し、5回シュートを打ったのに、得点できない。そんな場合に、シュートがゴールの枠から外れていたのか、キーパーが好セーブしたのかを示すグラフィックスを生成する。これに合わせて、「Aチームはボール支配率で上回るが、その優位を十分に活用できていない」というキャプションが自動生成される。
ハル・シティAFCのホームゲームで、マンチェスター・ユナイテッドFCのシュートを示す図。これは手作業で作成されアップロードされたものだが、近く自動化される予定だ。
ただしコールズ氏は、グラフィックスが多すぎるとわずらわしくなる、と感じている。そのため現状では、掲載する図の数を、1試合あたり最高10枚までにする考えだ。目標は、週末に行われる1日あたり約10試合をすべてカバーすること。注目度の低い試合から、自動化が適用されるだろう。
当面、テレグラフが注力するのは、スポーツを生中継するブログ投稿だ。このブログは、同サイトでとりわけよく読まれており、重要な試合では10万ページビューを獲得している。
報道に進出するロボットたち
報道における自動化のトレンドは、サッカーに限った話ではない。
AP通信は数年前から、財務関連記事を自動生成する実験を進めてきた。最近では「ワシントン・ポスト(The Washington Post)」が、リオ五輪の競技結果をリアルタイムに報じるツールとして、人工知能「ヘリオグラフ(Heliograf)」を開発している。
コールズ氏によると、テレグラフのスポーツ担当デスクは今後、開発者たちと密に連携。自動生成されたテキストが、ロボット的な文章にならない、自然な文章を目指すという。
「注目度の高い重要な試合では、オーディエンスは必ず、ジャーナリストによるリアルな描写を求めるものだ」とコールズ氏は語る。「何が起きているのか、長期的な試合の流れをどう見るか、競技場の雰囲気、監督へのプレッシャーはどうか。そうした要素は、データからは得られないものだ」。
Lucinda Southern(原文 / 訳:ガリレオ)
Images courtesy of the Telegraph.