BuzzFeedが展開するフードブランドのTasty(テイスティ)は、食品や食器、レシピ本などさまざまな消費者向け製品に対するライセンス提供で成功を収めている。同社はこうした成功を背景に、広告主に対して食品とコマース関連の強みを売りにしている。
BuzzFeedが展開するフードブランドのTasty(テイスティ)は、食品や食器、レシピ本などさまざまな消費者向け製品に対するライセンス提供で成功を収めている。同社はこうした成功を背景に、広告主に対して食品とコマース関連の強みを売りにしている。
BuzzFeedは、2019年度におけるBuzzFeedブランド商品の小売店での売上が2億6000万ドル(約286億円)になると見込んでいる。ライセンス業界の業界紙、ライセンス・グローバル(License Global)によるとこれは2018年度の小売売上1億3000万ドル(約143億円)の倍に達する。ライセンス・グローバルのデータによれば、BuzzFeedは世界最大規模のライセンサー企業の仲間入りするのは、ほぼ間違いない。(ちなみにこれはあくまでトップラインの数字であり、商品カテゴリーごとに事情はさまざまだ。ライセンス業界のパブリッシャー、ライセンシング・レター[Licensing Letter]の編集長カリーナ・マソロバ氏によれば、たとえば加工済み食品の場合、マージンは1〜2%程度しかない。かたや、ほかの商品カテゴリーの場合マージンはもっと高いものになる。BuzzFeedの広報担当によると、同社のライセンス商品のロイヤリティは食品で5%、出版物で25%になるという)。
料理本から惣菜まで
TastyはBuzzFeedのライセンス事業の中核をなすブランドだ。料理本のライセンス提供を2年前にはじめたのを皮切りに、昨年はウォルマート(Walmart)で展開する料理本を増やしていき、食料品店でも商品展開を順調に増やしている。数カ月前にはネスレ(Nestle)の協賛でTastyブランドのさまざまなアイスクリームを発売したほか、マコーミック(McCormick)と提携して調味料ブランドを立ち上げている。2019年度の下半期にもTastyは多数のブランドと提携した商品を発売する。たとえばミスティカ(Mistica)と提携して食品セットを、ウィルトン(Wilton)と提携してケーキのデコレーション商品を、ワインズ・ザット・ロック(Wines That Rock)と提携してワインセットを、クイジナート(Cuisinart)と提携してキッチン用品を、フード・ストーリー(Food Story)と提携して惣菜の販売を開始する予定だ。
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さらに消費財分野の大企業と提携してTastyブランドの商品開発を進めている。同社によると、スープやパスタ、パンやクッキー作りの道具、スムージーなどが開発の初期段階にあり、来年には発売される予定だという。
BuzzFeedによると料理本の売上はいまも好調で、これまで80万冊以上が売れたとのことだ。ウォルマートの独占販売となっている食器類は、発売以降で400万の商品が売れている。Tastyは今後もこうしたカテゴリーでの取り組みを続けていく。BuzzFeedのライセンス部門のグローバル責任者を務めるエリック・カープ氏は、なかでも料理本と調理器具類を重視していきたいと意気込む。Tastyは今秋に4冊目の料理本、そして90種類の食器を発売する。ウォルマートが販売するTastyの食器類はこれで合計120商品になる。ウォルマートも、各店舗でBuzzFeedの販売コーナーを広げている。昨年、Tastyは調理器具販売プロジェクトをアメリカ国外にまで拡大した。BuzzFeedによると、調理器具メーカーのファケルマン(Fackelmann)と提携してヨーロッパで販売を開始したほか、中東やアフリカ、南米にも展開しているという。
「変化をもたらす商品」
Tastyがこうした強力な成長戦略をとっているのは、広告主の売上増に貢献できることを示すという動機もある。BuzzFeedは消費財分野の企業との提携とそれにともなう実店舗での宣伝が売上増につながるとしており、BuzzFeedはこうした売上データを同分野の広告主に提示している。同社の広報担当によると、たとえばTastyによる消費者向けの販促のおかげで、ある飲料メーカーの広告主を獲得でき、それによって100万人規模のミレニアル世代のカスタマーを獲得できたという。
「広告プラットフォームの大半は、100メートル走における最後の20メートルの取り組みを行っていない」と、カープ氏は指摘する。「キャンペーンは知名度を向上させるし、商品について訴えかけることもできる。だが、せっかくカスタマーが来店しても、店舗内ではキャンペーンのメッセージがない。いつも通りの展示が行われているだけだ。もし売り場でキャンペーンの要素を取り入れ、アピールすることができれば、最初のキャンペーンについてカスタマーに思い出させることができる。信頼を獲得できるやり方で行えば、コンバージョンにつなげることができるのだ」。
カープ氏はこうした取り組みは金がかかるが、それでも店舗外における取り組みよりは安価で、そしてなにより結果に確実につながる投資をすべきだと主張する。
「ありふれたブランドではないことをしっかりと示していきたい」と、カープ氏は語る。「(広告主は)各キャンペーンの締めをしっかりと行って、『変化をもたらす商品』であるとしっかりと主張すべきだ」。
急成長を望める機会
これまでブランドのライセンス提供についてパブリッシャーは二の足を踏んできた。大手広告主を怒らせないかという不安があったためだ。カープ氏はこれについて、各分野の複数企業と同時に直接提携することで、こうした事態は避けられるとしている。
TastyはBuzzFeed全体とともに収益の多様化と増加を目指しており、ブランドのライセンス提供は理にかなった選択だ。BuzzFeedはベンチャーキャピタルから4億9600万ドル(約545億6000万円)超の資金調達を行った。
加工済み食品分野への参入は、マージンこそ小さいものの、まさに迅速な成長が望めるチャンスなのだ。
マソロバ氏は同分野について「急速に成長している」と指摘する。「技術が飛躍的に進歩したためだ。これまでよりも多様で、長持ちする商品を提供できる。冷凍食品の味も大きく改善された」。
若者へのイメージを向上
逆に、BuzzFeedは若者へのイメージを向上させたいと必死に取り組んでいる古いブランドに対してチャンスを提示しているともいえる。
カンター・コンサルティング(Kantar Consulting)の小売分析部門のバイスプレジデント、トーリー・ガンドラック氏は、これまでは一部の小売店が加工済み食品や消費財分野の商品の大部分を販売してきたことについて言及し、「現代の若者の食生活は変化し、店舗への比重は減りつつある」と指摘する。「こうしたブランドは再投資について積極的に検討している。デジタルネイティブなコンテンツブランドであるTastyとの提携は、いまいちふるわない既存ブランドにとってイメージを変えられる、またとないチャンスだ」。
Max Willens(原文 / 訳:SI Japan)