Tasty ブランドが絶好調! BuzzFeed の複数収益モデル

Facebook動画で成功する方法を探るために、BuzzFeedがフードブランドのTasty(テイスティ)を実験的にはじめたのは2015年7月のことだった。そしていま、TastyはBuzzFeedでもっとも成功を収めたフランチャイズのひとつとなっている。手元を俯瞰撮影したレシピ動画を公開するだけでなく、ライセンス商品やクリエイタープログラムを提供したり、長尺または短尺の動画コンテンツや作品を制作したりしているのだ。

Tastyは現在、Facebookで1億人を超えるフォロワーを獲得している。また、3冊のレシピ本を出版して80万部を売り上げ、11月には4冊目の本を発売している。BuzzFeedは正確な売上を公表していないが、広報担当者によれば、2019年後期の全社的な売上高はプラスだったという。「Tastyは今後も、好調な広告事業とさまざまな消費者向け製品で急成長したライセンス事業で、成長の主な牽引役としての役割を果たし続ける」と、広報担当者は述べている。

BuzzFeedは以前、2018年の売上が3億ドル(約328億円)を超えたと報告していたが、CEOのジョナ・ペレッティ氏は2019年初頭、その売上の3分の1がまったく新しい収益源からもたらされていたことを社内メモで明らかにした。同氏が「9つの箱」と呼ぶ、複数収益モデルに沿った成果が得られているというわけだ。さらにペレッティ氏は、Tastyの収益の大半が「自力で構築しなければならなかった」ビジネスからもたらされたものだと、同じメモのなかで語っている。

「Tastyの功績は、人々が料理コンテンツをどのように受け入れるのかを明らかにしたことにある」と、Tastyのエグゼクティブプロデューサー、ハンナ・ウィリアムズ氏はいう。さらに同氏は、BuzzFeedのクリエイタープログラムの一環として開始した人材育成プログラム「テイスティ・タレント・プログラム(Tasty Talent Program)」に6名の新しいメンバーが加わったことに触れ、これは「Tastyの急速な拡大」を示す出来事だと語った。現在、Tastyには14名のクリエイターがいる。

「我々は手の出演タレントを増やしたり、自社で育てたタレントを出演させたりしている。また、シェフと日常的な料理の世界を融合し、食が持つエンターテインメントの側面を追求している」と、ウィリアムズ氏は話す。「テイスティがオーディエンスのキッチンで果たしている役割については理解しているが、キッチン以外の場所では何ができるだろうか。うまくいっていることや、人々が我々のコンテンツを見に来る理由を見過ごさないようにするには、どうすればいいだろうか」。

「アイデンティティ主導」

Tastyに新しく加わった6名のクリエイターのうち、3名はTastyのプロデューサー、もう3名はダイニングの世界でよく知られる人たちだ。Tastyが彼らを採用した狙いは、多様性とオーディエンスエンゲージメントをもたらし、ウィリアムズ氏のいう「アイデンティティ主導のコンテンツ」を開発することにある。

新しいクリエイターのひとりであるエレン・ベネット氏は、「ヘドリー・アンド・ベネット(Hedley & Bennett)」というクッキングウェアブランドを展開している人物だ。

ウィリアムズ氏はいう。「我々は、とても個性的なアイデンティティを持っているクリエイターや、自分の仕事で大成功を収めているクリエイターといっしょに仕事をしたいと思っている。彼女については、自分で作り上げたブランドで実績を重ね、一定の成功を収めていることが大きな魅力だった」。

ウィリアムズ氏によれば、「チェック・アウト・オブ・ウォーター(Chef Out of Water)」「アイ・ドロー(II Draw)」「ユー・クック(You Cook)」「メイキング・イトゥ・ビッグ(Making It Big)」といった新番組が受け入れられたことから、2020年にはさらに多くのオリジナルシリーズやオリジナル番組を展開する予定だという。

ライセンス事業も重視

一方、ライセンス事業も、BuzzFeedが収益源の多角化に向けた取り組みできわめて重視している分野であり、Tastyはその戦略の中心的役割を担っている。ライセンス業界の業界紙「ライセンス・グローバル(License Global)」によると、2019年にはBuzzFeedブランド商品の小売店での売上高が、前年同期比の2倍となる2億6000万ドル(約284億円)に達する見込みだという。

米国では現在、Tastyブランドのキッチン用品がウォルマート(Walmart)で売られているほか、Tastyブランドの食品が各地の食料品店で販売されている。このなかには、ネスレ(Nestlé)の協賛を受けたアイスクリーム製品やマコーミック(McCormick)との提携によって生まれた調味料もある。ウォルマートのキッチン用品は2018年3月に90種類の商品からスタートし、これまでに500万個以上を売り上げた。

「ライセンス事業は、長いあいだ市場で製品を販売している知名度の高いブランドによって行われるのが普通だが、BuzzFeedはそのプロセスを短縮した。彼らは強固なファンベースがあることを理解しており、自社を差別化したいと考えたのだ」と、ライセンス・グローバルの発行元であるグローバル・ライセンス・グループ(Global Licensing Group)のブランドディレクター、スティーブン・エクストラクト氏は指摘する。

ブランド拡張の成功例

Tastyのライセンス提携は、コンテンツ制作の分野にも広がっている。Tastyでは、ウォルマートが出資しているイコ(Eko)のプラットフォームを利用して双方向動画の制作に取り組んでいるほか、ウォルマートで購入できる製品を宣伝する「きみならどうする?(Choose Your Own Adventure)」スタイルのレシピ動画を手がけている。2020年には、イコを利用した動画の制作をさらに増やす予定だとウィリアムズ氏は述べている。

Tastyがブランドと提携している分野は、メディア、カスタムコンテンツ、ショッパーマーケティング(2018年3月にスコッチブライト[Scotch-Brite]と実施)、クリエイター契約、イベントにも及んでおり、いずれも売上の拡大に貢献している。オスカー・マイヤー(Oscar Mayer)と提携して、ホットドッグをテーマにした結婚式まで行ったこともある。

「彼らは途方もないブランドエクイティとブランドロイヤルティを築いている。私としては、もっと多くのデジタルネイティブブランドがこうした取り組みに目覚めてほしい。彼ら(BuzzFeed)は、デジタルネイティブブランドによるブランド拡張の成功例を示すケーススタディだ」と、エクストラクト氏は述べている。

横展開が今後の課題

BuzzFeedがTastyの成功から学べる点がひとつあるとすれば、この複数収益モデルをDIYブランドのニフティ(Nifty)や健康ブランドのグッドフル(Goodful)などに、どう適用すべきかということだろう。これこそが、ペレッティ氏が2017年に指摘したように、BuzzFeedが利益を上げ続けるためにフォーカスしなければならない取り組みなのだ。

Deanna Ting(原文 / 訳:ガリレオ)