テイストメイド(Tastemade)は先日、英国に制作スタジオを開設した。これにより同国において、少人数のフルタイムスタッフが、常に安定して料理コンテンツを制作できるようになった。同社のスタジオは、ロサンゼルス、サンパウロ、ブエノスアイレス、東京に続き、これが5つ目だ。
テイストメイド(Tastemade)は先日、英国に制作スタジオを開設した。これにより、少人数のフルタイムスタッフが、常に安定して料理コンテンツを制作できるようになった。
料理および旅行関連のコンテンツを制作しているテイストメイドは、9つ前後のプラットフォームでオリジナル動画を配信し、膨大なオーディエンスを獲得して有名になった。同社が英国内で動画制作をはじめてすでに1年近くになる。
また、Snapchat(スナップチャット)の「ディスカバー(Discover)」提携メディアとして、米国、英国、フランスで毎日ローカルコンテンツを配信していることもあり、いまや動画閲覧の60%は米国外のユーザーだ。つまり、新たな国外スタジオを開設するにはいまがちょうどいい時期といえる。同社のスタジオは、ロサンゼルス、サンパウロ、ブエノスアイレス、東京に続き、これが5つ目だ。
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スタジオ開設の理由
「英国内で制作するコンテンツに対する需要は過去1年間、月を追って急速に伸びた」と、プログラマーのオーレン・カツェフ氏は言う。テイストメイドはコンテンツ制作に関して英国内で活躍するフリーランスクリエイターのネットワークと提携し、今後も市場への投資を継続するという。

俯瞰の動画はテイストメイドの数多ある武器のひとつだ
アナリティクス企業チューブラー・ラボ(Tubular Labs)のデータによれば、Facebookのテイストメイド英国版チャンネルは2016年末の時点で月間約5000万ビューを獲得した。月間約8億ビューをたたき出すメインチャンネルと比べれば、英国版の規模はまだ小さいといえる。だが、スタジオ開設の理由は規模だけではない。
「ブランドを軌道に乗せるには、スタジオが不可欠だ。これでクライアントに戦略を示し、高品質なブランドコンテンツを大量に制作できると印象づけられる」と、カツェフ氏は言う。
すでに50ブランドと交渉
テイストメイドの売上の大部分はブランドコンテンツによるもので、そのほかにSnapchatのディスカバーとYouTubeから広告スペースの売上が多少ある。数カ月前まで米国チームが英国版の制作指揮を執っていた。現在では英国に2人の現地スタッフが置かれ、今後半年で5人前後まで増員されることをカツェフ氏は期待している。
「英国では、多くのブランドがまだブランドコンテンツの試験的利用を検討している段階だ。米国では、多くのブランドと2回目や3回目の提携キャンペーンを実施している」と、カツェフ氏は述べた。この2週間で英国内の約50のブランドと交渉し、ユニリーバとのブランドコンテンツキャンペーンが実現したという。タイ風ココナッツカレーツナサンドなど、マヨネーズを使った一風変わったサンドイッチのつくり方を紹介するシリーズだ。

日本で特に人気の高い、タイニー・キッチンのセット
料理動画の分野は俯瞰撮影のハウツー動画が溢れていて、そのテンプレぶりを皮肉った動画までつくられるほどだ。ここ2年のあいだ、番組編成の多様化を図り、25ほどの料理と旅行関連の番組を世に送り出してきた。ヒット作としては、ミニチュアのなかで本物の料理をつくる「タイニー・キッチン(Tiny Kitchen)」をはじめ、コメディ、芝居、アニメ、それにインスタグラムやYouTube上で発掘した500人のグローバルクリエーターをホストに迎えた番組などがある。
親しみあるコンテンツが重要
英国では、テイストメイドは15人ほどのクリエーターと共同制作をおこなっている。その1人、「トップレス・ベーカー(Topless Baker)」ことマット・アドラード氏の動画は、米国でも人気だ。

「トップレス・ベーカー」ことマット・アドラード氏
アドラード氏によると、「地域に合わせてコンテンツに手を加える際に重要なのは、幅広くアピールできることと、材料が入手しやすいことだ」という。同氏のレシピのうち、エッグベネディクトやチキン・パルミジャーナは好評を博したが、ミンスパイ(英国でクリスマスによく食べられる、ドライフルーツが入った小さなパイ)はそうでもなかった。「見てすぐに親しみを覚えるものでなくてはならない」とアドラード氏は言う。
親しみやすさだけなく、おなじみの食材を斬新な方法で使うのも、テイストメイドの「秘訣」だ。カツェフ氏は、「抹茶は知っていたが、抹茶味のパンケーキは思いつかなかった。ピザはよく食べるが、じゃがいもでピザ生地が作れるなんて想像もできなかった。こういった意外性は刺激的だ」
サプライズや郷愁も必要
こういったサプライズ的な要素は、テイストメイド英国版チームが目にしたいくつかの料理のトレンドにも見て取れる。たとえば、イングリッシュ・ブレックファストのオムレツをディナーに食べるなど、朝食や夕食といった区別のあいまいな食事「ミール・ブラー(meal blur)」もそのひとつだ。1月後半にもっとも人気を博した動画はチョコレート・サラミのレシピで、インスタグラムで64万ビューを達成した。このレシピは、クリスマス休暇で余ったチョコレートを使い切るために考案されたものだ。
また、ノスタルジーも効果的だ。「一般に、英国料理は伝統的なものが多いので、英国人は昔を想起させる料理への関心が強い。たとえば、自宅で和やかに過ごす金曜の夜に食べるフィッシュ&チップスのように」とプログラマーのモハメド・アリ・サラー氏が言うとおり、このビールで衣を作ったフィッシュ&チップスのレシピはインスタグラムで7万3000回閲覧された。「このレシピはインスピレーションと純然たる実用性の賜物だ」と、サラー氏は言う。

本物のサラミと間違えないように
米国で人気の動画は、たとえばこのチーズハンバーグ詰めガーリックトーストなどで、インスタグラムでの閲覧数は73万回を超える。「ふだん詰め物にするとは思いもしないものを詰めた料理を見ると、なぜか満足感を覚える」のだと、カツェフ氏は指摘する。
毎日話題に上るために
テイストメイド英国版は現在、生産性の高いチームをつくろうと動いているところだ。カツェフ氏によると、ロサンゼルスのスタジオでは、7人のスタッフが9つのプラットフォーム全体で80ものコンテンツを2日で制作しているという。
同氏は、「我々が新参者なのはわかっている。ブランド契約の締結、オーディエンスの拡大、クリエイティブな番組の制作など、テイストメイドが英国内で毎日話題に上るためにやるべきことはたくさんある」と語った。

テイストメイドのグッズ売り場
Lucinda Southern(原文 / 訳:ガリレオ)