「 Amazon からeコマース市場を取り戻す」:独自「プライムデー」開発に意欲を見せるパブリッシャーたち

多くのブランドにとって、Amazonのプライムデーは製品購入のための重要な休日となり、その規模は年末のホリデーシーズン中の販売額に匹敵する。Amazonによると、たとえば2019年のプライムデーの売上げは、2018年のAmazonのブラックフライデーとサイバーマンデーを合わせた額を上回り、2日間のイベントを通じて1億7500万以上のアイテムが購入されたという。

新型コロナウイルスのパンデミックによってオンラインショッピングの利用が増え、Amazonをはじめ多くのオンライン小売業者が在庫を確保できず出荷が間に合わなくなるなかで、AmazonのCFOであるブライアン・オルサフスキー氏は2020年7月に行った決算報告において、Amazonは米国で7月に予定されていた2020年のプライムデーを第4四半期まで延期する、と発表した。

1年のうちで消費者が割引された商品にたくさんのお金を使う準備をしていた時期に、軸となる販売イベントがなくなったことで、コマース部門を持つパブリッシャーは独自のショッピングホリデー開催に取り組む機会を見出している。

独自のショッピングイベントを開催

ストラテジスト(The Strategist)とコスモポリタン(Cosmopolitan)はどちらも今夏、両者にとって初となる2日間のショッピングイベントを開始した。数百のメディア企業が利用するeコマースプラットフォームであるスタックコマース(StackCommerce)も、多くのパブリッシングパートナーのeコマースサイトにまたがるセールスイベントの開催を計画している。

ニューヨーク・タイムズ(The New York Times)のeコマースサイトであるワイヤーカッター(Wirecutter)も以前、「ワイヤーカッター・ディール・デー(Wirecutter Deal Day:WDD)」という1日限定の独自のショッピングイベントをテストしたことがあった。だが開始から2年後、ニューヨーク・タイムズは、1日だけのイベントモデルから年間を通して小規模な販売イベントを開催することへとその軸足を変更した。

ニューヨーク・タイムズのビジネス開発ならびにパートナーシップ担当ディレクターのレイラニ・ハン氏によると、2018年のWDDでは30超の小売業者との独占契約を売りにし、2019年にはその数を倍にしたという。それだけではなく、イベント期間中に販売される製品数も年を追うごとに倍増している。

ハン氏は、年間を通じてディール・デーをより小規模かつテーマ別のイベント、たとえば「スリープ・ウィーク(Sleep Week)」やパンデミックの初期段階での在宅勤務イベントや新学期イベントなどに分割するほうがチャンスだと話す。これらの小規模イベントは現在、月1回程度開催されている。

プライムデー不在でイベントがスライド

一方で、大規模な夏のショッピングイベントを通じてAmazonから市場シェアを取り戻すというアイデアにこだわるパブリッシャーもいる。

2カ月前、ストラテジストは「Two-Day (Actually Good) Sale (2日間の[実に素晴らしい]セール)」というイベントを、トラフィック的にも売上げ的にも最善と思われる5月に開催することを思いついた。多くのパブリッシャーと同様にストラテジストのeコマースビジネスは第2四半期に盛り上がりをみせ、売上げは昨年比で85%増となっていた。

ストラテジストの親会社、ボックスメディア(Vox Media)でeコマース部門を率いるカミーラ・チョウ氏は、このセールスイベントはプライムデーと規模を競うことを意図したものではなく、それ以上にプライムデーが7月におこなわれると仮定して、ストラテジストのイベント開催はその時期からずらすつもりだったと話す。

だが、プライムデーがなくなったことで「Actually Good Sale」は7月29日と30日に実施され、ウェブサイトでは32の製品が、さらにニュースレターの購読者には追加で3つの製品が独占販売された。

チョウ氏は、小売販売についての記事のサイト平均パフォーマンスとの比較において、平均CTRは50%増加し、販売に含まれたアイテムのクリックあたりの収入も50%増加したという。

セールで販売されたアイテムは、編集チームが作成したセットリストから選ぶようになっており、どれも以前にサイトで取り上げたことがあるものだったとチョウ氏はいう。しかし、このリストに入るためには、小売業者は1年のうちで最高の割引を提供しなければならなかった。「Googleやほかのどこかで目にするような、よくある15%オフは求めていなかった」とチョウ氏はいう。

セールイベントの成功を基に、チョウ氏のチームはもう一度同じ企画を開催し、できればボックスメディアの他のタイトルにまでこのモデルを拡大するつもりでいるという。

自分たちでショッピングホリデーを提供

コスモポリタンのシニアバイスプレジデントで、パブリッシングディレクターを務めるナンシー・バーガー氏は、独自のセールイベント――8月8日~9日に開催した「ハウリデー(Hauliday)」――はプライムデーや中国でおこなわれている「独身の日」のようなショッピングホリデーに由来すると説明する。ハウリデーは、後払いサービスを提供するバンキングプラットフォームのクラーナ(Klarna)とともに準備され、96のブランドが参加してコスモポリタンのオーディエンス向けに独占的に製品を提供した。

このアイデアは1年半以上をかけて実現されたもので、当初は対面型イベントと参加小売業者の実店舗でのセールも予定されていた。しかし、バーガー氏は、中止や対面型イベントができるようになるまで待つことはしなかった。コスモポリタンのアフィリエイトビジネスは、パンデミック期間中に前年比288%増を記録し、ホリデー期間の売上げを凌いでおり、オンラインのみのイベントでも充分にチャンスはあると考えたためだ。

CNNやTMZ、マッシャブル(Mashable)などをパブリッシングパートナーに持つスタックコマースもまた、イベント参加を快諾している多くのメディアを横断し、9月18日に「VIPデー(VIP Day)」というイベントを開催する準備を進めている。スタックコマースのCOO、カール・ハウス氏はプライムデーの延期によって「消費者の需要が鬱積している」と話す。

ハウス氏によるとパブリッシャーを横断した独自の販売イベントを行うというアイデアの一部は、同社と関係があるメーカーや小売パートナーが、プライムデーのために数か月も前から注文していた品がプライムデーの延期によって棚の上に積まれたまま残っていると報告してきたことに端を発しているという。こうした事情も背景にあり、メーカーはより多くの割引を進んで提供する、と同氏は話す。

グローバルイベント化も狙う

スタックコマースとコスモポリタン、いずれも独自ショッピングホリデー開催への意欲はグローバルで、なによりもとても高い。

バーガー氏は、ハウリデーが今後はコスモポリタンのインターナショナルエディションで取り上げられるだろうと期待している。「我々には変化を起こすに足るスケールが充分にあり、これを世界最大のショッピングホリデーのひとつにできる」とバーガー氏は述べる。

ハウス氏は、Amazonは「プライムデーで商取引を増やす日を作った。ほかのeコマース企業が似たような何かをして、数年後には世界的なイベントにできないという理由はない。消費者も毎年夏になると我々のイベントを期待し、興奮するようになるだろう」と語った。

[原文:‘Take back some market share from Amazon’: Publishers are testing their own versions of Prime Day

(翻訳:藤原聡美/ガリレオ、編集:分島 翔平)