ID 危機に直面し、右往左往するオンライン広告業界:「現在のシステムは整合が取れていない」

多くの人々が危機を経験するように、オンライン広告業界は荒涼とした場所になってきた。

プライバシーを保護する法令の施行後、サードパーティCookieが終焉するなかで、広告主やパブリッシャー、アドテク企業が、カリフォルニア州パームスプリングスで開かれたインタラクティブ広告協議会(Interactive Advertising Bureau:以下、IAB)の年次リーダーシップ会議に集まった。これまでに開催された会議は往々にして、オンライン広告業界の関係者が結集する熱狂的なイベントだったが、今年はどちらかというと正常な状態へと立ち戻るような論調だった。「現在のシステムは整合が取れていない」と、ハースト・マガジン(Hearst Magazines)のプレジデントで、IABの次期会長であるトロイ・ヤング氏は2月9日、ウェルカムスピーチでこう述べた。

これは控えめな表現だ。

オンライン広告業界は、自らが招いたID危機に直面している。(広告ターゲティングを目的としたウェブトラッキングのための)サードパーティCookie利用が広がって、プライバシー問題になったのだ。アドテク業界は、Cookieに基づくトラッキングをオプトアウトできる「AdChoices」などによって、自力でこの問題に対処しようとしてきた。だが、そうした取り組みは不十分だとわかり、結果的に、規制当局ブラウザメーカーはオンライントラッキングを抑制する措置を取った。

「自分たちのやり方から脱却する時間は十分にあったが、それがなかなかできなかった。規制が迫ってくるのをどれくらいのあいだ見ていただろうか? 12年間? そしてこうなった。すべての行動を改めなくてはならない」と、あるパブリッシャー幹部は語った。

Cookieの代替手段探し

特に、オンラインでの行動を追跡して広告のターゲティングや測定を行う、業界の手法を変えなくてはならない。2年後には、GoogleのChromeブラウザはサードパーティCookieのサポートを廃止する。これは、トラッキング用Cookieの終焉と業界による代替手段探しの公式な開始を告げる合図となるだろう。

現在、業界ではサードパーティCookieの代替手段について意見が一致していない。Googleは、2年後のChromeの変更前に、業界の代表と協力してサードパーティCookieに代わるものを開発すると述べてきた。一方、ライブランプ(LiveRamp)やブライト・プール(BritePool)のような企業は、独自の識別子を開発した。その路線を取りそうな企業はもっと多い。識別子が急増すると、広告のバイヤーとセラーが、手段や目的ごとに役立ちそうな各識別子を調整しなければならないので、複雑になる。「本当に大変なのは、これらのIDが、メールアドレスや電話番号のようなファーストパーティのIDに基づく必要が生じることだ」と、あるアドテク幹部は指摘する。

もちろん、オンライン広告のIDレイヤーの実証にメールアドレスや電話番号を利用するのは、口で言うほど簡単ではない。企業は人々のメールアドレスや電話番号の収集が可能である必要があるばかりか、広告目的でのそうした情報の利用に同意してもらわなければならなくなる。

コンテクスチュアル広告の可能性

もっと容易な代替手段は、オーディエンスベースの広告の完全な停止を目指すというものだ。そうはなりそうにないが、業界のID危機により、コンテクスチュアル広告やコンテンツベースの広告に再び関心が寄せられてきた。「多くのパブリッシャーが、どういった形でコンテクスチュアル広告に戻るか検討中で、古いものすべてが再び新しくなったような感じだ」と、IABのイベントに参加しなかったコンデナスト(Condé Nast)の広告運用およびマネタイゼーション担当責任者レイチェル・サベージ氏は語る。

サードパーティCookieの代替手段について意見が一致していないため、すべての選択肢が検討される。たとえば、主要な代替手段としては、コンテンツサービスに回帰してオーディエンスのターゲティングを行う手がある。IABのイベント中のタウンホールセッションで、広告市場のバイヤーとセラーの参加者はともに、コンテンツベースの広告からオーディエンスベースの広告への振れ幅が大きすぎたと語った。

「コンテクスチュアル広告が助け船として提示されつつあるのは確かだ」と、SSP(サプライサイドプラットフォーム)のプロバイダー、インデックス・エクスチェンジ(Index Exchange)のCEOアンドリュー・カザレ氏はいう。同氏に言わせれば、コンテクスチュアル広告は「劣っている可能性がある代替の助け船」だという。

Cookieを失うことの意味

とはいえ、コンテクスチュアル広告だけでは、オーディエンスベースの広告を救おうとしている業界を助けられない。

コンテクスチュアル広告はID問題を回避するが、同じ広告を表示する頻度の管理など、サードパーティCookieが解決に利用されてきた問題を再び持ち込む。「フリークエンシーキャップは消費者体験にとって非常に重要だ。より良い消費者体験を提供しなければならない」と、ハーツ&サイエンス(Hearts & Science)でメディアおよびデータ担当最高責任者を務めるミーガン・パグリウカ氏は語る。

業界がコンテクスチュアル広告に完全に切り替えれば、製品の販売などを広告によるものと見なせるかどうかも危うくなる。「Cookieを失うと、マルチタッチアトリビューションを失う。ほとんどのコンバージョンは、Cookieに基づくメディア活動に関係している」とカサレ氏はいう。

最終的に、オンライン広告業界はサードパーティCookieを失いつつある。何はともあれ、それだけは明らかだ。

Tim Peterson(原文 / 訳:ガリレオ)