ニュースレター 活用で 有料会員 を伸ばす、スイスの新聞社:「登録者増の最重要ツールのひとつ」

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スイスのニュースパブリッシャー、ノイエ・チュルヒャー・ツァイトゥング(Neue Zürcher Zeitung、以下NZZ)は、eメールのニュースレターを登録者数を増やすもっとも効果的な手段として位置づけている。ドイツ語でニュースを提供しており、2022年までにサブスクリプションサービスへの登録者20万人を目標として掲げている

目標は20万人の登録者

NZZは200年の歴史を持つ。同社は現在eメールによる21種類のニュースレターを配信しており、そのうち約半分を週刊で、残りを日刊で配信している。なかでももっとも人気なのは日刊報道のニュースレターで、読者数は約25万人近くにまで伸びている。

NZZによるとこのニュースレターは朝の時間帯に同社ウェブサイトのトラフィックの約8%を占めているという。ニュースレターの平均開封率は30%を超え、メールチンプ(Mailchimp)が発表するメディアニュースレターの標準的な開封率である22%を上回っている

2018年末時点で、NZZのサブスクリプションには15万6000人が登録しており、デジタル版のみのサブスクリプションへの登録者は3万9000人となっている。NZZの登録ユーザー数は60万人だ。昨年、同社のサブスクリプション登録者全体では4%の伸びを、デジタル版のみのサブスクリプションでは59%の伸びを記録している。だがNZZが目標としているのは2022年までに20万人のサブスクリプション登録者を獲得すること、そしてそのうち50%以上をデジタル版のみのサブスクリプション登録者とすることだ。

登録ユーザー分析の結果

同社は9人体制のデータサイエンスチームで傾向モデルを研究している。最近同チームが実施した過去8カ月における登録ユーザー分析の結果、ふたつ以上のニュースレターを受け取っているユーザーがもっともサブスクリプションへのコンバート率が高いことが判明した。

さらに「経済」や「デジタル」といった分野ごとのニュースレターがもっともコンバージョンに貢献しており、オーディエンス数はそれぞれ2万5000人と1万5000人となっている。過去8カ月で、もっとも読者数の多かったニュースレターのコンバージョン率は10%を割り込んでいた。同社によると、なかでもライフスタイル分野のニュースレターのコンバージョン率がもっとも低かったという。さらにニュースレター読者の登録数とエンゲージメントスコアには正の相関関係があることがわかった。これはリーセンシーやフリークエンシー、訪問1回あたりに読んだ記事の量といった基準を用いて登録傾向を算出することではじき出された結論だ。

NZZのポートフォリオ管理部長を務めるダニエル・アマン紙は、ニュースレターについて「登録者数を増やすための最重要ツールのひとつ」と位置づけている。NZZはニュースレターを主にコンバージョンのためのツールとみなしているため、非常にニッチな分野の2件を除き、すべてのニュースレターは登録している全ユーザーに配信されている。

打ち手の豊富さも寄与

同社は今後さらなるニュースレターの発行に制限を設けていない。さらに特定デモグラフィックのオーディエンスにリーチするための商品計画も存在する。NZZの読者の65%は男性だ。そこで女性読者を増やすための試みとして、同社は先月に若い女性読者むけに「NZZパーソナリー(NZZ Personally)」の配信を開始した。このニュースレターは毎週配信され、NZZの4人の女性ジャーナリストがその週でもっとも面白いと感じたさまざまなニュースを選び、その理由とともに読者に伝える内容となっている。NZZパーソナリーではNZZや同社のほかのニュースレターが一般的にあつかう経済や金融以外の幅広い分野の話題を取り上げることも多い。

ほかにも最近NZZが配信を開始したニュースレターの一例として、ユーザーの行動等をもとにパーソナライズした学生向けのニュースレターがある。このニュースレターは、NZZが学生向けにパーソナライズしたフィードのうちでもっとも人気だった10記事を学生向けに配信するものとなっている。このニュースレターは、配信開始にともない学生ユーザー全員に配信されるように初期設定されていた。アマン氏によると、ワインや旅行のような特定分野のニュースレターであれば、自動的にオーディエンスを登録して配信してもうまくいくことが多いという。NZZによると、自動でニュースレターを登録しても登録解除するオーディエンスがいる程度で、それ以上の否定的な反応は見られないという。

NZZは、昨年夏から各登録ユーザーがサブスクリプションに登録する傾向を算出するアルゴリズムを運用しており、これを活用してさまざまなテストを行っている。アルゴリズムはリーセンシーやフリークエンシー、訪問1回あたりに読んだ記事の量や読んでいるニュースレターの数といった数百におよび基準をもとにスコアを算出している。NZZはこの傾向スコアをペイウォールにどう活用できるかを模索するため実験を行っている。たとえば傾向スコアが上位20%の読者が次に訪問した際に、サブスクリプションについて通知を行うといった実験だ。同社によると、この試みによってコンバージョンが8割以上も増加したという。

「重要なのはカスタマー体験」

アマン氏を含む4人のチームが今後数カ月の目標として掲げているのが、サブスクリプション登録者を獲得しつつ解約を抑えることだ。デジタルサブスクリプションは毎月の契約となっているため、カスタマーライフサイクルが短い傾向にある。ほかにもデジタル版のみのサブスクリプションに登録しているユーザーあたりの収益をあげることも目標のひとつだ。こうしたユーザーは紙面とデジタル版の両方に登録しているユーザーより支払い単価が低いため、同社は補助的な立ち位置の商品販売を試みている。同社はさらに今年10月に行われるスイス連邦議会総選挙のような、重要な出来事があるときに特別配信するニュースレターも計画している。

有料コンテンツ戦略を模索しているほかのパブリッシャーと同様に、NZZもまたさまざまな有料モデルを試してきた。同社は2012年に登録ユーザー向けのサービス提供を開始した。読者について理解を深め、eメールのニュースレターのコンバージョンに関する有効性を探るためだ。その後、同社は機械学習のアルゴリズムによってパーソナライズされたペイウォールの開発を進めてきた。

アマン氏は次のように語った。「サービスはユーザーフレンドリーでなければならない。重要なのはカスタマー体験だ。オーディエンスが読みたいニュースレターを簡単に探せるように、どのようなニュースレターがあるかもっと分かりやすく把握できるようにしなければならない。我々はまだ完璧ではなく、改善していく余地がある」。

Lucinda Southern(原文 / 訳:SI Japan)