ライブ配信ショッピングは2021年のデジタルメディア業界のトレンドであり、多くのベンチャーやパブリッシャー、プラットフォーム、インフルエンサーが参入している。今回、2021年にライブショッピングを60回以上配信したBuzzFeedのコマース担当でエグゼクティブ・バイスプレジデントのニラ・アリ氏に話を聞いた。
2021年にデジタルメディアでもっとも注目された業界トレンドのひとつが、ライブショッピングだった。この新たに出現した消費者行動への関心から、ベンチャーキャピタルや従来のテレビ放送は投資を増やし、Amazonはなかなか効果が上がらないライブショッピング事業をいまも続けている。
そればかりか、パブリッシャーやプラットフォーム、そしてインフルエンサーも、この分野で答えを見つけ出そうとしている。BuzzFeedは2021年にライブショッピングイベントを60回以上配信したが、そのうちの30回は第4四半期に行われたものだ。彼らのライブ配信は合わせて440万人以上のオーディエンスを集め、コンテンツの視聴時間は110万分を超えた。ただし、BuzzFeedは、エンゲージメントに基づいてライブ配信を評価していると述べ、こうした取り組みによってどれだけの商品が売れたかについては明らかにしていない。
米DIGIDAYは、BuzzFeedのコマース担当でエグゼクティブ・バイスプレジデントを務めるニラ・アリ氏を取材し、この分野に参入した昨年の経験から学んだことのすべて語ってもらった。また、今後1年の課題と学びに向けた準備についても話を聞いた。
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さまざまな種類と規模のライブショッピングサービス
新しいデジタルサービスは、まずどこかひとつのプラットフォームで始まってから、競合各社に模倣されることが多い。ショッピングができるライブ配信サービスの場合、実に多くのさまざまなプラットフォーム、スタートアップ、小売業者がサービスを立ち上げたため、パブリッシャーが確認すべき変数がさらに増えることになった。BuzzFeedは2021年、ウォルマート(Walmart)、ターゲット(Target)、Amazonといった小売業者と提携し、TikTok、インスタグラム、Facebookなどのプラットフォームと自社サイトでライブショッピングサービスを開始している。
「理屈のうえでは、我々がTikTokでやっていることは、インスタグラムでやっていることとも、直営サイト(O&Os)でやっていることとも異なっている」とアリ氏はいう。
まだ答えが見つからない理由
2021年が進むにつれて、ライブショッピングは一部のメディアウォッチャーのあいだで大いに注目される存在となった。中国ではライブショッピングが消費者行動のひとつとして定着しているため、米国で盛んになるのも時間の問題だと予測する向きは多い。
だが、数多くのライブショッピングが存在するなかで、人々が定期的にライブショッピングを見たくなるようにするにはどうすべきか、アリ氏もチームもまだ答えを見つけ出せずにいる。
「もう一歩後ろに下がって、心理面から理由を考える必要があると思う。我々はまだこのような行動の理解に努めている段階だ。そして、こうした行動は、プラットフォーム、価格帯、タレント(配信者)に大きく影響される」と、アリ氏は語った。
「業界では実に多くの人々が答えをすぐにでも知りたがっているが、我々はじっくりと検討していきたい」と、アリ氏は付け加えた。
配信者に望まれるのは臨機応変さ
新たに登場した消費者行動と同じように、優れたライブ配信者の資質もまだよくわかっていない。だが、BuzzFeedのチームは昨年、自発性と柔軟に対応できる能力が欠かせないことを発見したという。「カメラ写りがいいかどうかではなく、うまく立ち回れるかどうかが肝心だ」と、アリ氏は話す。
プラットフォームによっては、オーディエンスからのコメントや商品の注文など、さまざまなやり取りへの対応が必要になる。そのような変化に対処できる人物を起用することが重要だと、アリ氏は説明した。
また、テーマに関する専門知識も役に立つ。2021年以前、BuzzFeedはペット用品をテーマにしたライブ配信を行う際に、こなれたテレビ司会者ではなく2人のドッグウォーカー(犬の散歩代行業者)を起用した。「フォロワーが大勢いる人を探すようなことはやめたほうがいい」と、アリ氏はいう。
気を引き締める
2022年には、プラットフォーム各社がこうした問題の答えを見つけ出すことに注力するようになると、アリ氏は予想する。「このような調子で、さらにいろいろなものが出てくるだろう。あらゆるプラットフォームがコマースツールへの投資を拡大している」。
ピュブリシス・コマース(Publicis Commerce)のシニアディレクターで、コマース機能担当の責任者を務めるシャーリー・ジョンソン氏に言わせれば、ライブ配信ショッピングによるコマースは「2022年に注目すべきコマースのトレンド」だ。
[原文:‘Still understanding that behavior’: What BuzzFeed learned from a year of livestream shopping]
MAX WILLENS(翻訳:佐藤 卓/ガリレオ、編集:小玉明依)