ads.txt の現状:要点まとめ

ads.txtは、発音の仕方をめぐって論争があるものの、10代の若者がジェルボール型洗濯洗剤を食べる遊び「Tide pods challenge」に熱中するのと比べると、アドテク関係者のあいだで議論になっているとはいえない。

インタラクティブ広告協議会のテックラボ(IAB Tech Lab)が5月ローンチしたads.txtは、インベントリー(在庫)の販売が認可された企業をリストアップしたテキストファイルであり、パブリッシャーはこれを各自のWebサーバーにホストする。バイヤーは、ads.txtを使って購入するセラーの正当性をチェックできるので、ドメインのスプーフィングインベントリーのアービトラージを回避しやすくなるはずだ。

ads.txtの現状については、以下のことを知っておく必要がある。

主要なデータ

  • この数カ月間に採用が大幅に増えた。アドベリフィケーション企業のピクサレート(Pixalate)によると、ads.txtを採用しているサイトは、9月の3500件から増加し、現在は9万を超えている。プログラマティック広告を販売している上位1000件のサイトのうち、ads.txtファイルがあるのは57%で、9月はこの割合が16%だった。
  • プログラマティックエクスチェンジでは、あいかわらずドメインのスプーフィングが横行している。ワシントン・ポスト(The Washington Post)、ターナー(Turner)、ビジネスインサイダー(Business Insider)、ニューヨーク・タイムズ(The New York Times)、USAトゥディ(USA Today)など、パブリッシャー16社のグループが最近実施した調査から、これらのパブリッシャーの名前を語った偽の動画インベントリーに対して、広告主が1日あたり350万ドル(約3.9億円)を支払っていたことが判明した。
  • パブリッシャーのads.txtファイルにリストアップされているのは、ほとんどが再販業者だ。ファーストインプレッション(FirstImpression)のads.txtダッシュボードによると、アレクサ(Alexa)のトップ1000サイトでは、ads.txtファイルにリストアップされたベンダーのうち76%が再販業者となっている。
  • ファーストインプレッションによると、アレクサのトップ1000サイトのうち約16%は、ads.txtファイルのフォーマットに間違いがある。
  • 広告業界のほかのどの企業よりもads.txtの普及に貢献したGoogleは、これまでのところ、パブリッシャーのads.txtファイルでもっとも人気が高いベンダーだ。ピクサレートによると、ads.txtファイルの97%にリストアップされている。この割合が50%を上回るほかのベンダーは、アップネクサス(AppNexus)とルビコン・プロジェクト(Rubicon Project)だけだ。

セルサイドの考え

アドバイヤーは、ads.txtファイルがあるパブリッシャーを通じて資金をつぎ込むので、Googleのアドエクスチェンジでは広告料金が上昇している。そのため、ロングテールサイトが広告収入を稼ぐのがさらに難しくなる、とパブリッシャーのカフェメディア(CafeMedia)の共同創設者であるポール・バニスター氏は語る。

「石を拾い上げて、その下にいるすべての虫を見るようなものだ。そこに何かがいるのはわかっているが、『わぁ、たくさんいるな』という感じだ」とバニスター氏はいう。

バイサイドの考え

ads.txtを採用したパブリッシャーが十分にいるので、予算が少ないキャンペーンは、ads.txtファイルがあるサイトだけに打ち出せる、と広告エージェンシーのエッセンス(Essence)のアクティべーション担当ディレクター、マシュー・マッキンタイル氏は語る。だが、大規模なキャンペーンの場合はまだ、このツールを採用していないパブリッシャーを引き込む必要がある。オープンエクスチェンジでエッセンスが購入するインベントリーの約60%は、ads.txtファイルを検証したサイトのものだ。

広告主からすれば、ads.txtによってプレミアムパブリッシャーのプログラマティック広告の料金が上昇するという交換条件がある。だが、ads.txtはドメインスプーフィングの低減に役立つので、広告料金の上昇にともなって広告のパフォーマンスが向上するはずだ、とマッキンタイル氏は指摘する。

業界にとっての意味

アドバイヤーパブリッシャーベンダー、業界団体は、ads.txtを採用し続けている。先週、広告詐欺対策に取り組む業界横断団体トラストワージーアカウンタビリティグループ(Trustworthy Accountability Group:以下、TAG)は、パブリッシャーがTAG認証を得るにはads.txtを実装しなくてはならなくなると発表した。

この数カ月間にads.txtの採用が広がり、固有のインベントリーにアクセスできないベンダーに圧力が掛かっている。こうした圧力を反映して、再販業者は、ads.txtファイルへの登録を無関係のパブリッシャーにも依頼している

ほとんどのパブリッシャーと広告主は、ads.txtを、胡散臭い広告サプライチェーンの一掃に向けた前進と考えている。だが、ads.txtに刺激されて、張りつめたカンファレンスパネルが設けられても、詐欺対策ツールとしては限界がある。ファイルに列挙するベンダー名のスペルをパブリッシャーが間違えると、ads.txtでインベントリーをフィルタリングするバイヤーが、パブリッシャーのインベントリーを意図せずに無視する結果につながる。ディスプレイ広告のインベントリーを動画広告のインベントリーとして再パッケージして、ディスプレイと動画のCPMの差によるアービトラージ(裁定取引)で仲介者が稼ぐことも防げない。

「業界が偽のインベントリーをめぐる基準を策定しなければならなかったということは、エコシステムとして道を見失っているということだ。基本的には、もっと油断がならないシステム上の問題の解決策となる技術で、複雑骨折を縫合で治すようなものだ」とデータプラットフォーム、ナラティブI/O(Narrative I/O)の共同創業者であるニック・ジョーダン氏は語った。

Ross Benes(原文 / 訳:ガリレオ)