米抗議デモ 、 インフルエンサー に求められる責任とは?:「なにか意見を表明すべき」

ジョージ・フロイド氏を殺害した警察の横暴に対し、全米で抗議行動が続くなか、マーケターたちはインフルエンサーキャンペーンを一時停止させている。6月2日には抗議のために真っ黒な画像を投稿する「ブラックアウト」が行われ、現在も警察や抗議デモの動画、米国における構造的人種差別の歴史に関する投稿が中心となっているソーシャルメディアにおいて、インフルエンサーマーケティングキャンペーンは鈍感で場違いに見えると、インフルエンサーマーケティングエージェンシーは述べている。

新型コロナウイルスの影響で、すでに大きな打撃をうけているインフルエンサーマーケティングを再び一時停止することがあったとしても、それは最大の問題ではない。インフルエンサーマーケティングの多様性、日和見主義、政治や人種の問題についてインフルエンサーたちがとるスタンスについてブランドが理解を示す必要性への問いが、インフルエンサーマーケティングコミュニティにとって内省のときかもしれないとして、湧き上がっているのだ。

こうした反応は、いまの大きなうねりがもつ意義を踏まえてのものだ。インフルエンサーがプラットフォームで保持する影響力は絶大であり、彼らのファンは本人が現状について話し、意見を表明することを望んでいると、インフルエンサーやエージェンシーの幹部社員はいう。「インフルエンサーの役割はここ3~5年で大きく変化した」と、ブログ「ママ・ノウズ・イット・オール(Mama Knows It All)」を運営するブロガーでインフルエンサーのブランディ・ライリー氏はいう。「我々やコミュニティにはより多くの期待が寄せられるようになった。まさに資本主義だ。報酬を受け取るようになれば、そこには責任が生じる」。

インフルエンサーに対して強い責任感や、プラットフォームを通じたフォロワーの啓発を期待する流れは、略奪を扇動するような動画に登場したことで釈明に追われたジェイク・ポール氏のような一部のインフルエンサーが示す、日和見主義と真っ向から対立する。ポール氏のほかにも、砕け散った店のショーウィンドウや抗議行動の前で人々(たいてい白人女性)がポーズをとる動画がソーシャルメディアで拡散している。物的被害や抗議行動をインスタ映え写真に利用することは、すぐさまインフルエンサーマーケティングと関連付けられて批判された。こうした行動をとる人々は、著名なインフルエンサーではなかったのだが。

インスタグラムのために

「演出された瞬間に立ち会うと、人はインフルエンサーを思い浮かべる」と、インフルエンシャル(Influential)のCEO、ライアン・デタート氏はいう。同氏によればインフルエンシャルは6月第1週、ほとんどのインフルエンサーマーケティングキャンペーンを中断した。「インスタグラムのため、あるいは写真撮影のために何かをしているとき、人はその事柄に無関心に見える」。

実際に抗議行動などの場で写真撮影をしているのが大物インフルエンサーかどうかは無関係だ。人々はこうした光景とインフルエンサーマーケティングを結びつける。それがインフルエンサーに対する見方を一変させるかもしれないと、ソーシャル・インフルエンスエージェンシーのモディフライ(Modifly)でCEOを務めるエライジャ・シュナイダー氏はいう。「たいていのインフルエンサーは日和見主義だという認識が、大勢の人々のあいだに広まるだろう」。

映え写真や影響力を求めて何かをすることは、いまのところうまくいっていないし、今後もそうだろう。「深く考えて自分の主張を掲げることが、いまやインフルエンサーの義務だ」と、GSD&Mでシニアソーシャルストラテジストを務めるアンジェラ・ブラウン氏はいう。「インフルエンサーが別のメッセージを伝えるための場を乗っ取ってポーズをとったり、緊迫した状況をインスタグラムの「いいね!」のために利用したりすれば、問題が顕在化する。今後はもっと明確に争点になるはずだ」。

契約の変更

このような行動が明るみに出れば、エージェンシーやブランドはインフルエンサーとの関係を見直す必要に迫られる。デタート氏のように、インフルエンサーエージェンシーの幹部のなかには、時事問題について真摯に意見を表明するインフルエンサーは、今後数カ月のうちに仕事が増えると予測する人もいる。ブランドはふつう、提携によってブランドの信頼の厚みが増すようなインフルエンサーと組みたがるからだ。一方で、Black Lives Matter運動を支持する発言をしたことで解雇されたマンロー・バーグドーフ氏のようなインフルエンサーの例もあり、楽観視はできないという考えも根強い(バーグドーフ氏は6月1日、Black Lives Matterを支持する声明のなかで、かつて自身を解雇したロレアル[L’Oreal]がこの運動を支持するのは偽善だと批判した)。

ビッグブランドから解雇される可能性を恐れ、一部のインフルエンサーは発言を躊躇していると、6000人以上のインフルエンサーからなるコミュニティ「カレッジ・トゥ・アーン(Courage to Earn)」を運営するライリー氏は話す。「仲間として、勇気をもって重要な話題について主張してほしいという声にどう答えるべきか、彼らは模索している」と同氏はいう。「白人のインフルエンサーは我々(黒人)よりも、発言によって業界で得るものが多い。彼らは発言することを選べる立場だからだ。黒人にとって、いま起きていることは人生経験そのものであり、必ず何かを言わなければならない。沈黙という選択肢はないのだ」。

発言によってブランドとの契約を失うことへの懸念に対処するため、インフルエンサーは今後、ブランドとの契約上の義務を細部まで確認するようになるだろうと、GSD&Mのブラウン氏は考えている。インフルエンサーは今後、ブランドに対して「私がこの話題について発言できるように、価値観が一致しているか確かめたい」と伝えるようになるだろう。「契約の一部に織り込んでおかなければ、いずれ自分たちが解雇されかねないからだ」。

インフルエンサーマーケティングエージェンシーのなかには、今後はブランドもエージェンシーもインフルエンサーも、意見を表明することを恐れなくなるという意見もある。「コミュニティとして我々は、もはやさまざまな問題について『無難にいこう』とする人々を許容しないだろう」と、ヴィレッジ・マーケティング(Village Marketing)の創業者ヴィッキー・シーガー氏はいう。「我々は個人やブランドが何を支持しているのかを聞きたいし、実際に行動に移すさまを見たいのだ」。

インフルエンサー施策の多様性

最近、インフルエンサーマーケティングにおいて多様性の問題が表面化しつつある。今年の初頭には、TikTokで黒人のティーンの少女ジャライア・ハーモン氏が作ったダンスを白人のティーンの少女チャーリー・ダメリオ氏がアップロードし、大流行して多数のフォロワーを獲得した。この件で、誰が著作権を持ち、誰がバイラルし、誰がブランド契約を獲得するかという問題が改めて浮き彫りになった。インフルエンサーエージェンシーの幹部によれば、抗議活動が続くいま、人々はこれらの問題にもっと目を向けるようになるだろう。

「この運動により、多様性の問題にもっと光があたるだろう」と、ライリー氏はいう。「連帯のメッセージを掲げながら黒人インフルエンサーを雇わなかったり、Black Lives Matterについて投稿しながら経営陣に多様性がなかったりすれば(問題だ)」。

インフルエンサーマーケティングにおける多様性の問題は、マーケティング全般における多様性の問題につながっている。「職場でも同じことだ。人は自分と似た人を雇う」と、ライリー氏は指摘する。「エージェンシーやブランドのマーケティング部門は、気持ちよく一緒に働けるようにと、自分たちに似た人ばかりを雇っている」。

Kristina Monllos(原文 / 訳:ガリレオ)