デジタル音声広告 、3人のプロが見据える可能性と課題:VOYAGE GROUP、オトナル、radiko

デジタル音声広告という新たな市場が、ここ日本でも芽吹きつつある。

一般社団法人 日本レコード協会が発表している、国内の音楽配信売上実績(※)によると、2018年から2019年で、音楽ストリーミングサービスの広告収入は595%も成長。国内にも、Spotify(スポティファイ)やradiko(ラジコ)といったデジタル音声メディアだけでなく、デジタル音声広告の扱いに長けたエージェンシーが増えている。

DIGIDAY[日本版]は、そんなデジタル音声広告市場の最前線を知るプレイヤー3名に、メール取材を実施。彼らが見据える、デジタル音声広告ならではの可能性と、今後解消していかなくてはいけない課題について聞いた。

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「情報浸透度」が非常に高い

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VOYAGE GROUP 社長室室長 村山 亮太氏
VOYAGE GROUPは、アドプラットフォーム事業、ポイントメディア事業、インキュベーション事業を展開する企業。近年はブランド広告向けアドプラットフォーム「PORTO(ポルト)」を開発し、音声広告プロダクト「Premium Audio広告」などを手掛けている。

テック企業やオーディオコンテンツ企業を中心に、音声コンテンツの取り組みがここ1〜2年活性化している。Web媒体中心に、かなり取り上げられるようになってきている状況を見ると、少しずつ波が広がりつつあるように感じる。

音声広告は視覚情報がないという点において、ほかのすべての広告と一線を画していると思う。視覚情報は情報訴求力が高い分、強いストレスを視聴者に与える可能性がある。一方、音声情報は、音楽やラジオ同様、リラックスしながら接することができるため、ビジュアルインパクトがないにも関わらず、情報浸透度が非常に高い。これは私たちが実施した複数回の広告結果調査でも、毎回確認できている。

しかし、現状デジタル音声広告は、出稿媒体として多くの広告主の選択肢に入っていない。また、いま音声広告を活用している広告主も、動画の音声部分だけを切り出して素材にしている広告主も少なくない。これではクリエイティブが最適化が不十分なため、本来の効果が発揮できないといえる。背景には、デジタル音声広告のためにわざわざ特別にクリエイティブを制作するべきかどうかという、費用対効果の問題が大きいようだ。

こうした現状を変えるには、まずデジタル音声広告のリーチ力を高めることや、音声クリエイティブの強みを探求し、それを対外的に示して行くことが有効だ。そうすれば、クリエイティブの重要性に気付いてもらえたり音声広告のプレゼンスが向上し、これらの課題が解決していくだろう。

生活の隙間時間へのリーチを可能に

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オトナル 代表取締役社長 八木 太亮氏
株式会社オトナルは、Spotifyをはじめとしたデジタル音声広告の広告提案を行う、デジタル音声広告に特化したエージェンシー。現在は、主にプログラマティック音声広告を中心に取り扱う。

デジタル音声広告にはふたつの可能性がある。ひとつ目は、これまでのインターネット広告が訴求できていなかった『生活者の隙間時間』へのリーチを可能にした点。音声のコンテンツは「ながら聴き」といった言葉に代表されるように、「移動中」「家事中」「作業中」など、なにかを行いながら生活の隙間で受け入れられるという性質がある。

BBCが2019年9月、音声コンテンツであるポッドキャストについて約2400人に行った調査では、リスナーの94%は、ほかのタスクを実行しながらポッドキャストを使用しているというデータが出ており、音声コンテンツの「ながら聴き」という聴取スタイルが、一般的になっていることが伺える。また、日本国内におけるSpotifyユーザーの1日の平均使用時間は132分(2時間12分)。1日の生活時間が16時間だと考えると、この時間、音楽を聴きながら別の作業をしているユーザーが数多くいるはずだ。この点からも、音声コンテンツ、そしてそこに挿入ができる音声広告は、これまでのインターネット広告ではリーチできていなかった、生活の隙間に入り込むことができる広告だといえる。

ふたつ目は、音声広告のブランディング性能の高さ。子供の頃に聴いた企業のCMの曲が、いまだに記憶に残っている、というようなことがあるように、音声には記憶に残りやすいという特徴がある。米国のポッドキャスト企業であるミッドロール(MIDROLL)がニールセン(Nielsen)と2018年に行った調査では、デジタル音声広告であるポッドキャスト広告に接触したリスナーは購入意向が平均10%上昇し、ポッドキャスト広告に接触した消費者の61%が宣伝された商品を購入する可能性が高くなるという結果が見られた。また、ほかのデジタル広告であるディスプレイ広告よりも、最大4.4倍のブランド想起の性能が高かったという結果も示されている。

一方、課題もある。そのひとつは、日本国内における音声広告媒体の種類や、広告枠が不足していることだ。広告主の購入できるデジタル音声広告の選択肢は、ほかの広告種類に比べるとバリエーションが多くなく、それゆえにリーチできる層にも限りがある。国内のデジタル音声広告の活性化のためには、広告枠や広告面として多様化や、さらなる媒体の充実が必要だと考えている。もうひとつは、効果測定の仕組みがほかのデジタル広告ほど確立されていない点だ。
 
こうした状況を踏まえ、今後はデジタル音声広告の可能性を広げていく動きを実施していく。具体的には、バナーやディスプレイ動画など、そのほかのデジタル広告との連携配信や、サードパーティーデータの掛け合わせによる、オーディエンスターゲティング活用、効果検証手法の確立を通じて、「デジタル音声広告」をディスプレイ広告やデジタル動画といった、ほかの広告チャネルと肩を並べられるようなレベルまで発展させていくことを目指していきたい。

問い合わせ量は、昨年度比2倍以上

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radiko 業務推進室次長 小平 誠氏
radikoは、スマホやパソコンなどでラジオが聴ける無料サービス。これまでに化粧品会社や食品メーカーなど、75社以上の広告主からの出稿実績があり、問い合わせも増えているという。

ラジオが聴ける無料アプリ「radiko(ラジコ)」という我々のサービスは、長時間に渡って「ながら聴取」される傾向があり、通勤通学中や外出中に利用されている。広告特性としては、ディスプレイ広告や動画広告と比べて、具体的なイメージを視覚的に伝えられない代わりに、音や言葉で訴求する力はこのふたつよりも優れていると思う。音声素材は動画素材に比べて制作コストが低いので、今後その役割が明確になり、既存のデジタル広告と組み合わせるような広告プランが認知されていけば、出稿が増えていくだろう。

いまでもすでに、メディアレップ経由での広告会社各社からの問い合わせに加え、直接広告主から問い合わせいただくケースも増えている。実際、問い合わせの量は昨年度比、2倍以上だ。しかし、現状オーディオ市場はまだ十分に開拓されておらず、デジタル音声広告の認知も広がっていないのも事実。その背景には、デジタル音声広告の良さを発信できていない、オーディオプラットフォーム側の問題もあると認識している。我々としても、その効果をアピールし、個々のサービス上での特徴を明確化していきたい。

今後はオーディオプラットホームの拡充とともに、若年層をはじめ、ユーザーを増やすことが目標だ。合わせて、デジタル広告におけるデジタル音声広告の役割と、既存のデジタル広告を組み合わせた事例作成を、広告主・広告会社と進めていきたい。また、我々が提供している「ラジコオーディオアド」の出稿増加だけではなく、デジタル音声広告の良さというものを、プラットフォームの枠を超えて発信していきたい。加えて、昔ながらのラジオ広告の良さと価値を再定義し、従来のラジオ広告に関しても、出稿を検討いただく広告主を増やすための努力を続けていきたい。

※一般社団法人 日本レコード協会 音楽配信売上 四半期数値(2018〜2019年)

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Written by Written by DIGIDAY Brand STUDIO
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