米国ではオミクロン変異株の急拡大により、過去7日平均で1日70万人以上の新型コロナウイルス感染者が報告され、パンデミックに入って以来最多となっている。そのためパブリッシャー各社は、オフィス再開の時期をふたたび延期するか、復帰計画を保留にせざるを得なくなった。
アメリカのハースト(Hearst)では2021年12月、新型コロナウイルスの集団感染が確認され、社員1名が重症化し、いまだ回復しないまま休んでいる。コンデナスト(Condé Nast)の社員によると、年末年始に複数の同僚が感染して欠勤しているという。業界ではこうした例が後を絶たない。
そのためパブリッシャー各社は、オフィス再開の時期をふたたび延期するか、復帰計画を保留にせざるを得なくなった。米国ではオミクロン変異株の急拡大により、過去7日平均で1日70万人以上の新型コロナウイルス感染者が報告され、パンデミックに入って以来最多となっている。
スキム(TheSkimm)、コンデナスト、ワシントン・ポスト(The Washington Post)、ポリティコ(Politico)の場合、当初の計画では2022年1月初旬にオフィスを再開するはずだった。しかし予定の変更を余儀なくされ、社員のオフィス復帰は1月末まで延期か、職場によっては3月まで延期されることになった。ハーストのニューヨーク本社では2021年11月から出社勤務が義務化されていたが、いまは一時的にリモートワークを復活させている。オフィス復帰を計画するパブリッシャーは安全衛生対策の強化を図っており、コンデナスト、スキム、ワシントン・ポストでは、出社勤務の条件としてワクチンの追加接種が必須となった。
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コンデナスト
当初のオフィス再開予定日: 2021年末
変更後の予定: 2022年1月31日以降に再開
コンデナストは2021年11月15日から出社勤務を始めたが、最高人事責任者のスタン・ダンカン氏は11月3日付の社内連絡書で、2022年初頭から「柔軟な働き方が可能なハイブリッド勤務を開始する」と発表した。12月には各部門が経営陣と協議のうえ、勤務スケジュールを決めていった。しかし年明けの1月第1週、新勤務体制導入を延期するとの通知が社員に送られた。
「我々は新型コロナウイルス感染者数の推移をずっと追ってきたが、直近の状況を受けて、米国内のオフィスへの社員の復帰を1月31日以降に延期することを決定した」と、コンデナストの広報担当者は述べている。出社が必要な業務に従事する社員と制作チームのためにオフィスは使えるようにしてあるが、それ以外の社員はふたたびリモートワークに戻っている。
ハースト
当初のオフィス再開予定日: 2021年11月
変更後の予定: 未定
ハーストでは、オフィス復帰計画の第1段階として、2021年11月時点で週2日の出社が義務づけられていた。しかし12月に入って新型コロナ感染が職場で広がりはじめたため、2022年1月第1週には、フレキシブル勤務方針を復活させるという社内通達が出された。社員は、1月31日まではリモートワークを選択できる。
「いずれ、週2日出社、3日在宅というハイブリッド勤務体制に戻したいと思っている。ただし、感染状況がどう変わるか、引き続き注意を怠らず見ていく」と、ハーストの広報担当者はいう。
ハーストは状況に応じて計画を調整する方針をさっそく適用し、本記事の配信後数時間のうちにオフィス復帰のスケジュールを更新した。米DIGIDAYが入手した文書によると、ハーストの子会社、ハースト・マガジンズ(Hearst Magazines)のデビ・チリチェッラ社長は1月13日付の社内連絡書で、リモートワークが選択できる勤務体制の開始は「追って通知があるまで」延長するとし、「新たなオフィス復帰日が確定しだい、遅くとも実施の2週間前には通知する」と全社員に伝えたという。同日、米DIGIDAYはハースト・マガジンズの広報担当者にコメント依頼を送ったが、返信はまだ届いていない。
ポリティコ
当初のオフィス再開予定日: 1月18日
変更後の予定: 3月1日再開
ポリティコでは2021年11月、「1月18日から全社がハイブリッド勤務体制に移行する」との社内通達を出した。これにより非管理職の社員はほぼ全員、希望すれば在宅勤務を選ぶことができる。ただし同社は1月第2週、ハイブリッド勤務体制の開始を3月1日まで先送りすると全社員に通知した。
スキム
当初のオフィス再開予定日: 1月11日
変更後の予定: 未定
スキムは正社員に対し、月に3日のニューヨーク本社への出勤を1月11日から義務づけていた。しかし1月4日、「最近のオミクロン株の感染急拡大を受けて」オフィス再開の予定を延期すると発表した。広報担当者によれば、社員の安全を優先した結果の決断であり、「子どもたちがふたたび自宅学習になった働く親への支援」も必要だという。
スキムは、「ニューヨーク市内の新型コロナウイルス感染動向を見ながらオフィス再開の日程を決める」としている。
ワシントン・ポスト
当初のオフィス再開予定日: 2021年11月
変更後の予定: 2月15日再開
2021年9月、ワシントン・ポストはオフィス復帰予定日を2022年1月10日としていたが、12月16日には、予定日を2月15日に延期すると発表した。この日以降、社員は少なくとも週に3日オフィスへ出勤することになる。復帰に向けた準備のため、管理職は予定日の2週間前から出社する。
[原文:Spiking omicron cases spell delays for publishers’ January RTO plans]
SARA GUAGLIONE(翻訳:SI Japan、編集:長田真)
Illustration by IVY LIU