Snapchatアプリのメディアセクション「ディスカバー」ではこれまで、BuzzFeed、マッシャブル(Mashable)といったパブリッシャーが、毎日コンテンツを配信してきた。その一方で、Snapchatはこの数カ月間、テレビ局や制作会社と「ディスカバー」向けオリジナル番組の制作について協議を重ねてきたという。
こうした動きは、多数の動画、記事、アニメを掲載した雑誌風コンテンツをチャンネルパートナーが毎日配信するという「ディスカバー」のこれまでの役割からは離れるものだ。「ディスカバー」のパブリッシャーは現在20社ほどだが、そのなかで、テレビ番組制作のバックグラウンドをもつ会社は6社しかない。初期の頃から参加しているパブリッシャーは、「ピープル(People)」「デイリーメール(Daily Mail)」「コスモポリタン(Cosmopolitan)」といったテキスト中心のパブリッシャーで占められている。
Snapchat(スナップチャット)が、「ディスカバー(Discover)」セクションで、ハリウッド制作のコンテンツを増やすことに関心を寄せている。
「ディスカバー」がテレビ番組のような動画メインのコンテンツを観に行く場所になるまでには、長い時間がかかるかもしれない。しかし、Snapchatのこうした取り組みは、雑誌風コンテンツを毎日製作するためにリソースを割いてきたパブリッシャーにとって、悩みのタネになることだろう。
NBCとの複数年契約を締結
Snapchatアプリのメディアセクション「ディスカバー」では現在、BuzzFeed、マッシャブル(Mashable)といったパブリッシャーが、毎日コンテンツを配信してきた。その一方で、Snapchatはこの数カ月間、テレビ局や制作会社と「ディスカバー」向けオリジナル番組の制作について協議を重ねてきたという。
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Snapchatのコンテンツ責任者ニック・ベル氏が主導した協議によって同社は、NBCユニバーサル(NBCUniversal)と複数年契約を締結することに成功。NBCユニバーサルは、「ザ・ボイス(The Voice)」「E!ニュース(E! News)」「ザ・トゥナイト・ショー・スターリング・ジミー・ファロン(The Tonight Show Starring Jimmy Fallon)」「サタデー・ナイト・ライブ(Saturday Night Live)」といったシリーズ番組に関連した番組を制作することになっている。
こうした動きは、多数の動画、記事、アニメを掲載した雑誌風コンテンツをチャンネルパートナーが毎日配信するという「ディスカバー」のこれまでの役割からは離れるものだ。「ディスカバー」のパブリッシャーは現在20社ほどだが、そのなかで、テレビ番組制作のバックグラウンドをもつ会社は6社しかない。初期の頃から参加しているパブリッシャーは、「ピープル(People)」「デイリーメール(Daily Mail)」「コスモポリタン(Cosmopolitan)」といったテキスト中心のパブリッシャーで占められている。
テレビ的なものを掲載する意味
「彼ら(Snapchat)が関心を抱いているのは、番組を流すことであり、新しいチャンネルを立ち上げることではない」と、あるテレビ局幹部は述べている。その目的は「ディスカバー」を、Snapchatアプリの若いユーザーが、好きなテレビ番組の最新エピソードを見逃さないよう定期的にチェックする場所に変えることだ。
NBCユニバーサルが「ディスカバー」向けオリジナルコンテンツの制作費をSnapchatから受け取るかどうかは不明だ。メディア大手のNBCユニバーサルは、複数年契約の一環として、Snapchatの広告製品ポートフォリオを使って広告パッケージを開発し、販売することになっている。だが、「ディスカバー」向け番組の配信についてSnapchatと話した経験をもつあるテレビ局幹部によれば、Snapchatは一切の制作費を提供しないようだ。
「彼らは、お金を払う必要性を感じていないどころの話ではない」と、この幹部は述べている。「むしろ、我々(Snapchat)のプラットフォームを利用して我々向けの番組を作るチャンスを、あなたたち(テレビ局)に与えてあげるという感じだ」。
テレビ局の方が優位な分野
プラットフォームとして目新しい「ディスカバー」は、Snapchatの若いユーザー層にリーチしたいテレビ局や制作会社にとって、エキサイティングなチャンスとなっている。Snapchatは「ディスカバー」のパブリッシャー向けプレゼンテーションで、6月末の時点で「ディスカバー」ユーザーの77%が13歳から24歳の人たちだったと述べている。また、CNN、ESPN、MTV、コメディ・セントラル(Comedy Central)といったテレビ局がすでに「ディスカバー」に参加しているほか、今後も多くのテレビ局が参加を希望しているという。
たとえば、NBCユニバーサルの「E!ニュース」では、「ザ・ランダウン(The Rundown)」を初公開する予定だ。この番組は、5分間のエンターテイメントニュース番組で、9月から毎週配信される。
E!ニュース/デジタル担当エグゼクティブ・バイスプレジデント兼ゼネラルマネージャーであるジョン・ナジャリアン氏は、「『ディスカバー』がSnapchatにとって役立っていることの1つは、そこに行けばコンテンツがあるという期待感を人々に与えていることだ」と指摘する。「(『ディスカバー』は)現在、番組が話題を集める素晴らしいエントリーポイントを提供している。それに、プリントメディアや純粋なオンラインパブリッシャーができることと比べれば、これは我々が優位な分野だ」。
気にしない既存パブリッシャー
たしかに、BuzzFeed、Vice、マッシャブル、それにリファイナリー29(Refinery29)には、テレビ番組を制作した経験が数十年もあるわけではない。だが、さまざまなソーシャルプラットフォームで、どのようなタイプの動画コンテンツがうまくいくのかという点については、彼らのほうがよく理解している。
また、Snapchat向けの縦長の短編動画をつくることは、30分間の通常テレビ番組を制作するのとはかなり異なる。NBCユニバーサルが、リオ五輪向けの「ディスカバー」のポップアップチャンネルを制作するためにBuzzFeedを起用したのは、このことが大きな理由だ。
「ディスカバー」の既存パブリッシャーたちは、現時点では、Snapchatがハリウッドを起用したことを懸念してはいない。「いまのところ、テレビ局との契約に、我々の『ディスカバー』ボタンのコマーシャルになる以上の何かがあるようには思われない」と、ある「ディスカバー」パブリッシャーの幹部はいう。「これらは非常に異なる体験なので、編集内部では、双方のための余地が残されているはずだ」。
更新頻度はテキストに劣る
厄介な問題になりかねないのは、2015年1月に「ディスカバー」セクションがはじまって以来、さまざまな「ディスカバー」パブリッシャーがSnapchat専従チームを結成して、雑誌風コンテンツを制作してきたことだ。たとえば、リファイナリー29は11人から成るSnapchatチームを抱え、フードネットワーク(Food Network)には10人から成るチームが存在する。だが、Snapchatが「ディスカバー」で番組を提供したいと考えているなら、パブリッシャーは対応を迫られ、チーム構成の変更が必要になるかもしれない(Facebookがニュースフィードのアルゴリズムをしょっちゅう変更することに慣れてきたパブリッシャーにとって、これはおなじみの話だろう)。
とはいっても、ここにも希望が見られる。「10名のチームが雑誌形式で1日に15~20本のストーリーを制作しているとすれば、それは膨大な労力だ」と、「ディスカバー」パブリッシャーとなったテレビ局のある幹部はいう。「番組の場合は、もう少し昔ながらの制作方法になる。1カ月に1つの番組を制作するようチームに命じるといった具合だ。このほうが管理は少しやりやすくなり、プレッシャーもいくぶん減るかもしれない。とはいえ、全員がクリエイティブなテレビ番組の制作経験をもっているわけではないだろうが」。
Sahil Patel(原文 / 訳:ガリレオ)