動画への転向ではなく、テキストへの転向:収益の25%をポッドキャストで得るスレート

Facebook上における競争に勝つため、多くのパブリッシャーは動画に転向したが、その結果は成功とは言えない状況だ。しかし、こんな動画への転向の流れのなかで、スレート(Slate)は例外となっている。彼らはテキスト、ポッドキャストに今年大きくフォーカスを当てようとしているのだ。新規採用、新しい広告戦略、新しいサイトデザインを駆使し、この動きをサポートしようとしている。

「我々は文字に転向しようとしている、というのが大きなストーリーだ」と語ったのは、スレートのエディターであるジュリア・ターナー氏だ。「すべてのメディアを使って実験を行っていく予定だが、2017年たくさんの時間をかけて文字ベースとポッドキャストのビジネスの土台を分析した。その結果、両方に投資する価値が大きく存在していると見極めたのだ」。

スレートのポッドキャストの歴史は12年と長い。いまでは24の番組を抱えている。また、現状、ビジネスの25%をポッドキャストが占めているという。今年、スレートはポッドキャスト専用スタッフの数を5人から10人へと、2倍に増加させようとしている。ウォーターゲート事件にまつわる歴史を扱う人気ポッドキャスト番組「スローバーン(slow Burn)」の第2シーズンなどの制作に加えて、いくつかの新しい番組もローンチしようとしている。人気作家のマイケル・ルイス氏が「アゲンスト・ザ・ルールズ(Against the Rules)」と呼ぶ、新作もそれに含まれる。

スレートは自社のポッドキャストにまつわるノウハウを生かし、タレント、作家、メディアブランドのためのポッドキャストネットワークであるパノプリー(Panoply)を2015年に成立した。しかし今年、スレートのブランドが付いているプレミアム番組はパノプリーから切り離される。それによって、広告売り上げを完全にコントロールできるようにする予定だ。一方で、動画はスレートの抱えるコンテンツのなかで10%以下に過ぎない。

スレートの先見の明

ほかのパブリッシャーたちが動画へと転向するためにライターたちを大量に解雇しているなか、スレートはテキストベースのスタッフを20%増加させようとしてきた。新しいサイトが1月16日にローンチしたが、そこでも彼らのプライオリティは明確になるだろう。新しいサイトではポッドキャスト番組をプロモーションする新機能がいくつか追加されており(サイトを離れることなく番組をサンプル再生できるプレイヤーも後ほど導入予定だ)、スレートが提供するテキストジャーナリズムすべてを訪問者が簡単に閲覧できるようになるという。

こういった動きには、先見の明がある。レガシーパブリッシャーたちはいまでこそ、オーディエンスが求める動画を制作し、それをマネタイズすることが非常に困難で、高コストであることに気付いている。パブリッシャーたちの動画戦略はFacebookの存在によって規定されてきたが、着実にマネタイズできるモデルはまだ登場していない。さらにFacebookはニュースフィードにおけるニュースの存在を弱めると発表したばかりだ。オーディエンスリーチという点でFacebookに頼っていたパブリッシャーたちにとっては大きな痛手といえる。

「(動画人気は)バブルだった。配信が無料であったためパブリッシャーたちは素早くスケールすることができた。多くの人がスケールを達成したあと、Facebookがルールを変更したことで苦しんでいる様子を見ている。Facebookの発表を受けて、我々のサイトのデザイン変更は完璧なタイミングだと言える。というのも、我々は読者との深いエンゲージメントという方向に向けて動きつつあるからだ。我々がいま行っていることはすべて、エンゲージメントを最大化することにフォーカスされている」と、ターナー氏は言った。

FB依存からの脱却

数年前にスレートは、自分たちがFacebookからのトラフィックに依存しすぎていると気づいた。そこから読者のロイヤリティを最適化するための対策を取りはじめ、ここ数年間に渡り、その方向性で動いてきたのである。ニュース中心のカバーストーリーの数を増やす、サイトにユーザが訪れてくれるようにニュースレターを活性化する、といった取り組みがその例だ。

人気ポッドキャスト番組、トランプキャスト(Trumpcast)のようなコンテンツを増やすことも行っている。この番組はプレミアムプログラムである「スレートプラス(Slate Plus)」の会員登録を増やす助けになっている。ポッドキャストのなかには、会員のみ聞くことができるボーナスセグメントを持っているものがあるからだ。

スレートにとって、Facebookからの月間トラフィックは全体の30%から10%へと減少した。しかしこれを、GoogleやApple Newsからの流入で相殺している。サイトへの直接のトラフィックは読者のロイヤリティを示す良い指標だが、それは訪問者の約30%を占めているという。

スレートではいま、社内の成功基準として「エンゲージ時間」を採用。2017年にはユーザーによる記事閲覧、ポッドキャスト聴取におけるエンゲージ時間は20億分間にものぼった。これは前年と比べて18%の増加である。スレートプラス(年間会員費49ドル[約5300円])の会員数も2017年には45%増加し、4万人に至った。会員は少ない広告表示や、ボーナスコンテンツといった特典を得られる。

マネタイズにも可能性

読者のエンゲージメントを得る以外にも、テキストとポッドキャストからの収益にも可能性を見出している。オーディオとプログラマティックは、彼らにとってもっとも速い速度で成長している広告収入源だ。デマンドパートナーを加えるといったプログラマティック対策や、サイトのスピード改善といったオーディエンス対策が功を奏している(スレートのポッドキャストがパノプリーから分離することで、広告主たちはスレートの営業スタッフともやり取りをすることになる。スレートの最高収益責任者であるチャーリー・カマラー氏によると、この新しい構造によってスレートとパノプリーがそれぞれの機能にフォーカスできるようになるとのことだ。パノプリーにとってはネットワーク全体へのオーディエンスセリング、スレートはプレミアムオーディエンス向けのコンテンツの制作がその役割となる)。

「テキストもオーディオもプレミアム度が非常に高いオーディエンスをひきつけてくれる。プログラマティックを応用しながら、極めて高い効率性を持って運営することで、テキストのマネタイズができると、我々は理解している」と、カマラー氏は述べた。

Lucia Moses(原文 / 訳:塚本 紺)