いまではすべてのパブリッシャーが、ディスプレイ広告を卒業したいと考えている。バナー広告を頼りにする中規模パブリッシャーは、早晩うまく行かなくなるだろう。脱ディスプレイ広告を掲げ、最優先的に取り組んできたニュースサイト「スレート(Slate)」は、いまや全売上の半分近くがネイティブアドになっているという。
政治・カルチャーのニュースがメインとなる「スレート」は、ネイティブアドをおまけとするのではなく、営業戦略の中心に据え、それを成し遂げた。売上の90%が広告で、そのうちの半分がネイティブアド。あとの半分は、まだディスプレイ広告とポッドキャスト広告に頼っており、ディスプレイも業界の動向に合わせてプログラマティックに移行させることを考えている。
いまではすべてのパブリッシャーが、ディスプレイ広告を卒業したいと考えている。バナー広告を頼りにする中規模パブリッシャーは、早晩うまく行かなくなるだろう。脱ディスプレイ広告を掲げ、最優先的に取り組んできたニュースサイト「スレート(Slate)」は、いまや全売上の半分近くがネイティブアドになっているという。
政治・カルチャーのニュースがメインとなる「スレート」は、ネイティブアドをおまけとするのではなく、営業戦略の中心に据え、それを成し遂げた。売上の90%が広告で、そのうちの半分がネイティブアド。あとの半分は、まだディスプレイ広告とポッドキャスト広告に頼っており、ディスプレイも業界の動向に合わせてプログラマティックに移行させることを考えている(広告以外の10%は、会員プログラム「スレートプラス(Slate Plus)」の会費などだ)。
どのように制作しているか
ネイティブアドに注力するにあたり、「スレート」は新規雇用と再教育で10人のチームを編成。そして、スレートカスタム(Slate Custom)と命名されたカスタム広告制作部門に、ゴーカー・メディア(Gawker Media)でコンテンツ戦略の責任者を務めたジム・レーンホフ氏を起用し、さらに新しいメンバーを配置した。
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総勢13人になったスレートカスタムは現在、スマートな解説記事という「スレート」の編集DNAに寄せた、ネイティブアドの制作に力を入れている。また、高級自動車のジャガー(Jaguar)や銀行のチェイス(Chase)といったクライアントのため、ソーシャル上の広告配信にも積極的に取り組んできた。
「スレート」の以前のブランデッドコンテンツは「実にスマートで興味深いクリエイティブではあったが、読んでもらえなかった」と話すのは、BuzzFeedでブランド戦略担当バイスプレジデントを務めた後、2015年10月にスレート・グループ(Slate Group)のプレジデントに就任したキース・エルナンデス氏だ。
2016年7月1日にローンチした「スレート」の新フォーマットにおいては、これまで5社が広告主になっている。複合企業シーメンス(Siemens)のキャンペーンで「スレート」は、インタラクティブなグラフィックを駆使した広告を制作し、広告費をそれまでのインプレッション単価(CPM)から、コンテンツが実際に閲覧された場合に料金が発生する視聴単価(CPV:Cost Per View)へと移行した。
広告表記の明示も重要

「Published by」と表記された「スレート」の記事広告
「スレート」はまた、コンテンツにスポンサーがついていることをより明確にするため、広告ユニット自体のデザインを見直した。以前の広告ユニットは「スポンサードコンテンツ」(Sponsored content)とだけ表示されていたが、現在は「提供元は(Published by)」とした上で、広告主の社名とロゴを表示している。
大多数の人は広告を避けようとするものだが、「スレート」によると、広告であることをより明確にしたユニットは、クリック率が以前のユニットの3倍に増えたという(ただ、「スレート」は実際のクリック率を明らかにしていない)。また、同社が調査会社と提携して実施した調査では、新ユニットは平均滞在時間が倍増し、4分15秒になった。
エルナンデス氏は、広告の向こう側にどんなコンテンツがあるのかを明確にしたことで、自らの意志でクリックするユーザーが増えたためだと考えている。「我々の感覚だが、向こう側に何があるのだろうと思わせる『好奇心のようなギャップ』が大きいのだろう」。
Webメディアのサイトはゴチャゴチャしていることが多く、ネイティブアドの開示情報を増やす場合は、もっと目立って気付いてもらえるようなデザイン要素を追加する必要があると、ネイティブアドのプラットフォーム、ポーラー(Polar:「スレート」もクライアントである)の創設者でCEOのクナル・グプタ氏は述べている。
プレミアムパブリッシャーの65サイトを対象として、2016年1月から5月にかけて実施したポーラーの調査では、複数の情報が記載されており、そのなかでも広告主の名前が明らかになっている場合は、クリック率が増えることがわかった。
ライバルにどう対抗する?
とはいえ、最近は大規模なネイティブアドキャンペーンをするために広告主が検討するパブリッシャーは、絞られてきている。そうなると、100人規模のネイティブアド部門を擁するニューヨークタイムズ(The New York Times)や、アトランティック(The Atlantic)、Vox Mediaのような、スタッフが充実している定評あるメディアに、専門知識の蓄積に努めてきた小規模パブリッシャーが対抗するのは難しくなるかもしれない。
エルナンデス氏は次のように述べる。「誰もがカスタムスタジオをもついま、(広告主は)パブリッシャー4社を選び、それぞれに50万ドル(約5000万円)を渡して何かクールなことをやらせようとしている。広告主がネイティブアドに求めているのは、200万PVとまではいわないまでも、少なくとも20万PVだ。ユーザーが立ち止まってクリックやシェアをするような素晴らしいものを制作するのは、本当に難しい。しかし、簡単なことをやるのは面白くない」。
Lucia Moses (原文 / 訳:ガリレオ)
Image courtesy of Slate/Siemens