6月11日、7つのメディア協会が一丸となって、Facebookに意見広告ポリシーに抗議する書簡を送った。この意見広告ポリシーは、Facebookのソーシャルネットワーク上における政治広告についての透明性を高める取り組みの一環で、ニュース記事を政治およびアドボカシー広告とひと括りにするものだからだ。
6月11日、7つのメディア協会が一丸となって、Facebookに意見広告ポリシーに抗議する書簡を送った。この意見広告ポリシーは、Facebookのソーシャルネットワーク上における政治広告についての透明性を高める取り組みの一環で、ニュース記事を政治およびアドボカシー広告とひと括りにするものだからだ。
このポリシーは、ニュース記事が人目に触れやすくなるようにFacebook広告を利用しているパブリッシャーにも影響する。そうしたコンテンツが政治広告と同じアーカイブに保管されると、偏った記事に見えるのではと、パブリッシャーは懸念している。ニューヨーク・メディア(New York Media)とフィナンシャル・タイムズ(The Financial Times)は、潜在的なオーディエンス獲得をあきらめることになるが、このポリシーへの懸念を理由に、Facebookでの有料プロモーションを一時中止すると発表した。
書簡に書かれた内容
書簡のメッセージは、ニュースメディア連合(News Media Alliance:以下、NMA)による5月の声明を踏まえている。ニューヨーク・ タイムズ(The New York Times)やニューズ ・コーポレーション(News Corp)、マクラッチー(McClatchy)など、新聞社約2000社を代表する同連合は、信頼できる報道機関を要件から免除するようFacebookに求めた。各協会が結集した影響力により、Facebookが無視するのが難しくなれば、と期待している。
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新たな書簡には、NMAのほか、米ニュース編集者協会(American Society of News Editors:以下、ASNE)、欧州出版社委員会(European Publishers Council)、デジタル・コンテンツ・ネクスト(Digital Content Next:以下、 DCN)、米雑誌協会(The Association of Magazine Media)、全米職業記者協会 (Society of Professional Journalists)、世界新聞・ニュース発行者協会(World Association of Newspapers and News Publishers)のトップが署名している。書簡では、Facebookのポリシーにより、信頼できるジャーナリズムとプロパガンダの線引きがさらに曖昧になると述べ、パブリッシャーを政治広告への対処に関するポリシーの対象外とするよう求めている。さらに、プロの専属ニュース部員の有無や、サブスクリプションや広告のような手段を通じた商業的サポート、業界団体への加入などの基準を利用して、ポリシーから免除する報道機関をFacebookが特定できる方法を推薦している。
NMAのプレジデント兼CEOのデビッド・チャバーン氏は、書簡に添えられた、Facebookの上級幹部宛てのメールに次のように書いている。「120カ国以上の2万を超えるニュース関係出版物を代表する、我々7つの協会は、政治広告ポリシーを改訂して、速やかにニュース出版物を免除し、解決に向けて業界と協力するように強く求める」。
パブリッシャーの意見
署名者は国際的なニュース組織の同盟を代表するものであり、Facebookが再びニュース業界を理解せず声を聞かなかったという広範な意見を表している。
「我々は、米国の報道界のリーダーとして、独立したジャーナリズムの価値に与えうるFacebookのポリシーの影響について懸念している。我々のニュースコンテンツが政治広告の一部として扱われ、そう分類されたら、一般市民はたいてい誤解するだろう」と、ASNEのプレジデントであり、ダラス・モーニングニュース(The Dallas Morning News)の姉妹ニュース媒体アル・ディア(Al Día)のマネージングエディターでもあるアルフレイドー・カーバヤル氏は語る。
「Facebookは、幅広い報道界や、一般市民と自由で独立した報道機関を守るためにたゆまぬ努力をしている協会会員の声を聞こうとしないので、これは混乱をもたらし、場合によっては危険な解決策だ。大手テック企業が反響を生み出す典型的なやり口で、我々に約束してきた透明性と対照をなすものだ」と、DCNの会長ジェイソン・キント氏はいう。
「内心では、Facebookが果たそうとしていることが妥当で重要だとわかっている。注意を引こうとしている政治広告の供給源をユーザーが理解するのを手助けしようとしているのだ。問題は、その実行にある。Facebookのアプローチは、ジャーナリズムと政治広告のあいだに欠かせない線引きをしていない。我々のジャーナリズムを偽って伝えて価値を低下させるので、こうしたアプローチには強く反対する。業界を代表して、Facebookが解決策を見つけるのを手助けしようとするNMAやDCNの取り組みを支持する」と、USAトゥデイ・ネットワーク(USA Today Network)のプレジデントで、USAトゥデイ(USA Today)の発行者であるマリベル・ペレズ・ワズワース氏は語る。
Facebookサイドの見解
Facebookは、ロシアの関係者が同プラットフォームを利用して、対立を生む広告を2016年の米大統領選中に流したあと、選挙ポリシーを強化するよう激しい圧力にさらされている。Facebookのグローバルニュースパートナーシップの最高責任者であるキャンベル・ブラウン氏が以前、NMAに行った回答によると、選挙などの重要な問題についてのニュース報道は、アドボカシー広告や選挙広告と異なることをFacebookは認識しているという。Facebookはパブリッシャーと個別に協力していくと同氏は語るが、一部のパブリッシャー団体は分割統治法じみていると指摘している。
Facebookは現在、今夏にポリシーを更新するつもりだと述べている。6月11日のAXIOS(アクシオス)とのインタビューで、ブラウン氏は、2週間以内にニュースパブリッシャー向けと政治広告向けで別々のアーカイブ対策を展開すると語った。Facebookは、広告のラベリングから「政治広告」という言葉も取り除いた。現在は、広告主を明示する「Paid for by」というラベルがすべてに貼られているが、アーカイブではまだ「政治的コンテンツ付きの広告」と呼ばれており、パブリッシャーにとっては問題がある。
ブラウン氏は最近、パブリッシャーに対して口調を強めており、とりあえずポリシーについて心配なら、そこで支出を控えることができるとも述べている。すぐにポリシーから免除するよう求めていた報道機関が、それで満足するとは思えない。Facebookの規模の大きさや、オーディエンス獲得手段としての重要性を考えると、単に手を引くというのは、多くのパブリッシャーにとって現実的な選択肢ではない。
「透明性はより大きな説明責任につながり、それが、パートナーの報道機関が奨励してきたことだ。だから、政治的コンテンツを含むすべての広告に対して、この方向に移行している。我々は、政治に言及している報道機関の広告コンテンツに権威を与え続けるが、こうしたトピックについての報道がアドボカシーとは違うことを認識している。広告用のニュースコンテンツをアーカイブでは違う扱いにしようと取り組んでおり、パートナーである報道機関の根本的な懸念に対処している。免除やホワイトリストは、我々が到達しようとしている新たなレベルの透明性を直接的に否定するものだ」とブラウン氏はFacebookの広報を通じた声明で述べている。
原因はひとつではない
広告ポリシーの対応は、パブリッシャーがFacebookに対して固執している点のひとつにすぎない。Facebookは、質の高いパブリッシャーのニュースを優遇すると述べたが、パブリッシャーはそうした質の定義方法を疑問視してきた。パブリッシャーは長年、Facebookにコンテンツを配信してきたものの、有意義な収益を上げていない。Facebookはニュースパブリッシャーに金を払って、長編動画セクション「Watch(ウオッチ)」用の番組を制作してきたが、制作資金の提供が打ち切られたら、その金が続く保証はない。
今回の書簡は、パブリッシャーやパブリッシャーの団体が結束して、大手テック企業の力を奪おうとした最新例でもある。7団体のうち4団体は、EU市民のプライバシーを保護する一般データ保護規則(General Data Protection Regulation :GDPR)の遵守に向けたGoogleの計画に連携して抗議した。自社の立場についてパブリッシャーと話し合うためにGoogleが開いた会合にも参加しなかった。
Lucia Moses(原文 / 訳:ガリレオ)