北欧・大手パブリッシャー 、アプリ活用で「若年層」開拓:徹底的なユーザー志向で日の目

ニュースパブリッシャーたちは、自分たちのブランドをよく知る若い世代のオーディエンスを獲得しようと奮闘中だ。北欧のパブリッシング大手のシブステッド(Schibsted)は、2017年に新しいアプリの開発にその期待を寄せていたが、2019年現在、その狙いがうまく機能しはじめている。アプリのユーザーの60%が25才以下であり、5週間連続で計測したアプリの利用データによると、リテンションレートは25%から30%に成長した。

かつて、シブステッドの新聞は、北欧でもっとも広く読まれていた。だが、若い層の読者が減少したことを受けて、紙面の編集やリサーチ部門を含めた15名のチームで運営されている同社系列のノルウェーのタブロイド紙、ベルデンズ・ギャング(Verdens Gang)は2016年、ピール(Peil)というニュースアプリに取り組みはじめた。18~25才の読者にターゲットを定めたピールは、2017年末にリリースされた。

読者がアプリを起動してはじめに目にするのは、その日の3大ニュースの見出しだ。右にスワイプするとその記事をさらに読むことができる。下にスワイプすると、トップ10の記事を詳しく読むことができる。さらに下にスワイプしていくと、前週からの7つの主要ニュースが表示される。すべての記事は若者向けに書かれたニュースであり、写真や画像、シンプルな言い回しや元記事へのリンクが中心だ。多くの記事はシブステッドからのものだが、必ずしも独占記事ではない。

ユーザーインサイトの活用

紙媒体の循環や広告収入が減少傾向にあるいま、ニュースパブリッシャーたちは自分たちの将来を守るために、学校や大学へプロダクトを導入したりSnapchat(スナップチャット)などの若者が集まるプラットフォームへ配信したりなど、若い層の読者へのリーチにますます力を入れている。パブリッシャーと、彼らがリーチしたい若い世代との年齢のギャップはよくあることだが、これは若者向けのプロダクトのユーザーテストを行ううえで大きな問題だ。ピールはシブステッドブランドの架け橋的な存在として機能させることは可能であり、このアプリではさらに2019年2月から、より幅広いキャンペーンの一貫として、通信会社のテリア(Telia)が制作したブランデッドコンテンツの運用をはじめている。同社によると、約半数の読者が広告をさらに読むためにスワイプしていたという。

「意思決定にあたってユーザーの調査やインサイトを活用してきたことが、ピールのこれまでの成功の鍵だ」と、シブステッドでUXリサーチャーを務めるアン・シャーマ氏は語る。「これまで、ユーザーのインサイトの活用は、ニュースメディアの常套手段ではなかった。特に大規模なブランドでは、何かを作りあげることは比較的たやすいし、大規模であるがゆえに持っている力を使えば、結果はついてくる」。

成功の判断基準を、ダウンロード数やおよそ6000という週間アクティブユーザー数にすることはできない。同社によると、最初は小規模ではじめ、的確なプロダクトを作り上げることを目標にしているという。ジブステッドの自己分析では、98%のユーザーが好印象を持っているという。この指標こそが、成功を示す数字なのだ。

インタビューとフィードバック

シャーマ氏によると、このパブリッシャーはニュース記事に関する日々の習慣について若者へインタビューを行い、彼らのニーズを洗い出したという。その後、その調査で知った、あるひとりの「ペルソナ」のニーズに答えることに注力することを決めた。そのペルソナとは、自分にぴったり合ったものがないという理由でニュースを読まない若者のことだ。そして、これはピールに市場でのチャンスを与えることになった。チームでは、これらを「会話には加わりたいが、あまり多くの時間を費やしたくない」「いまのニュース商品は難解すぎる」といったユーザーの特徴としてまとめた。

チームでは100人以上へのインタビュー、20回以上のアンケート調査を行い、アプリ内にユーザーがフィードバックできる機能を加えたあとには500通以上のメールを受け取った。スマホを振ることで、ピールの開発チームに宛てたメールの送信画面を開くことができるようになっている。このアプリの初期段階では、チームでは50名ほどの登録制のFacebookグループで、すぐさま反応を得られるように動画やちょっとした投稿をしていた。また、社内のチームでは毎月ユーザーテストを行っていた。コンテンツをシンプルにしたり、朝と夕方に送られる通知を箇条書きにまとめたりするうえでは、このユーザーテストが役に立った。

「社内のニーズに答えるだけではだめだ。ユーザーのニーズを基準に考えなければならない」と、シャーマ氏は付け加えた。チームではもともと、社内でのアイデアに基づいて開発したチャットボットがいた。編集チームでは、その機能を気に入っていたが、ユーザーには受け入れられなかった。

プロダクト開発のあるべき姿

編集におけるピールの責任はベルデンズ・ギャング(VG)にあるが、新しい名前にすることで、ブランドのイメージダウンのリスクを負うことなく、実験することができる。

VGには、13~17才の若者が集うSnapchatのディスカバー用のチャンネルがある。このVGのSnapchatのディスカバー内にある番組の最後に、ピールが制作するニュースが表示される。これによって数千のダウンロードを生み出したと、シャーマ氏は語る。

だが、22カ国で8000人の社員、数十個のニュースブランドを抱えるシブステッドは、その規模の大きさゆえに誰からもうらやましがられる存在だ。新商品や、その商品の開発手法に時間や人員をぜいたくに割くことができる。

「プロダクトマネージャーは、ユーザーの意見を聞くべきだということは頭ではわかっていたが、どのようにして実践すべきかが分かっていなかった」と、シャーマ氏は語る。「ユーザーテストを行うことで、プロダクト開発のあるべき姿が分かってきた。これは、プロセスに慣れていなかったという事例のひとつだ」。

Lucinda Southern(原文 / 訳:Conyac