サブスクの先駆者、収益回復を狙ってサブスクへ回帰:米ニュースサイト「サロン」の賭け

広告非表示のサブスクリプション版サイトに、読者は参加してくれるだろうと、サロン(Salon)が賭けに出たのが10年以上前のこと。いま、賭け金が減った状態のサロンは似たような賭けに出ようとしている。

サンフランシスコで創業されたサロンは、多種多様なニュースを扱うオンラインマガジン。早々からサブスクリプションにチャレンジしはじめたオンラインメディアのひとつだが、ここ数年はプログラマティック広告を狙い、すべての記事を開放していた。だが、サロンは近頃、短期間に限って、広告非表示バージョンのサイトをお試しできる機能をローンチ。その料金は、1時間につき50セント(約54円)。機能をさらに活用したい読者は99ドル(約1万700円)で、広告非表示サイトを利1年間用できる。

サロン・メディア・グループ(Salon Media Group)のCEOであるジョーダン・ホフナー氏によると、広告非表示バージョンの提供は、存在していることが分かっている読者からの需要を満たすための小さなテストとしてデザインされたという。その一方で、2019年からサロンは、コンテンツをペイウォールのなかへと収納しはじめることになっている。これはサロンのビジネスの大部分を支えているプログラマティック広告収益から離れて、多様化を進めるための方策のひとつだ。昨年春にローンチした戦略である、フードやヘルスといった新しいコンテンツカテゴリーへの投資も継続する予定だ。

厳しい時期の転換

この転換はサロンにとって、不安定な時期に起きた。2年前と比べると、月間ユニークユーザー数は78%も減少したからだ。トラフィックは2018年の大部分において、月間ユニーク数200万あたりで停滞している。これは、2016年末の平均である900万と比べると、大きな減少だ(データはコムスコア[Comscore]より)。

最高財務責任者は昨年10月に辞任しており、昨年春から現在にいたるまで、要求されている四半期収益を証券取引委員会(SEC)に提出できていない。サロン・メディア・グループが財務情報を最後にリリースしたときには、2017年の10月〜12月の3カ月で125万ドル(約1.3億円)の収益で69万6000ドル(約7500万円)の純損失を出している。2018年夏には、委員会に対して第2四半期の収益報告の提出が間に合わないと伝えた。

ホフナー氏は、サロンの財務状況についてのコメントは控えた。

読者たちのニーズ

広告非表示のテストに参加した読者は現時点で数百万人にのぼっており、消費者の選好が発展するにつれて、この数字はさらに伸びるだろうと、ホフナー氏は語った。

「消費者の需要という点では、トラッキング無しのサイトへの転換がこれから行われるようになるだろう。ここ2年間に業界で起きたことすべてを考慮すると、ユーザーたちはトラッキングされることに嫌気がさしていると思う」と、彼は言った。

読者収益に執心する最近のデジタルメディア業界だが、サロンはその点で数年先を歩いていた。サロンがはじめてのペイウォールを立ち上げたのが2001年。ペイウォールのデザインは何度か変更され、2009年後半にはペイウォールが廃止されている。2014年にサブスクリプション全体を廃止した。ピーク時では、年間30ドル(約3200円)を払う8万9000人のサブスクライバーを抱えていた。

トラフィックは悪化

お金を払ってまでサロンを読みたいと思う読者の数が、十分なだけ存在しているのかどうか、これがサロンにとっての大きな問いだ。実際、トラフィックは悪化している。コムスコアのデータによると、2018年4月にはユニークユーザー数103万人と、最近の数字ではもっとも悪い成績を見せた。

サイトのトラフィックを見てみると、希望の光がないわけではないことが分かる。サロンにはまだ、ロイヤルオーディエンスが存在している。サイトのデスクトップ流入のうち39%はダイレクト訪問となっている。これはシミラーウェブ(SimilarWeb)のデータによる。ほかのまとまりを見てみると、検索からが37%、ソーシャルからが17%、となっている。ソーシャルのなかでは、掲示板サイトのレディット(Reddit)が最大のシェアを占めている。

オーディエンスがロイヤルであることが、サブスクリプション戦略において主要な要素だ。しかし、ほかのパブリッシャーと同様、コンテンツにお金を払う価値があることを証明する厳しい戦いを生き抜かなくてはいけない。

新しい収益源

サロンはこれまで、新しい収益源を積極的に探してきている。昨年は月間利用料が4.99ドル(約540円)の広告非表示のモバイルアプリをローンチしている。2月には、広告ブロックをしているユーザーに対して、サロンをブロックから免除するか、コンピューターの処理能力を使って仮想通貨マイニングをさせるか選ぶ、というテストも行った。この試みは短期のテストの後に廃止している。

「YouTubeやGoogle検索で無料で見つけられるコンテンツよりも優れているということが証明できなければ、何か別のビジネスを見つけた方が良い」と語ったのは、メンバーシップコンサルタント企業であるスターリング・ウッズ・グループ(Sterling Woods Group)のCEO、ロブ・リスタグノ氏だ。

サロンが雇うスタッフ数も減っている。2016年には50人だった数も2017年では41人になった。サロンで最初に労働組合が認められてから3年後となる昨年10月には、初めての労働組合契約が結ばれ、ニュース編集部の従業員12人がその対象となっている。サイトの発行人欄を見ると非エグゼクティブ従業員は12人となっている。

キュレーションに比重

チームの規模の小ささを補うため、サロンはキュレーションに比重を置いている。昨年5月、サイトは新しいバーティカルをいくつかローンチした。そのなかには、フードやヘルスも含まれている。

サロンのスタッフもこれらのトピックのコンテンツを制作するものの、コンテンツの多くはサードパーティから得たものだ。コンテンツ提供元は、ペンスケ(Penske)が所有するローリング・ストーン(Rolling Stone)やインディーワイヤー(IndieWire)、そしてフード52(Food52)などとなっている。これらのエディトリアル・パートナーシップを「数十件」抱えていることが、サロンのマネージングエディターであるジョセフ・ニース氏のリンクトイン(LinkedIn)プロファイルから分かる。

こういったコンテンツの再発行に際してサロンは料金を支払っていない。これは料金支払が必要でない場合は含まれる。たとえば、カンバセーション(The Conversation)の共同CEOであるブルース・ウィルソン氏によると、カンバセーションは週に10本弱の記事をサロンに提供している。しかし、カンバセーションはクリエイティブ・コモンズの下で運営されているため、料金の支払いが必要でないのだ。ほかにも、記事の露出を増やすためにサロンで掲載させるという判断もあるようだ。サロンにとってはリソースを大きく割かずコンテンツを得る安い方法だ。

マネされる可能性

サロンのオーディエンスが抱えるさまざまなニーズに応えるためにデザインされたプロダクトのひとつとしての、広告非表示バージョンのトライアル。ホフナー氏はそう捉えている。

「ほかの誰もがマネをする新しいオプションになる可能性がある。しかし、それに皆が気づくには時間が多少かかるだろう」と、コンサルタント企業ペニンシュラ・ストラテジーズ(Peninsula Strategies)のCEOであるロビー・ケルマン・バクスター氏は語った。

Max Willens(原文 / 訳:塚本 紺)