スウェーデンのローカルニュースパブリッシャー、ミットメディア(MittMedia)は、ロボットが作成したコンテンツでサブスクリプション売上を伸ばしている。 ロボットジャーナリズムはふつう、多忙な編集室の時間節約のためのツ […]
スウェーデンのローカルニュースパブリッシャー、ミットメディア(MittMedia)は、ロボットが作成したコンテンツでサブスクリプション売上を伸ばしている。
ロボットジャーナリズムはふつう、多忙な編集室の時間節約のためのツールと宣伝されるが、ミットメディアは昨年、自動生成コンテンツを利用して、20の地方ニュースサイトを合わせてデジタル有料購読者1000人を獲得した。
ロボットテキストの実力
現在8万人弱の有料購読者を抱える同社の場合、忠実なユーザーをデジタル有料購読者に転向させるのにもっとも効果的だったのは、不動産情報だ。2017年末に同社がローンチした「ホームオーナーズボット(Homeowners Bot)」は、地元市場で売りに出されているすべての家に短文テキストをつけ、注目ポイント(たとえば、その年販売されたなかでもっとも高価であるなど)を紹介し、Googleストリートビューの写真を添付した記事を作成する。
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同社によれば、現在は週に480本の住宅販売関連記事が作成されている。ツールの導入以降、公開された記事数は合計で3万4000本にのぼり、新たに約1000人が有料購読者となった。なお、同サービスの購読料は月10ユーロ(約1250円)からとなっている。
「超高品質のロボットテキストは、すぐれたニュース記事以上の影響力をもち、より広く読まれることもある。ただし、読者が強い関心をもっているトピックであればの話だ」と、ミットメディアでコンテンツ開発責任者を務めるリー・レストレード氏はいう。「平均すると記事1本あたりの読者数は少ない。だが全体で見ると、もっとも優秀な記者の記事にもひけをとらないものになっている」。
「重要なのはコンテクスト」
ボットが書いた記事には、署名欄に「ミットメディアのテキストロボット(MittMedia’s Text Robot)」という記載が入る。調査によれば、回答者102人のうち、68%はボットが書いた記事だと気づかなかった。

ミットメディア傘下の地方版がカバーする地域で販売中の不動産は、10万軒にのぼることも珍しくない。
ブルームバーグ(Bloomberg)、ロイター(Reuters)、ワシントン・ポスト(The Washington Post)などのパブリッシャーも、定型データに基づく記事でロボットの導入を模索している。シンプルな記事の大量生産はロボットに任せ、記者がより調査報道に専念できれば、パブリッシャーには大きなメリットになる。こうした量産記事では、ロボットはふつう決算報告やスポーツの試合結果などのデータを扱う。これにより、広告インプレッションの増加や、報道記者の負担軽減が見込まれる。
ミットメディアは、新興企業に関する記事でもボットの利用を開始しており、評判は上々だ。アルゴリズムを利用して、もっとも関連性の高い記事をターゲットの読者に適切なタイミングで提示することで、有料購読を促していると、レストレード氏はいう。ただし、自動作成記事の数が膨大であるため、サイトがそればかりに占拠されてしまったり、特定の読者層を外れて配信された場合にはまったく無価値になってしまう恐れがある。
「自動作成記事はふつう、きわめてニッチかつ少数の人々が大きな関心を寄せる分野のものだ。そのため、パーソナライズされたニュースフィードやニッチ製品と非常に相性がいい」と、レストレード氏は話す。「重要なのはコンテクストを制することだ」。
ロボットジャーナリズムの活況
ミットメディアの編集部は、9人からなるデータ主導コンテンツ開発担当部署と連携し、デジタル有料購読者のリテンションの改善に取り組んでいる。同社によれば、登録解除により柔軟に対応することで、解約率が安定した。登録ユーザーは、ボタンのクリックひとつでニュースレターを停止したり、登録を解除できる。この機能は、アイスホッケーなど季節限定のスポーツの熱狂的ファンに好評だ。現在の解約率は12~14%だと、レストレード氏はいう。
ロボットジャーナリズムはスウェーデンで活況を呈している。同国の大手新聞社シブステッド(Schibsted)が発行する夕刊タブロイド紙で、2017年末にデジタル有料購読者25万人を達成したアフトンブラーデット(Aftonbladet)も、自動作成コンテンツを導入している。ミットメディアは、自動作成コンテンツの分野でテック企業ユナイテッドロボッツ(United Robots)と提携。他2社のスウェーデンのパブリッシャーと同様、ミットメディアも自動作成コンテンツの量と種類の増大を予定しており、不動産販売情報以外にも、スポーツ解説記事、企業の登記や倒産の情報、交通情報、天気予報といった分野が候補になっている。
Lucinda Southern(原文 / 訳:ガリレオ)