ロイター(Reuters)は、ロイターTV動画配信サービスのペイウォール制(月額2ドル)を2015年8月に廃止して以降、月間ユーザー数が100万人に拡大していると発表した。この変更は、パーソナライズされた「中間型」ニュース配信やより多くのライブコンテンツ、ドキュメンタリー特集などの利用拡大にも繋がっている。
無償でコンテンツを提供することが、ときには良い結果を生む。
ロイター(Reuters)は、ロイターTV動画配信サービスのペイウォール制(月額2ドル)を2015年8月に廃止して以降、月間ユーザー数が100万人に拡大していると発表した。ごく一部のユーザーだけが広告非表示のサービスを受けるために2ドルを払い続けており、ほとんどのユーザーは広告表示される無料サービスを選んだと、ロイターTVマネージングディレクターのアイザック・ショウマン氏はいう。この変更はユーザー拡大の助けになったのと同様、パーソナライズされた「中間型」ニュース配信やより多くのライブコンテンツ、ドキュメンタリー特集など、ほかの要素の利用拡大にも繋がっている。
現在、ロイターTVユーザーは平均週3回、その動画サービスを利用していると同社は説明。モバイル端末では、ユーザーはセッションあたり平均12分を費やし、Apple TVやRokuなどのストリーミングTVデバイスでは、セッションあたりの平均利用時間は21分だ。
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「中間型」プログラミング
このレベルのエンゲージメントにもっとも大きく貢献したのは、ショウマン氏が「中間型」プログラミングと呼ぶものである。これらは、ユーザーの視聴時間、所在地、閲覧履歴およびロイターエディターのオススメといったファクターにもとづいてパーソナライズされた5〜30分のニュース動画で、さまざまなクリップがまとめられている。
「ソーシャルネットワークのクリップとNetflix(ネットフリックス)の長編コンテンツのあいだで、オンライン動画には分岐点がある。一方は数秒の視聴、もう一方は数時間かけて視聴される。我々のコンテンツは、そのふたつの中間に位置している」と、ショウマン氏は語った。
「中間型の意義はその実利性だ。私は通勤に15〜20分間かけている。そうした時間に価値を提供できること、それが習慣作りに利用できるのだ」。
エンゲージするコンテンツ
ロイターには、日常的に何らかの形で、ロイターTVに関わっている125名の従業員が存在しており、ロイターTVを「現代的な」ケーブルニュースネットワークのようにすべく計画している。最近では、ただニュースの要約を伝えるだけではなく、ケーブルニュースでよく見られる、ふたつの異なるコンテンツフォーマットも含んでいる。新たなテクノロジーやCESといった、さまざまなトピックについてのイベント生中継や、それらにより深くドキュメンタリー風に切りこんだ内容だ。
ロイターは現在、ロイターTVで編集上ホストされているライブストリーミングを1日十数本プログラムしている。また、FacebookやTwitter向けに追加のライブ動画を4本ほど制作しており、ロイターTVのプロダクト認知度向上に利用している。
「我々が目指すのは、これらのプラットフォームのベースレベルで、ユーザーにエンゲージすることだ。ついでながらいうと、それを機能させることで、我々のマーケティングがうまく機能したことや、オーガニックに我々を見つけてくれたユーザーについて学ぶ」と、ショウマン氏は語る。
パブリッシャー向けサービス
次に計画しているのは、「パブリッシャー向けロイターTV」プログラムの一新による、ロイターTV拡大を継続して進めていくことだ。それにより、ほかのメディア企業がロイターの動画クリップを自身のサイトに埋め込むことを可能にする。
ロイターは、パブリッシャーに配信される5分ほどのクリップを、ユーザーがそのサイト上で、またはその記事で求めているであろう内容に対して、よりパーソナライズするための方法に取り組んでいると、ショウマン氏はいう。ロイターは、自社サイトでよりパーソナライズされたバージョンを今月テストする予定で、計画ではそのすぐ後にパブリッシングパートナーと、そのテストが行われる。
ロイターにとって、パブリッシングパートナーシッププログラムは、幅広い媒体に渡ってコンテンツを配信する独自手段だ。ソーシャルプラットフォーム用の動画を制作・配信する一方で、同社が完全にコントロール権を擁する動画サービスおよびエコシステムであるロイターTVが、いまだに動画事業の根幹となっている。ロイターTVの収益は、前年比450%増であった。
自らの運命をコントロール
「結局のところ、パブリッシャーとして自らの運命をコントロールすることは非常に重要だ。FacebookとTwitterがニュース消費で果たす役割は信じられないほど大きいが、それらのチャネルは配信チャネルよりもマーケティングチャネルとして機能しているケースのほうがはるかに多いと、我々は見ている」と、ショウマン氏は述べる。
「1回につき12分ほどを費やしに我々のもとへやってくる習慣がついた消費者との関係を我々はブランドに提供している。これは、15秒ほどのクリップの前に30秒のプレロール広告枠を提供するのとはまったく異なる提案だ」。