衣料レンタルサービス 、人気獲得で直面する「物流」の課題:いかに解決すべきか?

今年5月、新たに衣料レンタルサービスに参入したアーバン・アウトフィッターズ(Urban Outfitters)は、レンタル事業を営むほかの多くの小売企業とは異なり、フルフィルメント、ロジスティクス、洗濯サービスをインハウス化している。

アーバン・アウトフィッターズの新サービス「ニューリー(Nuuly)」では、顧客は月に88ドル(約9600円)を支払い、箱詰めされたアイテム6点をレンタルできる。会員は、アーバン・アウトフィッターズ傘下のアンスロポロジー(Anthropologie)やフリーピープル(Free People)といったブランドはもちろん、リーボック(Reebok)やリーバイス(Levi’s)など、提携ブランドからもレンタル商品を選ぶことができる。アーバン・アウトフィッターズの最高デジタル責任者で、ニューリーのプレジデントを兼任するデビッド・ヘイン氏は、ウォール・ストリート・ジャーナル(The Wall Street Journal)の取材に対し、1年以内に5万人の有料登録者を獲得し、年間5000万ドル(約55億円)の売上を達成する見込みだと述べた。こうした予測のもと、インハウス化には投資の価値があると踏んでいるのだ。

「顧客体験において決定的に重要だと思われるあらゆるビジネス要素について、基本的に自社操業するのが、我々アーバン・アウトフィッターズの方針だ」と、ヘイン氏は米DIGIDAYに宛てたeメールで述べた。「こうした能力の構築は困難を伴い、投資が必要だが、いまでは有料会員の将来のニーズに応え、進化するだけの準備が整ったと考えている」。

「異なる戦略が必要だ」

過去2年のあいだにレンタルサービスを開始したその他の小売企業、たとえばニューヨーク・アンド・カンパニー(New York & Company)、アメリカン・イーグル(American Eagle)、エクスプレス(Express)、アンテイラー(Ann Taylor)などは、一括請負の衣料レンタルサービス企業であるカースル(Caastle)と提携を結んでいる。一方、インテリアグッズのウエストエルム(West Elm)は今年3月、レント・ザ・ランウェイ(Rent the Runway)を通じたレンタルサービスの開始を発表し、後者のネームバリューと既存の顧客基盤の活用を目論んでいる。

グローバルデータリテール(GlobalData Retail)によれば、衣料レンタルの市場規模は2018年の時点で、10億ドル(約1100億円)と試算され、年20%の成長により、2023年には25億ドル(約2700億円)に膨れあがる見込みだ。ミンテル(Mintel)の小売・eコマースアナリスト、アレクシス・デサルバ氏によれば、同社の調査により、レンタルへの関心がもっとも高いのはZ世代とミレニアル世代だとわかっている。小売企業、とりわけモールに展開していた従来型企業が、こうした市場に関心を示している。しかし、新しくホットなレンタル市場への参入はコストを伴う。小売業者は出荷、配送、返却後の衣類洗濯の費用を負担しなくてはならず、また複雑な在庫管理システムの構築も必要だからだ。

「(レンタルには)異なる戦略が必要だ。場合によっては、別のチームも必要になる」と、デサルバ氏はいう。

顧客を深く理解するため

レンタルプログラム創設に伴い、アーバン・アウトフィッターズはフィラデルフィアに新たな倉庫とフルフィルメントセンターを建設した。洗濯・ドライクリーニングサービスもこの場所で行われる。また同社は、特注のクラウドベース在庫・倉庫管理システムを構築し、データサイエンティストを採用して、独自のレコメンデーションエンジンを開発した。別会社として設立されたニューリーは、独自のマーケティング、商品開発、クリエイティブ部門を有し、現段階で数十人の社員を抱える。

一方、カースルは2011年の発足当初、グウィニービー(Gwynnie Bee)の名前でプラスサイズ衣料レンタルを行っていた。同社の創業者兼CEO、クリスティーン・ハンシッカー氏には、グウィニービーを「アパレルのニューエコノミーを牽引するB2Bプラットフォーム」を構築するための足がかりにするという、長年の目標があった。彼女のいうニューエコノミーとは、もちろんレンタルのことだ。

「我々は単純に、顧客を深く理解するにはサービスを自社で運営することが重要だと考えた。そのおかげで、ほかの参入企業をサポートする適切なテクノロジーやインフラも構築できた」と、ハンシッカー氏はいう。

パイロットクライアントたち

2017年、ハンシッカー氏は最初のパイロットクライアントとして、アンテイラーとニューヨーク・アンド・カンパニーを迎え入れ、2018年にカースルを正式にローンチした。カースルは、ブランドのフロントエンドウェブサイトとモバイルアプリ体験を管理する。カースルと提携するブランドがすべて、メインのウェブサイトとは異なるドメイン名でレンタルサービスを運営しているのはそのためだ(たとえばアメリカン・イーグルのレンタルサービスは「アメリカン・イーグル・スタイルドロップ[American Eagle Style Drop]」だし、アンテイラーのサービスは「インフィニット・スタイル・バイ・アンテイラー[Infinite Style by Ann Taylor]」だ)。カースルは自社の配送センターからアイテムを選別・梱包・出荷し、返却されたアイテムを洗濯するほか、カースルが開発したアルゴリズムや分析ツールを提携ブランドに提供する。

ハンシッカー氏によれば、現在カースルが管理している9社のレンタルサービスでは、会員の約半数が特定のブランド目当ての新規顧客だという。また、現在サービスを利用している顧客の当該ブランドへの支出は、平均で150%の増加を見せている。同氏によると、カースルは提携ブランドごとにカスタムの価格設定モデルを開発しているが、小売企業の営業利益は25%が基本だ。

アメリカン・イーグルのグローバルブランドプレジデント、チャド・ケスラー氏は、スタイルドロップへの関心は「我々の期待を大きく上回っている」としたが、具体的な数値は明かさなかった。アメリカン・イーグルは現在、カースルとの12カ月のパイロットプロジェクトの折り返しを迎えたところだ。

データの共有は重要要素

ヘイン氏もハンシッカー氏も、ブランドパートナーとのデータの共有はサービスの重要要素だと述べる。ニューリーは「サイズの好み、商品評価、商品の耐久性、購入情報など、個人情報ではない情報を集約し、共有する」と、ヘイン氏は述べ、「我々の目標は、提携するブランドのビジネスに成長をもたらすパートナーになることだ」とした。一方、ハンシッカー氏によれば、カースルはホワイトラベルサービスであるため、提携企業はすべての顧客データにアクセス可能だ。とはいえ、結局のところ、カースルと組むブランドは、サードパーティデータに頼るのであって、ニューリーのようにインハウス操業能力を構築し、自社ブランドと他社ブランドをあわせたすべての顧客データを所有するわけではない。

「(カースルは)Amazonと提携するのとは根本的に異なるアプローチだ。他の集約的レンタルサービス、たとえばレント・ザ・ランウェイやルトート(Le Tote)とも、おそらく違うだろう」と、ハンシッカー氏はいう。「ブランドと顧客の関係強化に何よりも力を入れている」と、同氏は語った。

Anna Hensel(原文 / 訳:ガリレオ)