「差別化には強い自信がある」:アトランティック社長、ペイウォールについて語る

アトランティック(The Atlantic)は9月5日、サブスクリプションサービスについて公式発表を行った。展開される商品は3種類で、料金は年間49.99ドル(約5400円)から100ドル(約1万800円)までとなっている。

アトランティックは162年の歴史を誇るメディア企業だが、同社がデジタルなサブスクへ移行するという噂は2年前からささやかれていた。そして1年半ほど前に当時のプレジデント、ボブ・コーン氏が2018年初頭までのペイウォール導入を発表している。だが2019年4月になってもペイウォールは実現せず、具体的な期限についても言及されることはなかった。

米DIGIDAYはアトランティックのこれまでの足跡について、アトランティック・メディア(Atlantic Media)のプレジデント、マイケル・フィネガン氏に話を伺った。なお、以下のインタビューは編集を加えている。

──アトランティックのサブスクの先駆けとなっていたマストヘッドだが、今回のサブスク商品のうちもっとも高額なプレミアム版に吸収されている。独立した商品だったマストヘッドを吸収させるに至った理由とは?

マストヘッド(Masthead)は実験的なサービスだった。アトランティックやマストヘッドを好きなオーディエンスは、相当数存在するが、アトランティック全体としてのサブスク商品ラインナップとして、商品数が多すぎるのは望ましくなかった。広告なしでの閲覧やサブスクのギフト、優れたレポートに対するインセンティブといった、マストヘッドで重要な機能はプレミアム版に引き継がれている。

新しい商品を展開するにあたって、すべてをそのまま残すのは合理的な選択ではなかった。

──マストヘッドは会員制サービスだったが、今回の商品はサブスクだ。会員制ではなくサブスクにした理由は?

会員制にしたのは、オーディエンスに参加してもらって実験を行うためだった。アトランティック・メディアは、ほかにもナショナル・ジャーナル(National Journal)など、会員制のサービスを展開しており、ここでも多くのことを学んでいる。プレミアム版のサブスクにおいて重要になるのが、オーディエンスがアクセスできる機能だ。サブスクに関して「マーケティング上の見栄えを良くするための作戦に過ぎない」と指摘する声もある。そんななか、当社はできる限りの透明性を提供しようと努めている。だからといってフィードバックを得られないというわけではなく、むしろ投資によってさらに多くのフィードバックを得られるようになる。将来的に、会員制をサポートするような機能を生み出す可能性はあるが、サブスクと明らかに異なるものを提供できない限り、会員制商品をリリースするつもりはない。

──日常的に今回の取り組みをリードし、移行に関して陣頭指揮を行っているのは誰だろうか?

編集や商品チームはうまく協力して事にあたっている。だがこれは新しい取り組みだ。これまで導入したインフラを活用してより多くのデータを集め、意思決定を行っている。データ主導の決定というわけではないが、ユーザー体験や一部の商品機能に関していえば、データを活用することでより堅牢なものを作り上げることができる。

──商品の価格やペイウォールの高さはどのように決定したのか?

価格やペイウォールの高さについては、オーディエンスの興味と購入意欲に基づいて決定している。価格についていえば、ファン・ウェステンドープ氏のモデルに基づくPSM分析を非常にしっかりと行い、オーディエンス5000人に購入意欲の調査を実施した。ある価格を境に、購入するかどうかが大きく変化するポイントがあった。またNetflix(ネットフリックス)やSpotify(スポティファイ)に至るまで、報道コンテンツを含む他社の有料商品についても多数の調査を実施した。その結果として49.99ドル(約5400円)がスイートスポットだったのだ。価値の高いコンテンツを作り出せるし、多数のオーディエンスを集めて良い収益を上げることができる。

──アトランティックがサブスク商品を発表した当時から比べて、サブスクに参入した企業が非常に増えたがこれについて不安はあるか?

オーディエンスと消費者が、消費するコンテンツの価値についてより意識するようになったと考えている。競争相手がいないと楽かもしれないが、コンテンツの価値についてより理解が深まった状況でローンチするほうがずっと良い。現在、50万人がアトランティックの有料コンテンツを購買している。当社にとって有料コンテンツ自体が新しい分野ではないのだ。市場における差別化には強い自信がある。

──1年後までに、どれくらいの目標を達成したいと考えている?

アトランティックは野心的であり、大きな成功を成し遂げたいと考えている。加入者数を大きく伸ばしたい。だが最初の数カ月は、具体的な目標数を打ち出す前に、いくつかの仮説を試して理解するために費やしたい。半年後に連絡をくれれば、そのときに改めて具体的な目標をお話できるかもしれない。だが現在は「この数字は絶対に達成する」というような目標は特にない。これは長期的な取り組みで、最初の6カ月から9カ月は、大量のデータを集めて商品をいかに改善するかが大切だ。

Max Willens(原文 / 訳:SI Japan)